東京都健康安全研究センター
エコーウイルス30型ウイルスによる無菌性髄膜炎の流行

エコー30型ウイルスによる無菌性髄膜炎の流行(第19巻、7号)

 

1998年7月

 


 無菌性髄膜炎は、一般的には夏季を中心として流行する中枢神経系の感染症で、毎年のごとく起因ウイルスを変えて流行をみている。その大部分はエンテロウイルス及びムンプスウイルスが主な病原体である。エンテロウイルスの中でも、特にコクサッキーB群1−5型、エコー6、7、9、11、30型があげられる。今回の無菌性髄膜炎流行の主原因はエコー30型ウイルスである。同ウイルスによる無菌性髄膜炎の全国的な患者発生は、1991年に大流行があり7年ぶりの同ウイルスでの流行となった。東京都においては、感染症発生動向調査から4月下旬にエコー30型ウイルスによる無菌性髄膜炎の患者発生を確認した。以来、患者数が増加し7月中旬をピークにその後は徐々に減り始めている。

 8月7日現在、髄膜炎を呈した患者243名から380件の検体(糞便、咽頭ぬぐい液、髄液)が搬入されており、125名がエコー30型ウイルス(分離数;202株)の検出によって、同ウイルスによる髄膜炎と確定した。好発年齢は幼児や学童で、症状としては発熱、頭痛、嘔吐、髄膜刺激症状、また腹痛や下痢等の消化器症状がみられた。243名中169名がウイルス分離陽性者を含めて遺伝子診断(PCR)で陽性であり、ウイルス分離陰性者の中にもエコー30型ウイルスが関与していた可能性は高い。また、無菌性髄膜炎の子供から親への感染(家族内感染)がみられた2事例のうち、1事例は家族4人(両親・兄・弟)で弟から母親が感染し、発症して共にエコー30型ウイルスが分離された。また無症状であった父と兄においても咽頭ぬぐい液及び糞便から同ウイルスを分離している。他事例は、家族3人(姉・弟・父)共に発症し、同ウイルスを分離している。

 今回の髄膜炎流行期に、発熱(37−38.5℃)・頭痛・食欲不振・腹痛・悪心を呈して「集団かぜ」が疑われ学級閉鎖となった小学校のクラスにおいて、検索した患者5名よりエコー30型ウイルスを分離し、また血清学的診断においても同ウイルスに対する中和抗体価の有意上昇がみられた。インフルエンザA、B、アデノ各ウイルスに対する抗体価には有意上昇がみられず、各々のウイルス感染は否定されエコー30型ウイルスによることが確定した。

 エコー30型ウイルスが分離された例としては、髄膜炎以外に上記小学校の事例の他、発熱(5名)・不明発疹症(7名)・ヘルパンギーナ(1名)・手足口病(1名)の患者及び健康者(4名)等があげられる。また、無菌性髄膜炎患者からはエコー30型ウイルス以外にコクサッキーB群5型ウイルス、エコー18型ウイルス、アデノ3型ウイルス等も分離されている。

 

無菌性髄膜炎患者からのウイルス検出状況

検出ウイルス 4月 5月 6月 7月 8月
エコー30型 48 70 125
エコー18型        
アデノ3型        
コクサッキーB5        
インフルB型        
陰性 12 10 21 45   88
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微生物部 ウイルス研究科 吉田靖子

 


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