東京都健康安全研究センター
1997〜98年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行(第19巻、2号)

1997〜98年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行(第19巻、2号)

 

1998年2月

 


 1997〜98年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行について、主に都立衛生研究所で実施した病因検索結果に基づき概要を以下報告する。

 東京都における今冬季のインフルエンザ様疾患による集団かぜは、1997年12月初旬に町田保健所管内の小学校で発生した事例が初発であった。これら患者5名のうがい液について、インフルエンザA型、B型ウイルス及びアデノウイルスのPCR法及び組織培養を用いた分離試験を実施した。その結果、PCR法では全例アデノウイルス陽性、組織培養法で4例からアデノウイルスが検出された。また、ペア血清による血清学的試験を行った結果、3名に同型ウイルス抗原株に対して16倍〜32倍以上の抗体価の有意上昇を認め、同ウイルスによる集団事例である事を確認した。この集団発生以降、12月中旬に多摩小平保健所管内の小学校で2事例めが発生した。その後、1998年1月27集団、2月2集団の合計31集団例の発生報告があった。搬入された集団かぜ患者の症状は、発熱(37.6〜41.0℃)、せき、頭痛、咽頭痛、筋肉・関節痛等であったが、特にこれら患者の発熱は例年(平均38.5〜39.3℃)に比べ平均38.9〜39.8℃と高いものであった。

 これら31集団例の検査材料それぞれについて病因ウイルスの検索ならびに血清学的試験を行った。検査結果は表に示す通りである。

 今冬季、東京都においてインフルエンザウイルスが最初に検出されたのは、前述の多摩小平保健所管内の小学校で発生した事例で、患者3名(3/3)からAH3(A香港)型ウイルスが検出された。それ以後、1998年2月初旬までにAH3(A香港)型ウイルスによる事例が合計29集団(PCR法及び血清学的診断によるもの4集団含む)確認された。

 以上のごとく東京都における今冬季の集団かぜの流行は、AH3(A香港)型ウイルスによる単一型の流行であった。なお、検索した集団例からはAH1(Aソ連)型ウイルス及びB型ウイルスによる事例は1例も認められなかった。

 都内におけるインフルエンザ様疾患による集団かぜ発生は、例年11月から徐々に発生し凡そ翌年1月にそのピ−クを迎え、3月頃にかけて減少し緩やかな曲線を描くのであるが、今期は1月中旬に集団例が87.1%(27/31)と集中し鋭い一峰性となった。

 東京都感染症サ−ベイランス情報による今冬季の都内におけるインフルエンザ様疾患患者の発生状況は、1997年12月下旬から1998年1月中旬にかけて1定点当たり(人)1.11、0.50、1.13、2.53と患者数の増加が見られ、下旬には17.37、43.96と患者数は急増し、2月上旬に47.82となりピ−クを迎えた。以後、2月中旬から3月上旬にかけ27.68、12.32、4.87、1.87と徐々に患者数は減少しインフルエンザの流行は終息した。

 当研究所ではウイルス分離にあたって発育鶏卵培養法及び継代細胞培養法を平行して行っているが、前者によるAH3型ウイルスの検出はここ数年困難に成りつつあるが、今季の集団例からは1株も検出されなかった。今季流行株が変異しこれまでの株と生物学的性状を異にしている可能性が高いことを示唆している。

 従来、ウイルス分離法は陰性でしかも、急性期・回復期血清が採取できず血清学的な診断も不可能で病因診断不明例となった集団例もPCR法での迅速な型別診断が可能となり、病因不明の集団例数が減少し、今期は現時点で全例病因は判明している。

 一方、厚生省保健医療局結核感染症課のインフルエンザ様疾患発生報告によれば、東京都における集団発生は( )内の前年同期に比べ、学級閉鎖学校数は1,223校(884校) 、患者数は143,028人(23,715人)と閉鎖学校数は1.38倍であったが、患者数は6.03倍に増加した。また、全国における学年閉鎖学校数は5,962校(1,862校) 、学級閉鎖学校数は16,898校(5,212校)、患者数は1,279,539人(276,235人)と昨年の4.63倍の発生数であり今季の流行規模は前季のそれに比べ大きなものであったことをうかがわせた。なお、全国における流行ウイルスは、AH3型ウイルスが主でそれにAH1型ウイルスとB型ウイルスが散発的に加わったものであった。ちなみに全国における検出ウイルス数は、AH1型:10株、AH3型:3,914 株、B型:29株であった。

微生物部 ウイルス研究科 山崎 清

1997〜1998年冬季、東京都における集団かぜ患者の病因検索

 

発生年月 旬 検索対象
集団例数
診 断 結 果
インフルエンザ ウイルス アデノ
ウイルス
AH1型 AH3型 B型
1997年12月 上旬    
12月 中旬      
1998年 1月 中旬 24   20(4)    
1月 下旬      
2月 上旬      
31   26(4)  

( )内は分離試験陰性,PCR法及び血清学的試験陽性事例数

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します ご利用にあたって
© 2023 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.