東京都健康安全研究センター
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症(第24巻、10号)

 

2003年10月

 


 

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は、1949年に皮膚のイボ(乳頭腫)より電子顕微鏡で確認された。約8,000塩基の環状二本鎖DNAを有し、現在、パポーバウイルス科に分類されている。皮膚以外にも口腔、生殖器などの扁平上皮に接触感染し、乳頭腫を形成する。ヒト以外の哺乳動物や鳥類においても同様のパピローマウイルスの存在が確認されているが、種を越えて他の動物に感染することはない。

 HPVは試験管内で増殖させることができないため、十分な量のウイルス液を得ることができない。また、感染してもウイルスに対する抗体価が上昇しにくいため、血清型別が困難とされている。以上の理由により、1970年代より遺伝子の塩基配列に基づいた型別が行われ、現在、80種類以上の型に分類されている。HPVのうち約半数(HPV1,5,8,14,20,21,25,47型等)は皮膚型と呼ばれ、手や足などの皮膚に感染し乳頭腫を形成する。その他の型(HPV6,11,16,18,31,33,35,39,41-45,51,52,56,58,59,68,70型)は性器・粘膜型と呼ばれ、生殖器に感染し、尖圭コンジローマの原因となる場合もあり、また、子宮頸癌との関連も注目されている。

 尖圭コンジローマは感染症発生動向調査事業において性感染症定点病院から保健所への届出により発生状況の把握が行われている疾患である。外陰部や肛門に突起状の小丘疹を形成するのが特徴で、細菌による二次感染が起きると悪臭を放つことがある。治療は電気メスによる摘出手術や液体窒素による凍結療法が行われている。

 子宮頸部から発生する癌の約90%は扁平上皮癌で、好発年齢は40〜50歳といわれている。1983年にDurstらが子宮頸癌組織より最初にHPV16型遺伝子を検出して以来、18,31,33型など多くの型が子宮頸癌と関連していることが明らかとなった。HPVの癌化のメカニズムについては、HPVのE6,E7蛋白が癌蛋白質の性質を備え、細胞の不死化に関与していることが報告されている。また、子宮頸癌由来の株化細胞であるHeLa細胞中にもHPV18型遺伝子が確認されている。これまでの研究により、子宮頸部の前癌状態や子宮頸癌組織から特定の亜型の粘膜型HPVが検出されることが明らかとなったことから、現在HPVは表に示すようなローリスク型とハイリスク型に分類されている。ローリスク型のHPVは、尖圭コンジローマや子宮頸部の軽度な上皮内腫瘍との関連が認められている。一方、ハイリスク型のHPVは尖圭コンジローマからほとんど検出されないが、子宮頸部の高度前癌病変や子宮頸癌組織内から検出されている。

 東京都においては、2002年より感染症発生動向調査における性感染症定点病院より搬入された、子宮頸部拭い液を材料としてHPV検査を実施している。子宮頸部拭い液139例からDNAを抽出し、カプシド蛋白をコードするL1遺伝子を特異的に増幅する共通プライマー(My09/My11)を用いたPCR法により遺伝子増幅を行った結果、49例からHPV遺伝子を検出した(30.9%)。この49例について塩基配列を決定し、遺伝子バンク(NCBI)のデータと比較した結果、うち21例(15.1%)は子宮頸癌のハイリスク型に属するHPV16,18,31等の型であった。また、6例はHPV6型などのローリスク型であり、22例はどちらのリスク型にも属さない型であった。

 現在、HPVと子宮頸癌との関連性が徐々に明らかにされつつあるが、HPV感染から発癌に至るまでのメカニズムのうち、未だ明らかにされていない部分も存在している。今後もその解明に向けて多面的な調査研究を実施していく必要がある。

 

表.HPVとリスク分類

ローリスク型 HPV6,11,41,42,43,44型
ハイリスク型 HPV16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,70型

 

 

微生物部 ウイルス研究科 貞升健志

 



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