東京都健康安全研究センター
東京都区部におけるSTI検査診断結果の推移

東京都区部におけるSTI検査診断結果の推移(第24巻、12号)

 

2003年12月

 


 

 

 東京都では1987年から各保健所において相談窓口を開設し、HIV抗体検査を実施してきた。1999年4月からは相談者が希望した場合、梅毒抗体検査、クラミジア・トラコマチス(以下「CT」という。) 抗体検査、淋菌核酸検査の3 項目についても検査するSTI検査相談事業を行ってきた。さらに2000年からは毎年11月16日からのエイズ月間に、南新宿検査相談所を訪れた相談者についても梅毒抗体検査、CT抗体検査を行っている。今回は事業開始から2003年12月までの4年9ヶ月間に特別区保健所(以下、「区保健所」という。) と4年間、4回のエイズ月間に南新宿検査相談所(以下、「南新宿」という。)から搬入された検体の検査成績について報告する。

 相談は区保健所、南新宿共に匿名で受け付けており、性別や年代の申告も強制はしていないが、相談者のほとんどが申告を行っている。なお、相談者のその他の背景は不明である。

 区保健所からは10,704人から採取された検体が搬入され、男女比は1.6: 1で、男性は95.1%、女性では88.2%が30歳代以下であった。

 南新宿からは4 回のエイズ月間中に4,082人から採取された検体が搬入された。男女比は2.3:1で、30歳代以下は男性81.7%、女性95.1%であった。区保健所の相談者群に比較して、男性では高年代側に、女性は若年代側にシフトしている。なお、各検査項目の実施数は相談者が希望する項目についてのみ検査を行うため項目毎で異なっている。

 梅毒抗体検査は12,088検体について実施し、陽性は136例(陽性率1.1%)であった。そのうち区保健所からの依頼検体は8,032 検体で、陽性は75 例(0.9%)であった。また南新宿からの依頼検体では4,056検体で、陽性は61例(1.5%)であった。男女別にみると、男性は7,826検体で陽性は127例(1.6%)、女性は4,247検体で陽性は6例(0.1%)であった。このほかに15 検体の性別不明検体があり、3例(20.0%)が陽性であった。

 CT抗体検査は13,679検体について実施した。陽性は3,663例(26.8%)であった。このうち区保健所からは9,632検体で陽性は2,721例(28.2%)であり、南新宿からは4,047検体で陽性は942例(23.3%)であった。男女別にみると、男性は8,681 検体で陽性は1,848例(21.3%)、女性は4,961検体で陽性は1,805例(36.4%)であった。このほかに37検体の性別不明検体があり、10例(27.0%)が陽性であった。

 淋菌核酸検査については尿を検体としているが、南新宿には採尿設備がないことから実施していない。区保健所からの5,676検体を検査した結果、30例(0.5%) が陽性であった。男性は3,614 検体中11例(0.3%)が陽性で、女性では2,056検体中19例(0.9%)が陽性であった。このほかに6検体の性別不明検体があり、全て陰性であった。

 近年、わが国においてSTI感染が拡大していることが指摘されており、梅毒やCT感染の拡大と共にHIV感染の拡大も懸念されている。区保健所や南新宿からの依頼検体はSTI感染の危惧をもつ相談者の検体であることから、医療機関における結果よりは不顕性感染者を含めたSTI感染者の実態を反映していると考えられる。

 検査項目毎に陽性率の年推移をみると、男性における梅毒抗体陽性率は年々上昇しており、特に南新宿依頼検体で顕著であった。しかし、RPR法抗体価が16倍以上であったものは2003年の南新宿依頼検体の陽性例24例のうち11検体(45.8%)、区保健所依頼検体の陽性例30例のうち14例(46.7%)とほぼ同じレベルであった。

 一方、CT抗体陽性率は区保健所依頼検体のほうが高く、特に女性に限ると区保健所依頼検体における陽性率38.4%は、南新宿依頼検体の陽性率30.1%に比較して有意に高いものであった。また有意差はないが区保健所依頼検体中10歳代の陽性率は44.8%で、20歳代の陽性率37.0%より高く、10歳代の女性にCT感染が拡大していることを裏付けている。

 さらに淋菌核酸検査の結果ではこの4 年間の陽性率はほぼ横這い、もしくは漸減傾向であった。また、2003年に限ってみると、CT抗体陽性率も前年と同水準または低下傾向を示したが、この成績がSTI感染者の減少傾向を示しているか否かの判断には今後の調査が必要であろう。いずれにせよSTI陽性率は依然高い水準にあることから感染予防の重要性をさらに強く啓蒙することが、HIVをはじめとするSTIの蔓延防止対策となるものと考える。

 

梅 毒 検 査 の 成 績

 

年齢 特 別 区 保 健 所 南新宿検査相談所
男 性 女 性 男 性 女 性
検査数 陽性数 (%) 検査数 陽性数 (%) 検査数 陽性数 (%) 検査数 陽性数 (%)
19歳以下 111 1 0.9 206 0 0.0 66 0 0.0 66 0 0.0
20〜29歳 1,655 22 1.3 1,634 2 0.1 1,147 25 2.2 789 0 0.0
30〜39歳 1,812 21 1.2 813 0 0.0 1,106 26 2.4 304 0 0.0
40〜49歳 684 6 0.9 221 2 0.9 363 5 1.4 46 1 2.2
50歳以上 716 16 2.2 146 1 0.6 155 4 2.6 13 0 0.0
不明 11 1 9.1 8 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0
4,989 67 1.3 3,028 5 0.2 2,837 60 2.1 1,219 1 0.1

 

クラミジア・トラコマチス抗体検査の成績

 

年齢 特 別 区 保 健 所 南新宿検査相談所
男 性 女 性 男 性 女 性
検査数 陽性数 (%) 検査数 陽性数 (%) 検査数 陽性数 (%) 検査数 陽性数 (%)
19歳以下 124 28 22.6 241 108 44.8 49 9 18.4 67 21 31.3
20〜29歳 2,022 389 19.2 2,030 752 37.0 1,128 196 17.4 782 234 29.9
30〜39歳 2,143 463 21.6 1,030 419 40.7 1,127 241 21.4 303 88 29.0
40〜49歳 789 197 25.0 259 106 40.9 376 84 22.3 46 16 34.8
50歳以上 754 190 25.2 186 54 29.0 158 52 32.9 11 5 45.5
不明 11 3 27.3 6 2 33.3 0 0 0.0 0 0 0.0
5,843 1,270 21.7 3,752 1,441 38.4 2,838 578 20.4 1,209 364 30.1

 

淋菌核酸検査の成績

 

年齢 特 別 区 保 健 所
男 性 女 性
検査数 陽性数 (%) 検査数 陽性数 (%)
19歳以下 68 0 0.0 155 5 3.2
20〜29歳 1,273 8 0.6 1,135 7 0.6
30〜39歳 1,378 3 0.2 560 6 1.1
40〜49歳 476 0 0.0 129 1 0.8
50歳以上 413 0 0.0 76 0 0.0
不明 6 0 0.0 1 0 0.0
3,614 11 0.3 2,056 19 0.9

 

STI検査  陽性率の年推移   (%)

 

年次 梅 毒 抗 体 クラミジア・トラコマチス抗体 淋菌核酸
特別区保健所 南 新 宿 特別区保健所 南 新 宿 特別区保健所
1999年 0.0 0.0 - - 27.3 39.8 - - 0.8 1.3
2000年 0.3 0.0 1.6 0.4 20.0 39.3 21.0 31.5 0.4 0.3
2001年 1.6 0.0 1.7 0.0 23.1 36.4 22.4 31.6 0.2 0.7
2002年 1.7 0.3 2.2 0.0 22.6 40.8 19.4 29.4 0.3 1.1
2003年 1.5 0.3 2.7 0.0 20.5 37.4 19.2 28.8 0.3 1.2

 

微生物部 病原細菌研究科 伊瀬 郁

 



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