東京都健康安全研究センター
2002/2003 年冬季に東京都内で検出されたインフルエンザウイルスの性状

2002/2003 年冬季に東京都内で検出されたインフルエンザウイルスの性状(第24巻、1号)

 

2003年1月

 


 2002/2003年冬季の東京都内で発生した学校集団発生インフルエンザ流行について、都立衛生研究所で実施したウイルス検査結果と分離株解析結果の概要について述べる。
 2002年12月2日から2003年2月4日までに都内各地区の小中学校で初発生したインフルエンザ様疾患の集団発生30事例、104検体を対象に遺伝子検査、ウイルス分離試験および血清学的検査を実施した。

 今冬季のインフルエンザ集団発生は昨年より早く、2002年12月3日に発生した多摩川保健所管内の中学校における集団発生事例が初発で、咽頭うがい液からB型ウイルスが分離された。また、A香港(AH3)型ウイルスは、12月11日に搬入された中野区保健所管内の小学校で発生した集団事例で初めて分離された。初発から2月25日までの間に、AH3型による11事例、B型による14事例、AH3型とB型の混合による4事例、アデノウイルス3型による1事例の集団発生が確認された。この結果から、今季の流行型は、2002年末は主としてB型であったが2003年初頭からAH3型が主流となったことが判った。その後、この2つの型のウイルスによる流行が継続し、1998/1999年以来の流行規模となった。

 各集団から分離されたウイルス株について、国立感染症研究所(感染研)配布の2002/2003年シ−ズン用フェレット感染血清を用いた赤血球凝集抑制(HI)試験により型別同定を実施した。さらに、2002/2003年シーズンのワクチン株および近年流行ウイルス株と今季分離株との比較のために各株のウイルスRNAを抽出し、HA遺伝子領域(566アミノ酸)の一部をRT−PCR法により増幅後、塩基配列を決定した。これらの塩基配列をアミノ酸配列に置換し、遺伝子系統樹を作成して各株の比較を行った。

 今季分離されたAH3型株(A/Tokyo/315/2002他)に対するワクチン株(A/Panama/2007/99)抗血清によるHI価は、40〜320倍であり、ワクチン株とのホモHI価1280倍と比べると約1/4程度の反応性であった。同分離株のHA領域のアミノ酸配列は、配列を決定した103アミノ酸中4〜5アミノ酸がワクチン株と異なっていた。今季のAH3型分離株は、ワクチン株の進化系統上にある株であると推察された。

 一方、B型分離株(B/Tokyo/298/2002他)に対するワクチン株(B/Shangdong/7/97)抗血清によるHI価は、ワクチン株とのホモHI価が80倍のときに20〜40倍と低力価であった。また、分離株のHA領域のアミノ酸配列の比較では、ワクチン株とは68アミノ酸中1アミノ酸が異なっていたのみであり、アミノ酸配列上はワクチン株に近縁であることが判明した。

 今回の解析結果から、特にシーズン後半に分離した一部のAH3型株がワクチン株の抗原性状と乖離する傾向にあることが明らかとなった。感染研や他の地方医療機関も同様の結果を報告しており、今後の動向が注目されている。

 

微生物部 ウイルス研究科 新開敬行

 


 

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