東京都健康安全研究センター
コレラの発生状況(1999年)

コレラの発生状況(1999年)(第21巻、9号)

 

2000年9月

 


 1999年(1−12月)に厚生省に届けられた我が国におけるコレラの発生件数及び患者数は、48件51名(真性患者35名、保菌者1名及び疑似患者15名)で、発生件数、患者数とも前年に比して減少した(表1)。これらのうち、海外旅行者による輸入事例は42件45名(真性患者32名、保菌者1名、疑似患者12名)で、推定感染国は、フィリピン14名、タイ9名、インド8名、中国5名、台湾3名、インドネシア2名、カンボジア1名、複数国3名であった。一方、海外旅行歴のない国内発生例は6件6名(真性患者3名、疑似患者3名)であった。特記すべき集団発生などは報告されていない。本年の真性患者と保菌者からの分離コレラ菌は、京都府から報告された海外旅行歴のない1件がエルト−ル稲葉型で、他はいずれもエルト−ル小川型であった。

 次に、WHOの報告に基づき世界のコレラ発生状況を紹介する(WHO Weekly Epidemiological Record,75(31),2000) 。世界全体としては、1961年にインドネシアに始まったエルト−ルコレラ菌によるコレラの発生が依然続いており、表2に示したようにWHOに報告された1999年の患者数は、前年(293,121名) の13%減の254,310 名で、死者数は9,175 名であった。発生を報告した国(地域)は前年より13か国少ない61か国であった。世界全体の致死率は3.6 %で、これまでとほぼ同様のレベルで推移している。

 アフリカ大陸では28か国から患者数206,747 名(全体の81%)、死者数8,728 名が報告された。1971年以降発生のなかったマダガスカルでは3月に再度コレラの侵襲をうけ、年末までに9,745 名の患者(死者542 名)が発生した。その他マラウイ、ナイジェリア、ソマリア、ザンビア及びジンバブエで大きな流行があった。コレラの発生動向も気候の変化に伴い変りつつあり、その大半は1〜4月に集中して発生する傾向にある。

 アメリカ大陸における患者数は著明に減少した。前年に比して4か国減の12か国から8,126 名(死者103 名)の患者発生が報告されたが、特に減少が顕著であったのはコロンビア、エクアドル及びペル−であった。

 アジアでの1999年の報告患者数は、前年に比して61%増加の39,417名であった。死者数(344名)は倍増したが、致死率は1%以下にとどまっている。特にアフガニスタン(24,639名)での増加が顕著で、前年の約2.5 倍、1997年との比較では約6倍の増加であった。その他、報告数の多かったのは中国、インド、イラク、カンボジア、イランであった。なお、1992年にインドで突発した新型コレラO139 (ベンガルコレラ菌)による発生は、依然アジア地域に限局されており、アジアのコレラ流行国で検査によりコレラと確認された患者の約17%を占めている。

 ヨ−ロッパからは5か国、患者数16名(死者0名)報告され、前年(47名)に比べ減少している。大半は輸入事例で、国内事例が認められたのはロシア(3名)及びウクライナ(2名)の2か国であった。

 オセアニアで患者発生を報告したのはオ−ストラリア(4名)及びニュ−ジ−ランド(1名)の2か国で、いずれも輸入事例であった。

 

表1 我が国におけるコレラの発生状況

 

年 次 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
輸入事例
国内事例
68(13)
12( 0)
72(15)
30( 6)
49(18)
3( 0)
99(16)
3( 0)
90(16)
24( 1)
341(36)
31( 5)
49( 9)
13( 1)
65( 8)
36(10)
66(12)
7( 0)
45(10)
6( 0)
合 計 80(13) 102(21) 52(18) 102(16) 114(17) 372(41) 62(10) 101(18) 73(12) 51(10)

( ):東京都分再掲

表2 世界のコレラ発生状況(WHO Weekly Epidemiological Record)

 

年 次 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
報告国数
罹患者数
37( 3)
70,084
59(14)
594,69
68( 5)
461,78
78( 3)
376,84
94( 7)
384,40
78( 1)
208,75
71( 1)
143,34
65( 2)
147,42
74( 1)
293,12
61( 0)
254,310

( ):初めて罹患者が報告された国数

 

微生物部 細菌第一研究科 松下 秀

 


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