東京都健康安全研究センター
咽頭結膜熱とアデノウイルス

咽頭結膜熱とアデノウイルス(第25巻、7号)

 

2004年7月

 


 咽頭結膜熱(Pharyngoconjunctival fever:以下PCF)は、アデノウイルスによる感染症で、ウイルスに汚染されたプール水を介しての感染も多くみられることから、プール熱とも呼ばれている。PCFは、飛沫、経口および結膜を感染経路とし、ウイルス感染後5〜7日間の潜伏期を経て発病する。主な症状は38〜39℃の発熱、のどの痛みを伴う咽頭炎および結膜炎であり、通常1週間程度で回復する。

 PCFは五類感染症・小児科定点報告疾患であり、例年、8月に流行のピークを迎える夏期の疾患であるが、2000年以降、冬季にも流行がみられるようになった。この傾向は、特に2003年から2004年の冬季で顕著となっている。

 全国において2003年に報告されたPCF患者報告数は40,714人と、過去10年間で最多となった。2004年は、2003年の冬季流行に引き続いて患者数は更に増加し、既に2003年を上回る患者数が報告されたことから、厚生労働省は2004年6月にPCFに対する注意を喚起した。東京都においても、29週に定点あたり患者報告数が1.22となり、過去10年間で最も高い値となった(図)。

 PCFの他、呼吸器、眼、腸管等に多様な疾患を起こすアデノウイルスには、現在51の血清型があり、血清型と疾患には、若干の関連性が知られている。すなわち、PCFを起こすのは主として3型であり、他に7型、4型および2型などによる症例も報告されている。当センターで行った感染症発生動向調査においても、2003年および2004年に発生したPCF患者からはアデノウイルス3型が検出されている。しかし、ここ数年の特徴として、必ずしも結膜炎を伴わない多くの症例からも同型ウイルスが検出されている。2003年から2004年4月に検出されたアデノウイルス301件の疾患名の内訳をみると、3型はPCF3件の他に、結膜炎を伴わない上・下気道炎の29件および感染性胃腸炎、不明発疹症および不明熱など合計14疾患にわたる59件から検出されている(表1)。

 さらに、月別の検出状況では、アデノウイルス3型は、7月に13件と最も多く検出されたが、夏期に限定されず、年間を通じて検出されるようになってきている(表2)。以上のことから、PCFの流行に季節性が無くなってきた背景には、アデノウイルス3型の通年流行が関連していると考えられる。また、温水プール等の通年型のプール水を介した感染やプールに関連しない飛沫・経口感染も患者発生の増加に関与していることが推察される。
最近、アデノウイルス簡易検査キットの普及により、病院内での迅速検査が可能となった。しかし、これら検査キットではウイルスの血清型別までは判定できない。多種類の血清型があり、かつ多様な臨床症状を呈するアデノウイルス感染症の発生動向を把握するには、血清型別をはじめとする詳細な検討が必要である。

 

 

表1 当センターで検出されたアデノウイルスの血清型による疾患内訳(20031月年〜2004年4月)

疾患名 1型 2型 3型 4型 5型 19型 37型 40/41型 型不明
下気道炎 4 11 15   1       35 66
感染性胃腸炎 2 5 5         1 48 61
上気道炎   6 14 2         12 34
不明発疹症   6 3           12 21
不明熱 2 6 3           8 19
流行性角結膜炎   1 1     3 1   10 16
痙攣 5 1             5 11
インフルエンザ 1 2 1   1     1 2 8
川崎病     2           4 6
ヘルパンギーナ   1 1 1         1 4
咽頭結膜熱     3           1 4
手足口病   1 1           1 3
肝炎     2             2
無菌性髄膜炎     1           1 2
流行性耳下腺炎   2               2
脳症                 2 2
川崎病                 1 1
感染性腸炎(疑)   1               1
急性胃腸炎                 1 1
突発性発疹                 1 1
突発性発疹症   1               1
腹痛                 1 1
無症状 1                 1
伝染性紅斑                 1 1
その他 1 4 7   2       18 32
16 48 59 3 4 3 1 2 165 301

 

 

表2 アデノウイルスの月別検出状況(2003年1月〜2004年4月)

検出月 1型 2型 3型 4型 5型 19型 37型 40/41型 型不明
2003年1月 4 6 4           9 23
2月   2 1         1 6 10
3月 5 1 3   2       14 25
4月 3 1 1           9 14
5月   6 3       1   10 20
6月   7 6   1       11 25
7月 1 4 13 1 1       7 27
8月   6 5 1   1     6 19
9月 1 5 6           12 24
10月   1 1     2     7 11
11月 1 3 2         1 5 12
12月 1   3 1         11 16
2004年1月                 8 8
2月   2 1           20 23
3月   1 4           26 31
4月   3 6           4 13
16 48 59 3 4 3 1 2 165 301

 

 

微生物部 ウイルス研究科 田部井由紀子

 


 

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