東京都健康安全研究センター
東京都内における髄膜炎菌感染症発生状況について(1989年〜2003年)

東京都内における髄膜炎菌感染症発生状況について(1989年〜2003年)(第25巻、2号)

 

2004年2月

 


 髄膜炎菌( Neisseria meningitides )は肺炎球菌、インフルエンザ菌とともに細菌性髄膜炎の三大原因菌の一つとなっている。しかしながら、他の細菌性髄膜炎が感染症法の5類定点把握疾患であるのに対し、髄膜炎菌性髄膜炎は5類全数把握疾患として独立している。

 髄膜炎菌性髄膜炎は、髄膜炎症状のほかに急な発熱、血圧降下、広範な皮膚の出血斑、ショックを起こし、数時間で死の転帰をとるWF(Waterhouse-Friderichsen)症候群を起こすことがあり注意が必要である。病原体は、患者及び保菌者が鼻咽頭に保有しており、感染は、直接接触又は飛沫感染によって起こる。髄膜炎菌性髄膜炎の致死率は、治療しなかった場合ほぼ100%であり、早期診断治療しても約10%である。2003年に都内で敗血症を起こした1例は、24歳女性で咽頭炎発症3日後に電撃性紫斑病を呈し、全身状態が悪化したが、紫斑の形状から髄膜炎菌による感染症と早期に診断され、適切な治療が行われたため治癒している。

 髄膜炎菌は莢膜多糖体抗原によって13の血清型に分類され、髄膜炎は主にA群、B群、C群によって起きている。特にC群では副腎その他の臓器に出血をきたし、末梢血管に作用して循環不全を起こすことが多いと言われている。アメリカ、ヨーロッパではC群、W135群などによる流行が見られているが、サハラ砂漠以南のアフリカ西海岸からエチオピアにかけての中央アフリカに、A群髄膜炎菌による髄膜炎多発地帯があり、「髄膜炎ベルト」と呼ばれている。2004年2月にもガーナで26名の死亡例を含む患者306名の流行が報告されている。

 わが国では1940年代までは年間の患者数が1,000名を超え、A群による流行が多発していたが、1970年以降は年間の届出数が50例以下と激減している。近年は、B群による散発例が主流であり、A群分離例としては、2000年に東京都内でAIDS患者から検出された例と、2003年に鳥取県において中国から帰国後に髄膜炎菌性髄膜炎を発症した症例からの検出例が報告されているのみである。

 表1に東京都における髄膜炎菌感染症発生状況を示した。1989年から2003年までの15年間に髄膜炎菌の検出された症例が33例あった。そのうち髄膜炎患者は23例であり、表には示していないが、その後の経過が判明している5名のうち2名は、死亡している。それ以外の疾病と診断された10例の内訳は、敗血症3例、尿道炎2例、上気道炎、肺炎、AIDS、リンパ節腫脹及び不明が各1例であった。これらの症例から検出された髄膜炎菌について血清型別を実施した成績を表2に示した。分離菌の血清型は髄膜炎患者23名中16名がわが国で主流のB群であり、W135群は1999年に1株分離されたのみであったが、髄膜炎以外の患者からは最も多く分離され、10名中3名がW135群であった。また、今回集計した髄膜炎患者23例の年代別患者数を表3にまとめた。髄膜炎患者は、一般に15歳以下で乳幼児に多いと言われているが、報告された年齢は、3ヶ月から65歳であり、20〜29歳が5名で最も多く、次いで50〜59歳の4名であった。性別では男性12名、女性9名、不明2名であった。

 

表1.東京都における髄膜炎菌感染症発生状況(1989年〜2003年)

 

分離年 髄膜炎例数 その他の症例数 合計
1989 1   1
1990     0
1991     0
1992 2   2
1993 1   1
1994 1   1
1995     0
1996 2   2
1997     0
1998 4 3 7
1999 5 2 7
2000 2 2 4
2001 1   1
2002 1   1
2003 3 3 6
合計 23 10 33

 

表2.東京都内の患者から検出された髄膜炎菌の血清型(1989年〜2003年)

 

診 断 名 血 清 型 合 計
 A   B   C  W135  X   Y   UT 
髄 膜 炎   16 2   1 3   23
敗 血 症     1 2       3
尿 道 炎   1         1 2
上気道炎   1           1
肺   炎       1       1
エ イ ズ 1             1
リンパ節腫脹           1   1
不   明             1 1
合   計 1 18 3 3 1 4 2 33

 

表3.東京都における髄膜炎患者の年代別発生状況(1989年〜2003年)

 

年齢階層 男性 女性 不明 合計
0〜1 1     1
1〜9 2     2
10〜19 1 2   3
20〜29 3 2   5
30〜39        
40〜49 1 1   2
50〜59 3 1   4
60〜69   2   2
不 明 1 1 2 4
合 計 12 9 2 23

 

 

微生物部 病原細菌研究科 奥野 ルミ

 


 

感染症情報センターTOPへ   健康安全研究センターTOPへ」

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2013 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.