東京都健康安全研究センター
東京都におけるE型肝炎

東京都におけるE型肝炎(第26巻、3号)

 

2005年3月

 


 E型肝炎はE型肝炎ウイルス(Hepatitis E virus;以下HEVと略す)の感染によってひき起こされる急性肝炎である。本症は、A型肝炎同様経口感染するが、慢性化することは少なく、一般的に予後が良好な疾患である。しかし、E型肝炎はA型肝炎に比べ劇症化した場合の致死率が高く、特に妊婦の場合では、20〜30%の高い致死率となるとの報告もある。

 HEVはエンベロープを持たない小型の球形ウイルスで、暫定的にE型肝炎様ウイルス属(Hepatitis E-like viruses)と呼ばれていた。しかし、その後の研究により、他の肝炎ウイルスと異なることが明らかにされ、現在はHepeviridae科Hepevirus属という単一ウイルス属に分類されている。HEVの遺伝子型は現在Ⅰ〜Ⅳの4つの型に分類されており、日本国内で検出されるHEVは輸入感染例を除き、Ⅲ型とⅣ型のみである。Ⅰ型は主として欧米や中国等で、Ⅱ型はメキシコで報告されている。しかし、HEVの血清型は、現在1つと考えられており、どの遺伝子型に感染した患者血清もこれら4種類の遺伝子型株と反応する。

 これまで日本におけるE型肝炎の患者発生数は非常に少なく、海外からの帰国者に発症者が多かったことから、輸入感染症の1つと考えられていた。しかし、近年、HEV常在地への渡航歴のない急性肝炎患者からHEV遺伝子(Ⅲ型およびⅣ型)が検出されたことに加え、国内産のブタからも遺伝学的に極めて類似のウイルス(Ⅲ型)が検出された。また、国内での狩猟による鹿や猪等の野生動物肉の生食によるE型肝炎の発症や劇症化して死亡した事例など、国内での本症の発生が次々に明らかにされている。さらに2003年8月には、国内産流通食肉(ブタレバー)の喫食によるE型肝炎発症事例(J.of Gen Virol 84,2351,2003)が報告されたことから、E型肝炎は食品衛生上の問題としても重要視されるようになった。

 東京都では、都内に流通する国内産ブタレバーのHEV汚染状況の調査(抗体およびHEV遺伝子検査)を行った。2003年8月から 2004年12月までにウイルス研究科に搬入されたブタレバー460検体についてドリップ液中の抗HEV-IgG抗体を測定した結果、460件中160件(34.8%)が陽性であった。しかし、RT-nested-PCR法ならびにreal-timePCR法によるブタレバー中のHEV遺伝子検査の結果はすべて陰性であった。以上の結果から都内に流通するブタレバー中にHEVが存在する頻度は極めて低いものと考えられた。しかし、2004年11月にも国内で生焼けのブタレバー等の喫食が原因と推定されるE型肝炎の集団事例が報告されたことから、流通ブタレバーについては、さらに詳細な調査が必要であろう。

 一方、感染症発生動向調査や積極的疫学調査に基づいてウイルス研究科に搬入された血清検体のHEV検査で、4名がHEV遺伝子陽性となり、その内訳は、遺伝子型Ⅰ型が1例(2003年)、Ⅲ型が1例(2005年)、Ⅳ型が2例(2002年、2004年)であった。Ⅰ型の感染例は、海外での感染による輸入例であり、Ⅲ型の感染例は、ブタレバーの生食が原因と疑われている例である。Ⅳ型の2例では、感染原因は不明であるが近年の渡航歴がなく、国内での感染が疑われている。

 E型肝炎は、潜伏期が平均40日と長いため、原因食を特定することは難しい。予防手段としては、徹底した手洗いの励行、食品の十分な加熱調理が重要である。東京都では、これまでに食品関係の従事者が感染源と推定されたHEVによる食中毒事例の発生は報告されていないが、今後、食品関係の従事者がE型肝炎に罹患した時には、ウイルス感染粒子(HEV)の排出されなくなるまで就業を制限するなど、何らかの措置を講ずる必要があろう。

 

微生物部 ウイルス研究科 新開敬行

 


 

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