東京都健康安全研究センター
1998〜99年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行

1998〜99年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行(第20巻、3号)

 

1999年3月

 


 1998〜99年冬季の東京都におけるインフルエンザの流行について、主に都立衛生研究所で実施した病因検索の概要を報告する。

 今冬季の東京都におけるインフルエンザ様疾患の患者数は 171,663人と昨シーズンを約 3万人上回った。今シーズンのインフルエンザの流行は、1月までは30歳以上の成人が多数罹患し,1月中旬以降に小児の流行がみられたのが特徴的であった。患者の主な症状は、発熱(37.5〜41.3℃)、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛、関節痛などであった。

 東京都のインフルエンザ様疾患の集団発生は、1998年11月27日に府中小金井保健所管内の小学校で発生した事例が初発であった。以降、12月に 5事例、1月に23事例、 2月に 7事例の計36事例の集団発生がみられた。これらの集団かぜ36事例について、患者のうがい液及び急性期と回復期のペア血清を検査材料として、病因検索を行った。うがい液については、発育鶏卵法並びに組織培養法によるウイルス分離試験とPCR法による遺伝子学的検査を、ペア血清については血清学的試験を行い、その結果を表に示した。36事例のうち、いずれかの検査でインフルエンザウイルスが確認されたものが34事例、アデノウイルスの検出が 1事例、不明が 1事例であった。

 初発の府中小金井保健所管内の事例では、当所に搬入された患者うがい液 3件すべてから、組織培養法でインフルエンザウイルスB型(以下、B型ウイルス)が検出された。PCR法でも同様にB型ウイルスが確認された。また、ペア血清の血清学的試験でも、B型ウイルス抗原(ワクチン株)に対して 4〜32倍以上の抗体価の有意上昇が認められ、今シーズンの初発の集団かぜは、B型ウイルスによることが確認された。12月に発生した集団かぜ 5事例では、2事例からインフルエンザウイルスA/H3型(以下、A香港型ウイルス)、 1事例からB型ウイルスが検出された。 1月の23事例では、1事例がインフルエンザウイルスA/H1型(以下、Aソ連型ウイルス)、 9事例がA香港型ウイルス、11事例がB型ウイルス、2事例がA香港型ウイルスとB型ウイルスの混在によるものであった。また、2月の 7事例は 1事例がA香港型ウイルス、6事例がB型ウイルスであった。以上のように、東京都における今シーズンの集団かぜの流行は、Aソ連型ウイルス、A香港型ウイルス及びB型ウイルスによる混在流行であった。

 検査法別にみたインフルエンザウイルスの検出成績は、発育鶏卵法では、集団かぜ36事例のうち 1事例からAソ連型ウイルスが、2事例からB型ウイルスが検出されたのみであった。これに対して、組織培養法では、A香港型ウイルスが 9事例、B型ウイルスが17事例、Aソ連型ウイルスが 1事例から検出された。また、PCR法では、14事例がA香港型ウイルス、19事例がB型ウイルス、1事例がAソ連型ウイルス陽性であり、PCR法による検出が最も高率であった。発育鶏卵法によるA香港型ウイルスの分離は、ここ数年困難に成りつつあり、今シーズンは 1株も検出されなかった。B型ウイルスの分離においても同様に検出率の低下傾向が認められる。

 適切なワクチン株の選択を行って、インフルエンザを予防するためには、ウイルスを分離し、そのウイルスの抗原解析をすることが不可欠であり、検出率の高いウイルス分離法の検討が望まれる。なお、今シーズン分離されたA香港型ウイルスは、A/シドニー型、B型ウイルスはB/北京型とB/ハルピン型であった。

1998〜1999年冬季、東京都における集団かぜ患者の病因検索
発生年月 検索対象
集団例数
診 断 結 果
インフルエンザウイルス アデノ
ウイルス
不明
A H 1 型 A H 3 型 B 型 AH3型+B 型
1998.11下旬 1     1      
12中旬 5   2 1   1 1
1999. 1中旬 13 1 4 7 1    
下旬 10   5 4 1    
2上旬 7   1 6      
36 1 12 19 2 1 1

 

微生物部 ウイルス研究科 山崎 清

 


感染症情報センターTOPへ   健康安全研究センターTOPへ」

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2013 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.