東京都健康安全研究センター
東京都における梅毒の流行状況(2007~2013年)

更新日:2014年4月30日

はじめに

 わが国において梅毒は減少傾向にあったが、近年、多くの先進諸国同様、男性と性交をする男性(men who have sex with men: MSM)を中心に感染が広がっていることが明らかとなっている。今回、東京都における2007~2013年の梅毒の発生動向についてサーベイランス情報から記述疫学を実施したので報告する。

 

方法

 日本の感染症サーベイランスでは、全国統一のシステムである感染症発生動向調査システム(NESID)によって国が全体のデータを集約している。東京都の人口は2013年現在、約1,300万人で、都内の約12,000の医療機関から保健所(31カ所)を経由して、サーベイランス情報が国まで報告されている。すべての医師は、梅毒の診断例(無症状者を含む)を指定された個票で保健所に報告することが求められており、報告症例は保健所担当者によってNESIDへ登録され、東京都感染症情報センターで届出内容が確認される。NESIDに登録された梅毒症例のうち、2007~2013年に都内で診断された症例を抽出し解析を行った(2013年3月3日現在)。人口当たりの報告数には人口動態統計による各年の東京都の推定人口を使用した。

 

結果

 2013年の総報告数は417人(人口10万対3.2人)であり(図1)、過去5年平均+2SDの値(= 322)を大きく超えていた。総報告数は2010年を境に増加が見られ、2011年は2010年に対して1.4倍、2012年は2011年に対して1.2倍、2013年は2012年に対して1.4倍に増加していた。

 2013年の病期別報告数は早期顕症Ⅱ期が183人(43.9%)と一番多く、次いで無症候160人(38.4%)、早期顕症Ⅰ期62人(14.9%)の順であった。2007年に64人だった早期顕症Ⅱ期はその後一貫して増加し、晩期顕症は10人前後、先天梅毒は0~3人で推移した。無症候と早期顕症Ⅰ期は、2010年にそれぞれ53人、17人の報告であったが、この年を境に増加に転じた。

 性別では、2013年の男女比は7:1(男365人:女52人)、人口10万対報告数は男性5.6人、女性0.8人で(図1)、全国の人口10万対報告数(2013年:男1.6、女0.4)と比べると、男女ともにその報告数は高く、特に男性で顕著であった。2010年と2013年を比較すると、男性では2.4倍、女性では2.9倍に増加した。年齢群別の人口10万対報告数を2007年と2013年で比較すると、男性では20~50代で増加し、特に20~30代の増加が顕著であり、女性では、20~24歳で増加が見られた(図2)。2013年の男性では30~34歳が12.1で最も高く、女性では20~24歳が4.2で最も高かった。

 感染経路では、男性では2013年に346例(94.8%)が性的接触と報告されており、そのうち同性間性的接触248例 (71.7%)、異性間性的接触60例(17.3%)であった(図3)。男性の同性間性的接触の報告数は増加しており、2013年は2007年に対して11.3倍に増加した。女性は40例(76.9%)が性的接触と報告され、そのうち異性間性的接触が33例(82.5%)と多くを占めた。女性の異性間性的接触では、2013年は2010年に対して3.7倍に増加した。

 保健所別の人口10万対報告数は、2013年に特別区保健所(n=23)では4.3人、多摩・島しょ地区保健所(n=8)では0.6人であった。前者は2007~2010年に1.7から2.1で推移していたが、その後年々増加し、2013年は2010年に対して2.5倍に増加した。後者は2007~2012年に0.3から0.4で推移していたが、2013年は2012年に対して1.8倍に増加した。特別区保健所には2013年に392人の報告があり、そのうちの225人(57.4%)が1つの保健所(A区保健所)に報告されたものだった(図4)。A区保健所での2013年の人口10万対報告数は68.2であり、2013年は2007年に対して7.4倍に増加していた。

 

考察

 東京都における2013年の総報告数は、過去5年の報告数の平均+2SDの値(= 322)を大きく超えており、特に男性で顕著である。

 男性における感染経路として、同性間性的接触が報告の7割を占めていることから、都内ではMSM間での感染が報告数増加の主体と考えられ、特にA区保健所管内で集積しているのは、区内にMSM人口が多く受診する医療機関が複数あることが要因の一つと思われる。

増加していることや、20代女性患者報告数も増加していることから、一般住民への広がりも懸念される。

 早期顕症Ⅰ期は直近の梅毒感染を示していることから、2010年以降の本期患者の増加は、感染拡大が現在も進行している可能性を示唆する。都内の保健所等では匿名・無料で検査を実施する等、性感染症対策を講じているが、今後とも梅毒の発生動向について、着目していく必要があると考えられた。

 

参考文献

1)増加しつつある梅毒―感染症発生動向調査からみた梅毒の動向―, IASR 35: 79-80, 2014

 


 梅毒の診断年別報告数(2007~2013年)

 

年齢群別人口10万体報告数推移

 

感染経路別報告数

 

保健所別報告数

 

 


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