東京都健康安全研究センター
東京都におけるウイルス性胃腸炎の発生状況 (2001年度)

東京都におけるウイルス性胃腸炎の発生状況 (2001年度)(第23巻、6号)

 

2002年6月

 


 ウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスとしては、ロタウイルス、ノーウォーク様ウイルス(NLVs)、アデノウイルス(AD)、アストロウイルスなどが挙げられる。各種ウイルスによる胃腸炎の特徴を表1に示した。これらのウイルス性胃腸炎は、主に汚染された食物や飲料水を摂取することによる感染 (経口感染)であるが、吐物や飛沫からの感染も報告されている。

 2001年度、当研究科における感染性胃腸炎の病原体検索結果について報告する。

 感染性胃腸炎患者(1歳未満;30名、1〜5歳;75名、6〜10歳;19名、11〜20歳;7名、21〜80歳;22名、年齢不明;1名)154名の糞便からウイルスの分離とウイルス遺伝子の検索を行った。患者の主な臨床症状は、下痢(121名;78.6%)、38.0℃以上の発熱(82名;53.2%)、嘔吐(74名;48.1%)、腹痛(27名;17.5%)、嘔気(25名;16.2%)であった。ウイルス分離試験および遺伝子検査等により95例から各種のウイルスが検出され、感染性胃腸炎患者154名中86名がウイルス性胃腸炎と確定診断された。検出されたウイルスの内訳は、図1に示したようにNLVsが40例(42.1%)と最も多く、次いでADが28例(29.5%)、ロタウイルスが21例(22.1%)、その他のウイルスが6例(6.3%;エンテロウイルス3例、麻疹ウイルス2例、サイトメガロウイルス1例)であった。

 患者の臨床症状を検出ウイルス別に比較すると、下痢、嘔気、嘔吐等消化器症状を呈した比率に顕著な差はみられなかったが、38.0℃以上の発熱を伴う症例はAD陽性者に多く、なかでも40.0℃以上の高熱を呈した患者が6名(21.4%)含まれていた。

 NLVsは40例検出され、genotypeⅠ(GⅠ)4例、genotypeⅡ(GⅡ)31例に型別され、5例は型別不明であった。GⅠと型別された4例は、散発事例2件(3歳児2名)と家族内感染事例1件(20歳代の同一家族2名)から検出された。表2に示した年齢別の検出状況から、NLVsは6歳以下、特に3歳児に多く陽性者がみられた。また他の2つのウイルスとは異なり、10〜80歳代の患者10名からも検出された。

 ロタウイルスはA群が20例、C群が1例から検出された。A群ロタウイルスが検出された患者20名の年齢をみると、0〜4歳児が圧倒的に多かった(表2)。C群ロタウイルスは、4月に30歳代の成人から1例検出された。

 ADは28例から検出され、このうち組織培養法によるウイルス分離試験により9株のADが分離された (AD1型2株、AD2型1株、AD3型4株、AD40/41型2株)。また同一検体から2つのウイルスが検出された重複感染例が9例みられた。(ADとA群ロタウイルス;5例、ADとNLVs;2例、ADと麻疹ウイルス;1例、NLVsとA群ロタウイルス;1例)。

 表3に示したようにウイルス陽性者の検体採取時期(病日)を比較してみると、ロタウイルスおよびADは7病日以内、NLVsでは3病日以内に検出された例が多かった。

 図2に月別ウイルス検出状況を示した。ウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスは単一でないため、ウイルスにより発生時期が若干異なるが、概ね流行の中心は冬期であった。2001年度は、11月からNLVsが検出されはじめるとウイルス検出数は急激に増加し、11月から3月までの間に計64例からウイルスが検出された。この数は2001年度に胃腸炎患者から検出されたウイルスの67.4%にあたる。ロタウイルスは1月から検出されはじめ、最終的に6月まで検出された(4月5例、5月4例、6月2例:今回の陽性数に含まれていない)。同時期の全国病原体情報によると、NLVsは10月下旬から検出されはじめ、12月をピークにその後減少し、2月中旬以降はロタウイルスがNLVsの検出数を上回っていた。東京都においても両ウイルスの流行の推移は全国と同じ傾向を示していた。ADはほぼ一年を通して検出されたが、NLVsやロタウイルスが検出されていない8月に最も多く検出された。

 

 

微生物部 ウイルス研究科 長島 真美

 


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