東京都健康安全研究センター
1992年〜1996年の5年間におけるわが国の劇症型A群レンサ球菌感染症の疫学調査(第18巻、4号)

1992年〜1996年の5年間におけるわが国の劇症型A群レンサ球菌感染症の疫学調査(第18巻、4号)

 

1997年4月

 


 

 わが国において,劇症型A群レンサ球菌感染症は1992年、清水らによって最初の症例が報告された。本症は全国各地で散見されるようになり、1994年1月、本誌(第14巻、第12号)において流行の兆しのあることを紹介し、その年に大きな流行があったことを同年11月、本誌(第15巻、第10号)に報告した。今回は1992年〜1996年の5年間に、わが国で発生した劇症型A群レンサ球菌感染症の疫学調査結果をまとめたので報告する。

 当研究所では、全国各地で発生した劇症型A群レンサ球菌感染症患者または本症の疑いの患者から分離されたA群レンサ球菌のT抗原型別および発熱性毒素型別を実施している。菌株の依頼を受けるときに、同時に患者の調査票の送付を受けている。その調査票を基に過去5年間の劇症型A群レンサ球菌感染症の疫学調査を実施した。

 過去5年間の本症または本症の疑いのある患者数は131人であった。図1は、5年間の劇症型A群レンサ球菌感染症患者の月別発生状況と死亡者数を示したものである。この図から本症は1993年10月から1994年8月までに患者数も死亡者数も突然急激に増加し、全国的に大流行があったことを示している。その後、1994年12月から1995年2月までの冬季にかけて再び流行がみられたが、それ以降大きな流行がみられていない。

 5年間の中で患者数の最も多い年は1994年の54人(41.2%)で、次いで1995年の25人(19.1%)であった。性別でみると、男性:83人(63.4%)、女性:48人(36.6%)であり、男女比は1.7:1であった。死亡者数は48人で、男性:27/83人(32.5%)、女性:21/48人(43.8%)であり、本症の死亡率は36.6%であった。女性の死亡率は男性に比べて高い傾向がみられた。その理由は臨月間近な妊婦が本症に罹患すると致命的であるためである。本症患者の年齢構成は9歳以下:12.2%、10〜29歳:9.9%、30〜49歳:31.1%、50〜89歳:46.6%であった。本症は壮年から高齢者に発病し易く、高齢者に高い死亡率がみられた。

 本症患者の主な臨床症状は発熱、発赤、筋肉痛、腫脹、低血圧、ショック、壊死等で、多数の患者には肝機能障害、高血圧、打撲・受傷、糖尿病等の既往症がみられた。しかし、既往症と転帰の関連性は不明であった。

 本症患者由来A群レンサ球菌131株のT型は14種類に型別され、多い順にT1型、T3型、T12型、T28型等で、T3型は1994年に多くみられた。発熱性毒素型は8種類に型別され、多い順にB+C型、A+B型、B型、A型等で、毒素非産生が2株みられた。A型およびA+B型は1994年に多くみられた。理由は不明であるが、全国的に大きな流行がみられた1994年に分離されたA群レンサ球菌のT型および発熱性毒素型は、流行の前後の年と比べて異なっていた。また、T型や発熱性毒素型と死の転帰との関連性は特にみられなかった。現在においても、本症の発症機序は、不明である。

 劇症型A群レンサ球菌感染症は、既に医師や医療関係者に十分に周知された疾病である。しかし、現在でも四肢の筋肉痛等を主訴とする患者が、急激に病態の変化を起こし、本症へと進行し、死の転帰をとる症例が報告されている。本症は今後とも注目して行かなければならない疾病であり、今年1月から10数例の本症患者が発生している。私どもはこれかも、本症の発生状況を把握するとともに、A群レンサ球菌の菌型の動向を監視していくことが必要であると考え、実施している。

微生物部 細菌第二研究科 遠藤美代子

図1

 


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