東京都健康安全研究センター
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の分類

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の分類(第23巻、9号)

 

2002年9月

 


 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体であり、遺伝子学的にHIV-1とHIV-2の2種類に大別される(表1)。HIV-1は日本を含めた世界で最も流行している型であり、その多くを占めるグループM(Main)と限局した地域で認められるグループO(Outlier)、N(New)の3種に分類され、グループMはさらに9種のサブタイプ(A〜D,F〜H,J,K)に分類されている。以前よりサブタイプEと呼ばれていたウイルスは、1992年にタイにおける流行で発見されたウイルスであるが、遺伝子学的にサブタイプAとの組換え体であることが判明し、CRF01_AEと命名された。また、サブタイプIもほぼ同様な理由によりサブタイプから削除された。CRFs ( circulating recombinant forms;組換え流行株)とは、HIVのサブタイプ間の遺伝子組換えウイルスが地域流行株となったものを指し、現在までに15種類に分類され(表2)、流行株となっていない組換えウイルス(unique recombinant form;URF弧発型組換えウイルス)と区別されている(http://hiv-web.lanl.gov/content/hiv-db/CRFs/CRFs.html)。このように、HIVの分類が複雑多岐になった背景として、HIVが感染し増殖する過程で変異し、サブタイプ間等の遺伝子組換えが起こりやすいことが原因として挙げられている。

 一方、HIV-2はA〜Gにサブタイプ分類され、主に西アフリカに限局して存在していたが、フランス、アメリカ、西インド地域や韓国においても感染例の報告がある。我が国においては、1992年および2002年に外国籍の感染者2例の報告がある。

 ウイルスの病原性および感染力に関しては、HIV-1はHIV-2と比較して強いことが知られているが、HIV-1の中ではグループおよびサブタイプ間の違いは認められていない。なお、HIVの型、サブタイプの違いにより、ELISA等による抗体検査で見落としが生じることはない。

 東京都立衛生研究所では、1987年以来、保健所、南新宿検査相談室などの受診者についてHIV抗体検査を実施してきている。近年はHIV抗体検査総数に大きな変化はみられないが、抗体陽性数は年々増加傾向にある。15年間で481例の陽性例が認められたが、それらはすべてHIV-1感染によるものであり、型別不明例を除いて、サブタイプBが約91%と大多数を占め、CRF01_AEは9%であった。サブタイプBは欧米型として知られ、非加熱血液製剤による感染者由来のHIVもこのサブタイプに入る。

 厚生労働省の研究班の集計によると、日本人感染者の感染経路別サブタイプ分類では、男性同性間の性的接触による感染例由来HIVの98%がサブタイプBであったのに対し、異性間の性的接触による感染例由来HIVの51%がCRF01_AE、34%がサブタイプBであり、その他、サブタイプA、C、D、Gが認められること。外国籍感染者由来のHIVの80%がCRF01_AE、9%がサブタイプBであり、その他、A、C、F、URFA/Cが認められることが報告されている。

 以上のように、日本においては、主としてサブタイプBおよびCRF01_AEが流行しており、また、感染経路や国籍によってもサブタイプの分布が異なることから、サブタイプ型別は疫学的な解析手段として有用と思われる。

 

 

微生物部 ウイルス研究科 貞升 健志

 


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