東京都健康安全研究センター
東京都におけるウイルス性胃腸炎集団発生(2002年)

東京都におけるウイルス性胃腸炎集団発生(2002年)(第24巻、9号)

 

2003年9月

 


 

 平成9年5月に食品衛生法の改正が行われ、食中毒病因物質に小型球形ウイルスが追加され、本年8月にはこの病因物質名が小型球形ウイルスからノロウイルスに変更された。本稿ではウイルス性胃腸炎集団発生の最も重要な病原因子であるカリシウイルス科の新しい分類について解説し、加えて2002年の都内におけるウイルス性胃腸炎集団発生状況について報告する。

 カリシウイルス科の分類は、1999年8月にシドニーで開催された第11回国際ウイルス学会において遺伝子学的方法により4属に分類することが承認された。しかし、ヒトから検出されるカリシウイルスの属名は正式決定されず、仮称として”Norwalk-like viruses”と”Sapporo-like viruses”が示された。その後、2002年8月にパリで開催された第12回国際ウイルス学会において、表1に示すように”Norwalk-like viruses”はノロウイルス、”Sapporo-like viruses”はサポウイルスとして正式に承認された。また, ウイルスの一般表記として種名までイタリック表記とすることが決定された. この新しいウイルス分類に基づいて、食品衛生法の食中毒病因物質名「小型球形ウイルス」は「ノロウイルス」に変更された。これまで小型球形ウイルス検索は全て遺伝子学的方法(RT-PCR法)によって行っており、ノロウイルス検索と全く同一である。また、サポウイルスは乳幼児の急性胃腸炎の主要病原体であるが、食中毒の原因となることはほとんどない。

 以下2002年の都内におけるウイルス性胃腸炎集団発生状況について述べる。調査期間中に387集団の食中毒疑い事例から5, 655件の検査材料が搬入され、胃腸炎起因ウイルスの検索を行った。その結果、223集団(57.6%)からウイルスが検出され、検出ウイルスの内訳はノロウイルス218集団、A型肝炎ウイルス(HAV)2集団、ロタウイルス2集団、アデノウイルス41型1集団であった。月別の検出状況は、2001年と同様にウイルス陽性事例は毎月認められている. ノロウイルスの陽性率は1月が最も高く100%であり、次いで2月86.0%、12月74.6%の順であった。A型肝炎ウイルスは2月、ロタウイルスは1月と6月、アデノウイルス41型は7月に検出された。(表2)

 検出されたノロウイルスの遺伝子型を調査した結果、調査対象となった35事例の内GⅠ型は6事例(17%)、GⅡ型は29事例(83%)を占め、これまでと同様にGⅡ型の検出例が圧倒的に多かった。しかし、塩基配列の一致率でみるダイレクトシークエンス法による系統樹解析の結果クラスターの比較では, 2002年にはBristol類似株が15株と最も多く、2000年に多かったYuri類似株は4株と減少し、主に検出されるノロウイルスのクラスターに年次推移が認められた。(図1)また、ノロウイルス遺伝子には多様性が頻繁に認められ、変異が激しいことが分かった。今後のノロウイルス検索では随時遺伝子解析結果から検査に用いるプライマー、プローブの見直しを継続し、ノロウイルス診断法の改善を続ける必要がある。

 

表1 カリシウイルスの分類

科 Family 属 Genus 種 type species
Caliciviridae 1. Lagovirus
2. Norovirus
3. Sapovirus
4. Vesivirus
Rabbit hemorrhagic virus(RHDV)
Norwalk virus(NV)
Sapporo virus(SV)
Vesicular exanthema of swine virus(VESV)

 

 

表2 都内のウイルス性胃腸炎発生状況(2002年)

(単位:集団)

 

区   分 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合 計
調 査 数 50 50 40* 22 42 24 22 12 9 18 39 59 387*


ノロウイルス 49 43 21 9 18 4 3 2 2 3 20 44 218
HAV 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2
ロタウイルス 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 2
アデノウイルス 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
小 計 50 43 23 9 18 5 4 2 2 3 20 44 223
陰  性 0 7 18 13 24 19 18 10 7 15 19 15 165

 

*:ノロウイルスとA型肝炎ウイルス(HAV)が同時に検出された集団事例が1事例あるため、内訳と調査数は一致しない。

 

 

 

微生物部 ウイルス研究科 林 志直

 



感染症情報センターTOPへ

   健康安全研究センターTOPへ

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2013 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.