東京都健康安全研究センター
コレラの発生状況(2000年)

コレラの発生状況(2000年)(第22巻、8号)

 

2001年8月

 


 2000年(1−12月)に厚生労働省に届けられた我が国におけるコレラの患者数は52名(真性患者33名、疑似患者19名)で、前年とほぼ同様であった(表1)。これらのうち、海外旅行者による輸入事例は41件(真性患者25名、疑似患者16名)であった。推定感染国はインド(9名)、フィリピン(7名)、タイ(7名)、インドネシア(7名)、マダガスカル(3名)、パキスタン(2名)、マレ−シア(1名)、シンガポ−ル(1名)、ミャンマ−(1名)、メキシコ(1名)、タイあるいはマレ−シア(1名)、マレ−シアあるいはインドネシア(1名)となっている。一方、海外旅行歴のない国内発生例は11件(真性患者8名、疑似患者3名)であった。特記すべき集団発生などは報告されていない。本年の真性患者からの分離コレラ菌の血清型は31件が小川型で、稲葉型と彦島型(共にタイ旅行者)がそれぞれ1件であった。

 次に、WHO の報告に基づき2000年における世界のコレラ発生状況を紹介する (WHO Weekly Epidemiological Record,76(31),2001)。世界全体としては、1961年にインドネシアに始まったエルト−ルコレラ菌によるコレラの発生が依然続いている。表2に示したようにWHO に報告された2000年の患者数は、前年(254,310名) の46%減の137,071 名で、死者数は4,908 名であった。発生を報告した国(地域)は前年より5か国少ない56か国であった。世界全体の致死率は3.6 %で、これまでとほぼ同様のレベルで推移している。

 アフリカ大陸では27か国から患者数118,932 名(全体の87%、前年の42%減)、死者数4,610 名が報告された。コモロ(3,297名)、コンゴ民主共和国(14,995 名) 、ジブチ(1,828名)、モザンビ−ク(17,647 名)、ソマリア(7,496名)及び南アフリカ(19,667 名)で大きな流行があった。また、前年に始まったマダガスカルでの流行は、本年は島全体にまで拡大し、患者数29,083名、死者数1,693 名が報告された。

 アメリカ大陸では11か国から患者数3,101 名、死者数40名が報告された。前年(8,126名)に引き続き患者数は著明に減少した。その主因はブラジル、ガテマラ、ニカラグア、ペル−及びベネズエラにおける患者減による。エルサルバドル(631名)での患者数は前年の4.7 倍に増加した。

 アジアでは12か国から患者数11,246名、死者数232 名が報告された。前年は患者数(39,417 名)が急増したが、本年はその約30%に激減した。これは主に、前年患者数が24,639名と急増したアフガニスタンにおける患者減(4,330名)によるものである。その他報告数の多い国は、中国(1,834名)、インド(3,807名)、イラク(532名)、イラン(345名)、フィリピン(213名)、マレ−シア(124名)であった。

 ヨ−ロッパではドイツ(2名)と英国(33名)から報告されたが、いずれも輸入事例であった。

 オセアニアでは患者数3,757 名、死者数26名が報告された。10年以上も発生のなかったミクロネシアで患者数3,452 名、死者数20名、マ−シャル諸島で患者数300 名、死者数6名が報告されたことは特記すべき事項である。

 以上のように、2000年のコレラの患者数は全体的に減少した。前年と比較して患者の減少はアジアが最も著しく、ついでアメリカ大陸、アフリカ大陸の順であったが、患者の報告数自体はアフリカが依然として他大陸のそれを大きく凌駕している。なお、多くの国でなされたコレラの伝播防止に対する努力で患者数は著しく減少したのは確かであるが、旅行や貿易面での不当な制限に対する恐れ、またサ−ベイランスや報告のシステム上の問題のため、公式に報告された患者数がすべての国におけるコレラ問題の実態を必ずしも反映しているものではないとコメントされている。

 

表1 我が国におけるコレラの発生状況

 

年次 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
輸入事例
国内事例
72(15)
30(6)
49(18)
3(0)
99(16)
3(0)
90(16)
24(1)
341(36)
31(5)
49(9)
13(1)
65(8)
36(10)
66(12)
7(0)
45(10)
6(0)
41(6)
11(1)
合計 102(21) 52(18) 102(16) 114(17) 372(41) 62(10) 101(18) 73(12) 51(10) 52(7)

( ):東京都分再掲

 

表2 世界のコレラ発生状況(WHOWeeklyEpidemiologicalRecord)

 

年次 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
報告国数
罹患者数
59(16)
594,694
68(5)
461,783
78(7)
376,845
94(7)
384,403
78(0)
208,755
71(2)
143,349
65(2)
147,425
74(1)
293,121
61(0)
254,310
56(2)
137,071

( ):1961年を起点とした新たに罹患者が報告された国数

 

微生物部 細菌第一研究科 松下 秀

 


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