東京都健康安全研究センター
都内で分離されたA群溶血性レンサ球菌の薬剤感受性について(1995〜2003年)

都内で分離されたA群溶血性レンサ球菌の薬剤感受性について(1995〜2003年)(第25巻、10号)

 

2004年10月

 


 A群溶血性レンサ球菌( Streptococcus pyogenes 以下 S.pyogenes )は、感染症法において5類感染症全数把握対象疾患の劇症型溶血性レンサ球菌感染症(以下劇症型)および5類感染症定点把握疾患のA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の起因菌である。劇症型は、全国で年間40〜50例の発生報告があり、そのうち40〜50%が死亡している致死率の高い疾患である。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、全国の年間報告数としては1定点医療機関当たり50を超える小児感染症として代表的な疾患である。抗菌治療薬としては、ペニシリン系またはセフェム系薬剤が第一選択薬として常用される。しかし、β-ラクタム系薬剤アレルギー患者の存在に対する配慮あるいは薬剤の宿主細胞内移行性が高いことからマクロライド系またはクロラムフェニコールが選択される場合がある。劇症型では、菌が大量に組織内に存在するため、ペニシリン系薬剤の大量投与に加えリンコマイシン系薬剤が併用される。

 当センターでは、1995年から都内小児科定点病院の協力により、咽頭炎患者から分離された S.pyogenes の型別検査および薬剤感受性検査を実施している。今回は、1995〜2003年の9年間に分離された S.pyogenes 702株の薬剤感受性検査結果について報告する。薬剤感受性は、日本化学療法学会測定標準法である微量液体希釈法による最小発育阻止濃度(MIC)で測定した。供試薬剤は、アンピシリン(ABPC)、セフジニール(CFDN)、セファレキシン(CEX)、セフジトレン(CDTR)、テトラサイクリン(TP)、クロラムフェニコール(CP)、エリスロマイシン(EM)、クラリスロマイシン(CAM)、リンコマイシン(LCM)の9剤である。

 試験結果をみると、β-ラクタム系薬剤であるABPC、CFDN、CEX、CDTRの4剤についてはいずれも良好な抗菌力を示した。一方、その他の5剤ではすべての薬剤に対して耐性株がみられた。耐性パターンをみると、TC(≧8μg/ml)の単剤耐性が111株(62.7%)、TC、EM(≧1μg/ml)、CAM(≧1μg/ml)およびLCM(≧1μg/ml)の4剤耐性が28株(15.8%)、EMおよびCAMの2剤耐性が22株(12.4%)、TC、EMおよびCAMの3剤耐性が7株(4.0%)などであり、1株が5剤すべてに耐性であった。耐性株のT型をみるとTC単剤耐性は、111株中81株(73.0%)がT4型であった。多剤耐性株のT型は、66株中18株(27.3%)がT12型で最も多く、次いでT25型の8株(12.1%)、T1型の7株(10.6%)が多かった。また、5剤すべてに耐性であった株は2003年に分離されたT12型であり、5剤に対するMIC値はすべて32μg/ml以上であった。

 また、年次別耐性株の検出頻度の推移を見ると、TC耐性株は1997年以降2002年を除いて20%以上の出現率であった。マクロライド系薬剤であるEMやCAMに対する耐性株は、1995〜1999年までに比べて2001〜2003年に増加傾向を示し、LCM耐性株も微増している。特にEM、CAM、LCMのMIC値1〜4μg/mlは、1999年以前にはみられず2001年以降にみられた。

 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、毎年夏に減少し秋から冬にかけてピークを迎える。近年マクロライド系薬剤に対する耐性菌の増加傾向が問題になっているため、今後の動向に注意が必要である。

 

咽頭炎患者由来A群溶血性レンサ球菌の各薬剤に対するMIC分布(菌株数)
1995-2003年

MIC値
(μg/ml)
ABPC CFDN CEX CDTR TC CP EM CAM LCM
128         2 2 22   25
64         74        
32         64 2   22*  
16         7   25   1
8         2 8 8 25  
4           481 4 8 1
2     1     204 3 3 4
1     1   1 5 2 5 2
0.5     644   62   2 1 48
0.25     55   377   11 1 367
0.13     1   112   342 27 236
0.06   1     1   256 464 18
0.03 124     106     27 145  
0.015 556 439   183       1  
0.0075 22 262   412          
0.0038       1          
合計 702 702 702 702 702 702 702 702 702

*CAM:>16μg/ml

 

微生物部 病原細菌研究科 奥野 ルミ

 


 

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