東京都健康安全研究センター
東京都におけるウイルス性胃腸炎集団発生(2003年)

東京都におけるウイルス性胃腸炎集団発生(2003年)(第25巻、9号)

 

2004年9月

 


 ノロウイルスは1997年に食品衛生法の食中毒病因物質に加えられて以来、行政対応により検査が開始された。ノロウイルス性食中毒は冬季を中心に多発し、都内で発生した食中毒事件を病因物質別にみると2002年からは事件数で第一位となっている。また、ウイルス性胃腸炎集団発生では食品によって媒介しない感染症の事例も多く、食中毒か感染症かの判別が困難な場合も多い。今回は2003年1月から12月に都内で発生したウイルス性胃腸炎の集団発生事例からのウイルス検索成績、および検出ウイルスの遺伝子型についての解析結果について紹介する。

 ウイルス性胃腸炎の検索対象事例数は毎年増加しており、2003年に検査対象とした集団発生事例数は417件であった。検査の結果、表1に示したように417件中226件(54.2%)からウイルスが検出された。検出ウイルスの大多数はノロウイルスが占め226件中222件、その他にロタウイルス(2件)、サポウイルス(2件)、アデノウイルス(1件)が検出された。

 発生施設別のウイルス検出状況を表2に示した。検索対象事例417件のうち193件(46.3%)は飲食店で発生し、次いで家庭内76件(18.2%)、会食料理・仕出し弁当43件(10.3%)であった。その他はすべて施設内発生であり、合計105件(25.2%)となった。施設別には宿泊施設36件、高齢者施設25件、小学校19件、幼稚園・保育園12件、学生寮・食堂9件、病院4件の順であった。施設別のノロウイルス陽性率は大きな差が認められ、飲食店、家庭内、会食料理の陽性率が42.5%〜 48.8%であったのに対し、施設内発生の陽性率は81/105件(77.1%)と高率であった。ノロウイルス以外では、サポウイルスと腸管アデノウイルスがそれぞれ1件ずつ幼稚園・保育園内の流行発生事例から検出された。

 検出されたノロウイルスの遺伝子型については、28事例について検討を行った。RT-PCR法により得られたPCR産物を用いて、塩基配列をダイターミネーター法により決定した。遺伝子群別を見ると、これまで同様に遺伝子群GⅡの検出例が圧倒的に多く、28例中26例を占めた。遺伝子型別にみると、最も多かったのはGⅡ-4型Bristol類似株(8例)であり、次いでGⅡ-1型Hawaii類似株(7例)、GⅡ-6型P1B類似株とYuri類似株がそれぞれ3例、GⅡ-2型Melksham類似株とGⅡ-3型Tronto類似株がそれぞれ2例であった。この他にTOC1-93類似株、GⅠ-1型Norwalk類似株、GⅠ-2型類似株がそれぞれ1例ずつ認められた。2002年に最も多かったGⅡ-4型は主流であることに変わりはないが、その例数は減少していた。一方、GⅡ-1型Hawaii類似株は増加し、その例数はGⅡ-4型とほぼ同数の7例に増加した。近年、検出されるノロウイルスの遺伝子型の変化は著しく、変化に対応した検査法を維持していくことが不可欠である。

 

表1.都内におけるウイルス性胃腸炎発生状況とウイルス検出成績(2003年)

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計
検索対象 事例数 67 43 56 39 30 28 14 8 5 18 21 88 417
陽性
事例数
ノロ 44 27 34 19 10 5 1 0 1 3 16 62 222
ロタ 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 2
サポ 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
アデノ 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
44 27 34 20 11 6 2 0 1 3 16 62 226

表2.施設別のウイルス性胃腸炎発生状況(2003年)

  飲食店 家庭内 会食料理
仕出し弁当
宿泊
施設
高齢者
施設
小学校 幼稚園
保育園
学生寮
食堂
病院 合計
検索対象 事例数 193 76 43 36 25 19 12 9 4 417
陽性
事例数
ノロ 84 36 21 23 25 16 9 5 3 222
ロタ 1   1             2
サポ             1     1
アデノ             1     1
85 36 22 23 25 16 11 5 3 226

図1.ノロウイルス遺伝子系統樹 2003年流行期

微生物部 ウイルス研究科 林 志直

 


 

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