東京都健康安全研究センター
東京都における1999/2000年の胃腸炎起因SRSV流行株の分析

東京都における1999/2000年の胃腸炎起因SRSV流行株の分析(第21巻、10号)

 

2000年10月

 


 毎年、晩秋から翌年の春にかけて主にSRSV(Norwalk-like virusesとも呼ぶがこの記事ではSRSVを用いる)を原因とするウイルス性胃腸炎の報告が増加する。1999年の秋から2000年の春にかけては、感染症発生動向調査の全国の報告数でも東京都の報告数でも過去10年で1、2を争うSRSVによる胃腸炎の大きな流行があった。1999年9月から2000年5月にかけて都立衛生研究所ウイルス研究科に搬入されたウイルス性胃腸炎疑い検体は食中毒疑い事例、感染症発生動向調査の病原体検索など併せて198事例、2839件であった。電子顕微鏡法、PCR法などによる検索の結果120事例(60.6%),729件(25.7%)からSRSVが検出された(図1)。事例数は1月が一番多く、検体数は感染症発生動向調査で100件近い検体搬入のあった12月が最大(498件)であった。このうち集団発生事例48例につきSRSVのポリメラ−ゼ領域の塩基配列を決定し、この時期の流行株のSRSV属のウイルスの系統樹における位置関係を検討した(図2)。図2を見ると、この時期に流行したSRSV株は極めて多様でgenotype G2 上の端に近い99OCT04AからG1の上端にある00MAY19 までほとんどのSRSVの亜型が網羅されている。特定の時期に特定の亜型のみが流行したか否かを流行最盛期の99年11月、12月、2000年1月についてみると、11月にはG2のTokyo99 に属する株が2事例、12月にはG2のロ−ズデ−ル(LD)に属する株1事例と同じくG2のYuri52に属する株1事例、1月にはG2のメキシコ(Mexico)に属する株2事例、ロ−ズデ−ルに属する株7事例、Tokyo99 に属する株2事例、Yuri52に属する株8事例、Cts1B/95に属する株1事例となり、複数の亜型が検出されることが多かった。流行が沈静化しつつある2000年3月ではG2のハワイ(HW)に属する株1事例、ロ−ズデ−ルに属する1事例、Tokyo99 に属する1事例、Yuri52に属する2事例、Cts1B/95に属する1事例が検出されている。同時期に複数の亜型の株が流行していることを示唆する結果だがこの傾向は1999年の10月、2000年の2月、5月でも同様であった。

 一方、この時期に学校、保育園などでかなりの規模の流行が続発し、重症例も少なからず報告されたため、特別に伝染力・病原性の強い強毒株の出現が危惧された。図2で下線を引いた斜字体で表したものは同一施設内で流行し強い感染力を示唆したケ−スである。しかし今回の分析結果では、施設内流行株はG2からG1のほとんどの亜型に分布しており、特定の株のみが大規模流行事例に集中することは見られなかった。以上の結果を総合すると、東京都において1999年秋から2000年初夏にかけて見られたSRSVによる感染性胃腸炎の近年にない大きな流行は様々な亜型のSRSV株が同時平行的に流行したことによると考えられた。なお、感染症発生動向調査の病原体検索では、67件と最も多く検出されたSRSV以外にロタウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなど36件が検出されている。

 

図2 1999/2000に東京都で検出されたSRSV株

 

 

微生物部 関根 大正

 


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