東京都健康安全研究センター
平成16年の食中毒発生状況

平成16年の食中毒発生状況(第26巻、6号)

 

2005年6月

 


 平成16年の全国及び東京都における食中毒の発生状況が、厚生労働省医薬食品局食品安全部並びに東京都福祉保健局健康安全室でまとめられたので、これらの資料に基づき、平成16年一年間に全国及び都内で発生した食中毒事件の概要と特徴について紹介する。

 

1 全国における発生状況

 全国で発生した食中毒事件の総数は1,727件、患者数は28,863名であり、前年に比べ事件数は微増(前年比1.09倍)、患者数はやや減少(前年比0.98倍)した。

 事件数を原因物質別にみると、細菌性食中毒が全体の70.1%を占めた。原因菌の第1位はカンピロバクター・ジェジュニ/コリで587件(34.0%)、第2位はサルモネラで231件(13.4%)、第3位は腸炎ビブリオで208件(12.0%)であった。以下、黄色ブドウ球菌56件(3.2%)、腸管出血性大腸菌以外の病原大腸菌37件(2.1%)、ウエルシュ菌28件(1.6%)、セレウス菌25件(1.4%)、腸管出血性大腸菌21件(1.2%)、赤痢菌2件(0.1%)、エルシニア・エンテロコリチカ1件(0.1%)、ナグビブリオ1件(0.1%)の順であった。第1位のカンピロバクター事件数は前年比1.20倍に増加、腸炎ビブリオ事件数は平成10年をピークに年々減少していたが、前年比1.92倍に増加し前々年とほぼ同数であった。サルモネラ事件数は前年比0.66倍であった。

 細菌性食中毒の患者数は、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクターの順で多かった。1事件あたりの患者数が500名を超えた大規模食中毒はなかった。

 赤痢菌による2事件は、共に S. sonnnei によるものであり、原因食品はそれぞれ機内食(患者数17名)、飲食店提供の食事(患者数14名)と推定された。腸管出血性大腸菌による21事件のうちの1事件は、韓国への修学旅行中の食事が原因と考えられた。喫食者数377名、患者数110名、菌陽性者102名(生徒98名、教職員4名)であった。検出された腸管出血性大腸菌の菌型は、O111(VT1&2)が72名と最も多いほか、O26、O146、O157、O103、O169等多種類に及んだ。カンピロバクターによる587事件のうちの1事例(患者数52名)は、簡易水道水の汚染による水系感染と推定された。

 細菌性食中毒による死者はサルモネラによる2名であり、1名は血清型Enteritidis、1名は血清型Haifaによるものであった。

 平成12年以降急増しているノロウイルスによる食中毒は、事件数279件(16.2%)で患者2名以上の食中毒では事件数で第1位、患者数も第1位で12,565名、全食中毒患者の43.5%を占めるに至った。大規模な事件も多く、患者数400名を超えた事件が2件、300〜400名の事件が6件であった。ノロウイルスによる事件では、それが食品媒介感染症(食中毒)であるか食品を介さない感染症(ヒト—ヒト感染)であるかの判定が難しい一面がある。

 化学物質による食中毒は12件(0.7%)、患者数299名(1.0%)で、うち8件はヒスタミンによるものであった。他の4事件のうち1件(患者108名)は揚げ物用油に混入した非イオン性界面活性剤によるもの、1件(患者16名)は自家製豆腐に混入した農薬(エンドスルファン)によるもの、1件(患者11名)はワラビのおひたし(銅)によるもの、1件(患者2名)は東京都で発生した非イオン性界面活性剤によるもの(後述)であった。

 植物性自然毒による食中毒は99件(5.7%)、患者数354名(1.2%)で、死者1名はドクツルタケ(推定)によるものであった。動物性自然毒による事件数は52件(3.0%)、患者数79名(0.3%)で、死者2名は共にフグ毒によるものであった。

 

2 東京都における発生状況

 東京都における食中毒発生状況は、事件数79件(患者数1,955名)で、平成15年の103件(患者数2,322名)と比べ、事件数で0.77倍(患者数で0.84倍)と減少した。

 細菌性食中毒は46件(58.2%)あり、原因菌の第1位は腸炎ビブリオで15件(患者数276名)、第2位はカンピロバクターで13件(患者数93名)、第3位はサルモネラで7件(患者数97名)、以下、黄色ブドウ球菌と腸管出血性大腸菌が各々4件、ウエルシュ菌2件、その他の病原大腸菌とセレウス菌が各々1件の順であった。

 腸炎ビブリオによる食中毒は、事件数15件で前年比1.67倍(患者数2.63倍)と増加した。カンピロバクターによる食中毒は事件数13件で前年比0.50倍(患者数0.36倍)であった。カンピロバクターによる事件のすべてで、鶏肉または生レバーが関与しており、これらの生食や加熱不十分が原因であったと推定された。サルモネラによる食中毒は事件数7件で前年比0.70倍(患者数0.70倍)であり、血清型は依然としてEnteritidisによるものが7件中6件と主流であった。この6件中4件に鶏卵の関与が疑われた。

 黄色ブドウ球菌による4事件のうち2事件(患者数333名:2月発生、患者数56名:6月発生)は同じ会社がバスツアー用に製造した弁当が原因であった。2事件共に、製造過程での細菌汚染に加え、盛りつけから喫食までの時間が長かったため、食品中で増殖した黄色ブドウ球菌が毒素を産生したと考えられた。製造段階での細菌汚染を防ぐと共に、製造後は低温保存し、かつ喫食までの時間を短くすることが重要であると再確認された。

 ノロウイルスによる食中毒は、事件数26件(前年比0.76倍)、患者数677名(前年比0.49倍)であった。26件中14件が「従業員」を介しての食品汚染、9件がウイルス汚染された「カキ」または「シジミ」、1件は従業員または魚介類が原因と推定された。残りの2件は原因不明であった。

 化学物質による食中毒3件は、ヒスタミンによる2事件と酒ダレ(日本酒)に混入した廃油処理剤(非イオン性界面活性剤)による1事件であった。ヒスタミンによる2件はそれぞれカジキマグロのピリ辛漬けとサンマのピリ辛揚げが原因食品であった。植物性自然毒食中毒2事件は、クサウラベニタケによる事件と食用ニラと誤認したヒガンバナ科スイセン属の植物(アルカロイド類を含有)による事件であった。

 原因物質不明は2件(2.5%)のみで、原因物質判明率は97.5%と非常に高かった。

 患者数100名以上の大規模食中毒は3件あった。内訳は、前述の黄色ブドウ球菌による事件が患者数333名、毒素原性大腸菌による事件が患者数123名、ノロウイルスによる事件が患者数120名であった。

 

平 成 16 年 の 食 中 毒 発 生 状 況

 

原因物質 全   国1) 東 京 都
事件数(%) 患者数(%) 死者数 事件数(%) 患者数(%) 死者数
サルモネラ

黄色ブドウ球菌

腸炎ビブリオ

腸管出血性大腸菌

その他の病原大腸菌

ウエルシュ菌

セレウス菌

エルシニア・エンテロコリチカ

カンピロバクタ−

ナグビブリオ

赤痢菌

その他の細菌

231( 13.4)
56( 3.2)
208( 12.0)
21( 1.2)
37( 2.1)
28( 1.6)
25( 1.4)
1( 0.1)
587( 34.0)
1( 0.1)
2( 0.1)
13( 0.8)
3,794( 13.1)
1,332( 4.6)
2,796( 9.7)
235( 0.8)
1,170( 4.1)
1,283( 4.4)
397( 1.4)
40( 0.1)
2,536( 8.8)
1( 0.0)
31( 0.1)
122( 0.4)
2
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
72)( 8.9)
4( 5.1)
15( 19.O)
4( 5.1)
1( 1.3)
2( 2.5)
1( 1.3)
-
132)( 16.5)
-
-
-
972)( 5.0)

395( 20.2)

276( 14.1)

14( 0.7)

133( 6.8)

116( 5.9)

2( 0.1)

-

932)( 4.8)

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

細菌性総数 1,210( 70.1) 13,737( 47.6) 2 46( 58.2) 1,122( 57.4) -
ノロウイルス 279( 16.2) 12,565( 43.5) - 26( 32.9) 677( 34.6) -
化学物質 12( 0.7) 299( 1.0) - 3( 3.8) 48( 2.5) -
植物性自然毒
動物性自然毒
99( 5.7)
52( 3.0)
354( 1.2)
79( 0.3)
1
2
2( 2.5)
-
6( 0.3)
-
-
-
その他 5( 0.3) 8( 0.0) - - - -
原因物質不明 70( 4.1) 1,821( 6.3) - 2( 2.5) 102( 5.2) -
合    計 1,727(100.0) 28,863(100.0) 5 79(100.0) 1,955(100.0) -

 

1) 全国の発生状況は,平成17年4月8日現在の暫定値.

2) 1事例(患者4名)はサルモネラ及びカンピロバクタ−との混合感染(重掲).

 

微生物部 食品微生物研究科 門間千枝

 

 


 

感染症情報センターTOPへ   健康安全研究センターTOPへ」

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2013 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.