東京都健康安全研究センター
非結核性抗酸菌による感染症

非結核性抗酸菌による感染症(第27巻、2号)

 

2006年2月

 


1.非結核性抗酸菌とは

 結核菌群以外の人工培地で培養可能な抗酸菌( Mycobacterium 属菌)を非結核性抗酸菌あるいは非定型抗酸菌と呼んでいる。90種類を超える菌種が知られているが、ヒトに病原性を示すのは30種類程度であり日和見感染する場合が多い。

 非結核性抗酸菌は通常、土壌や湖沼河川に生息するグラム陽性桿菌で形態は様々であり、抗酸性の程度は結核菌よりも弱い。

 Runyonの分類では発育速度と発色性によりⅠ〜Ⅳ群に大別される。Ⅰ〜Ⅲ群菌は発育に2〜3週を要する遅発育菌、Ⅳ群菌は1週以内に発育し、迅速発育菌と呼ばれている。通常、Ⅰ群の集落の色は灰白色であるが、増殖期の菌に光を当てて培養すると黄色から橙黄色に光発色するのが特徴である。 M.kansasii 、 M.marinam 、 M.simiae 、 M.asiaticum などがこの群に属する。Ⅱ群は暗所でも黄色ないし橙黄色に発色する集落を形成する。光を当てて培養するか長時間放置すると赤燈色からレンガ色を発する。 M.scrofulaceum , M.szulgai , M.gordonae 及び M.farcinogenes が本群に属する。Ⅲ群菌は灰白色ないし象牙色で光に当てても発色しない。 M.avium , M.intracellulare , M.xenopi , M.ulcerans , M.malmoense 及び M.haemophilum などが本群の菌種である。Ⅳ群菌は迅速発育するのが特徴で集落はさまざまである。多くは雑菌種であり、ヒトに病原性を示すものは M.fortuitum 及び M.chelonae が知られているに過ぎない。

 

2.非結核性抗酸菌感染症の発生状況

 わが国における非結核性抗酸菌による感染症は呼吸器疾患が多い。総合病院で排菌が確認された患者の40%が本菌感染症であり、その70〜80%が M.avium あるいは M.intracellulare によるもので、20%が M.kansasii 、残る数%がその他の菌種( M.chelona , M.fortuitum , M.abscessus など)による症例である。また、近畿以北では M.avium が、中国地方以南では M.intracellulare が優位菌種の傾向にあるといわれている。

 また、本菌は外傷などによる局所の防御力低下などがある場合、比較的容易に経皮感染を起こす。 感染は河川やプール、熱帯魚用水槽、海水、浴槽水などを介して起こることが多い。また、手術部位における感染やカテーテル挿入に起因する感染などが病院内感染として報告されている。これらの原因菌は、 M.avium あるいは M.intracellulare の他、 M.marinam (肉芽腫型)、 M.ulcerans (潰瘍型)、 M.fortuitum・M.chelonae (膿瘍型)などがある。

 HIV感染者や白血病患者、臓器移植患者など免疫力が低下している人では、呼吸器や皮膚などの局在的な感染から全身に広がり、全身播種性抗酸菌感染症になる場合もあり、注意しなければならない。

 

3.非結核性抗酸菌の生息状況

 近年、循環式浴槽水や銭湯浴槽水から非結核性抗酸菌の分離報告がされている。

 平成14年度に保健所と共同で実施した、多摩地域における高齢者施設の冷却塔水、浴槽水の抗酸菌の分布調査では、検査した8施設の冷却塔のうち3施設から非結核性抗酸菌が分離された(健安研セ年報、54、303、2003)。内訳は M.gordonae が2施設、 M.scrofulaceum が1施設であった。一方浴槽水では17施設24浴槽のうち7浴槽から非結核性抗酸菌が分離された。菌種別では5浴槽で M.avium、1浴槽で M.gordonae 、1浴槽から Mycobacterium spを検出した。浴槽水から M.avium が検出された施設のうち1施設では、入所者の中に M.avium 感染症患者が確認されたが、その因果関係は不明であった。

 

4.非結核性抗酸菌対策

 非結核性抗酸菌は4mg/l程度の塩素処理に対して抵抗性があり、44℃でも生存可能な高温抵抗性をも有するとの報告がある。また、これらの菌はバイオフィルムを形成することが知られており、バイオフィルム中の菌は消毒薬が効き難くなることから、菌がバイオフィルムを形成している場合には、ブラッシング等により物理的に除去することが重要である。病院や高齢者施設など易感染者が多い施設では、特に浴槽等の除菌を充分に行い、非結核性抗酸菌症患者の発生防止に注意する必要がある。

 

微生物部 病原細菌研究科 遠藤 美代子

 


 

感染症情報センターTOPへ   健康安全研究センターTOPへ」

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2013 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.