腸管出血性大腸菌感染症(O157など) Enterohemorrhagic Escherichia coli infection
O157をはじめとした腸管出血性大腸菌による感染症は、都内でも年間300〜400件の報告があり、夏季に多く発生します。患者は、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層にみられますが、全体的には小児に多く、都内では10歳未満の小児が感染者の約2割を占めています。
本菌は、日本では1990年以降に井戸水や給食を原因とする集団感染・食中毒事件により注目されるようになりました。
東京都における腸管出血性大腸菌感染症の流行状況 (随時更新)
1 腸管出血性大腸菌感染症とは
腸管出血性大腸菌は、腹痛・下痢・血便などを主症状とする腸管感染症を起こします。
典型的な症状として、2〜9日(多くは2〜5日)の潜伏期間の後、激しい腹痛を伴う頻回の水様便、続いて血便が見られます(血便は出血に近い場合もあります)。発熱は多くの場合37℃台と軽度です。症状は、まったく無症状の方から、重症の方まで様々です。
発症者の約5%が、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症(けいれんや意識障害)などの合併症を起こし、時には死亡することもあります。
2 原因と感染経路
原因はベロ毒素※を産生する「腸管出血性大腸菌」による感染です。
腸管出血性大腸菌の代表的な血清型にはO157、O26、O111などがあります。「大腸菌」は家畜や人の腸内に存在し、ほとんどは無害ですが、一部に人に下痢などの消化器症状を起こす「下痢原性大腸菌」があり、その中でベロ毒素を産生する菌を『腸管出血性大腸菌』と言います。多くの細菌性食中毒では原因菌を100万個単位で摂取しないと発症しませんが、『腸管出血性大腸菌』は強い感染力を持っており、100個程度で発症する可能性があります。また、子供や高齢者は感染すると重症化しやすいと言われています。
感染経路は、食品などを原因とする「食中毒」と、「感染症」の2つに大別されます。
※ベロ毒素とは、腸管出血性大腸菌が産生する毒素で、VT1とVT2の2種類があります。
腸管出血性大腸菌には、VT1とVT2 の両毒素を産生する菌と、VT1またはVT2のいずれか一方を産生する菌があります。
食中毒
腸管出血性大腸菌は、牛などの動物の腸管にいる菌です。主な原因食品は、牛肉や牛レバーなどの生食や加熱不十分な肉類です。また、食肉等から二次汚染した食品などあらゆる食品が原因となる可能があります。
感染症
患者の介護をした人の手洗いが不十分なことから、二次感染につながることがあります(経口感染:手や、手でふれた食品を介して病原体に感染)。また、トイレや風呂を介した感染、子供用簡易プールでの感染、観光牧場での動物への接触などによる感染事例も知られています。
3 腸管出血性大腸菌の治療
下痢に対して整腸剤を用いるなど対症療法が中心です。抗菌剤の使用に関しては、医師が病状に応じて判断しています。水分補給・安静に努め、消化しやすい食事を心がけましょう。
またトイレの後、食事前に石鹸と流水で十分に手を洗いましょう。
【参考】厚生労働省 一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)
4 予防のポイント
外食や調理の際の注意
- 肉の生食(レバ刺しやユッケなど)は避け、十分に加熱しましょう
- 肉を焼くときの取り箸やトングなどは専用にして、口に入れないよう注意しましょう
- 生野菜はよく洗い、ハンバーグなどは中心部まで十分に加熱しましょう(十分に加熱できたかどうかの目安として、ハンバーグの中心から透明の肉汁が出ることを確認します)
- 調理の時、手指はこまめに洗いましょう。特に、生肉を扱った手指は、他の食材や器具に触る前に、石鹸で十分に洗いましょう
- 生肉を扱った調理器具は、使用後すぐに洗剤で洗い、熱湯等で消毒してから、他の調理に使いましょう
個人衛生
- トイレの後、調理・食事の前に石鹸と流水で十分に手を洗いましょう
- 動物に接した後は、石鹸と流水で十分に手を洗いましょう
- 患者の介護をする人は、下痢便に触れないように使い捨て手袋を使い、はずした後も十分に手を洗いましょう
- 下痢症状のあるときは入浴の順番は最後にし、シャワーを使いましょう
- 下痢症状のあるときは、プール(特に子供用簡易プール)の使用は控えましょう
消毒方法など詳しくは、東京都福祉保健局 家庭や施設における二次感染予防ガイドブック(患者さん・ご家族等向けパンフレット)をご覧ください。
5 感染症法・学校保健安全法との関係
O157等腸管出血性大腸菌感染症は、感染症法の三類感染症に分類され、診断した医師は直ちに最寄の保健所に届け出ることが定められています。保健所は病状を確認し、原因に関することや二次感染予防について患者さん(ご家族)と相談します。調理など食品を扱う仕事の場合は、就業を制限することがあります。
学校保健安全法では第三種の感染症に指定されており、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」を出席停止の期間の基準としています。但し、最初から症状がない場合(無症状病原体保有者)、また手洗いなどが十分にできれば二次感染の心配はなく、一律に出席停止とする必要はありません。
6 検査や病原体の話
東京都微生物検査情報・集団感染事例についてはこちらをご覧ください。
7 さらに詳しい情報が必要な方のリンク先
「腸管出血性大腸菌感染症Q&A」(厚生労働省/一般の方向け)
「腸管出血性大腸菌感染症」(国立感染症情報センター)
「食品衛生の窓」 (東京都)
病原体検査情報・食中毒の発生状況および分離菌株の疫学解析成績
・ 平成22年 第32巻、6号
・ 平成21年 第31巻、5号
・ 平成20年 第30巻、4号
・ 平成19年 第29巻、5号
平成18年以前は こちらよりご覧ください。
