東京都健康安全研究センター
多摩地区におけるクラミジア抗体検査成績(1999.4〜2006.3)

多摩地区におけるクラミジア抗体検査成績(1999.4〜2006.3)(第27巻、5号)

 

2006年5月

 


 性器クラミジア感染症は、世界中に蔓延している最も患者数の多い性感染症(STD)である。男性の場合非淋菌性尿道炎の原因となるが、女性では不顕性に経過することが多く、上行性に経過すると卵管性不妊の原因ともなる。STIが先進国では減少傾向にある中、日本では増加傾向にあることから、1999年(平成11年)4月、感染症法においてAIDSを含むSTIを「総合的な予防施策の推進が必要な特定感染症」とした。これを受けて東京都においては、HIV抗体検査時に任意に性器クラミジア感染症、梅毒、淋菌感染症の検査を開始し今日に至っている。多摩支所では東京都多摩地区の保健所で実施しているSTI健診者を対象にこれら検査を実施、その実態把握に努めてきた。ここでは1999年から7年間におけるクラミジアトラコマティスに対するIgAおよびIgG抗体検査結果の概略について紹介する。

 1999年4月から2006年3月までの総検査件数は16,100件で、その内訳は、男性9,909件,女性6,113件,性別不明78件であった。年度別検査件数の推移をみると(表1)、2001年度(平成13年度)にはHIV感染者を主人公にしたテレビドラマの影響で前年度の2倍を示したが、全体的には増加傾向にあり、STIに対する関心が徐々に広がっていると推察される。

 クラミジア抗体陽性者(IgAあるいはIgG抗体単独および両抗体保有者)は、総被検者の26.4%にあたる4,246名であり、年度別には初年度の34.1%を除けば、概ね25%前後を推移しているという結果であった。抗体陽性者を抗体別みると、IgA抗体陽性者2,768名(65.2%)に対してIgG抗体陽性者は3,555名(83.7%)であった。これらのうち48.9%にあたる2,077名は両抗体陽性者であり、毎年度陽性者の50%前後がそれに相当した。IgA抗体のみ陽性は2005年度に20.6%を示し、初めて20%を超えたがその他の年度は15%前後であり、IgG抗体のみ陽性は各年度35%前後を推移し、特に顕著な変動はみられなかった。

 男女別、年代別にみると(表2)、検査件数は男女とも20才代と30才代で多く、これらで約75%を占めた。また、10才代の検査件数は女性が男性の2.5倍であったが、逆に40才以上の年代では男性の検査件数が2〜3倍多かった。抗体陽性率は女性が男性より1.7倍高く、男性の20.7%に対して、女性では35.8%であった。男女の陽性者を年代別に比較すると、極めて特徴ある結果が得られた。すなわち、男性では50才代が最も高い陽性率(29.3%)を示し、他の年代は約20%前後の陽性率であり、年代別差は認められない。一方、女性では、50才代を除き全ての年代で男性よりも高い陽性率を示し、とりわけ10才代では847件中343件(40.5%)が抗体陽性であった。漸次減少傾向も窺われるが、20、30、40才代においても35%前後と高い陽性率であった。また、女性では全陽性者の70%が10、20才代で占められた。

 このように、7年間の調査結果から女性の若年齢層におけるクラミジア感染症の広がりが推察された。1999年4月以降の感染症サーベイランスにおける本感染症の15〜29才の若年齢層の定点当たりの報告数においても、男性は0.6〜1.1の間を推移しているのに対し、女性は1.2〜2.0の範囲内で、ここで得られた結果とよく一致している。報告数は、男女とも2001年と2002年をピークに減少傾向を示しているが、本調査においてまだその傾向は窺われない。今後とも本健診の普及・啓発を行い、結果に合わせた効果的な予防・指導が本症を含めたSTIの拡大防止対策に必要である。

 

表1.多摩地区におけるクラミジア抗体検査結果(1999〜2005年度)

年 度 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 合計
検査件数 1,225 1,361 2,736 2,236 2,712 2,988 2,842 16,100
陽性数 418 381 605 591 714 804 733 4,246
(%) (34.1) (28.0) (22.1) (26.4) (26.3) (26.9) (25.8) (26.4)
 陽性内訳:  
IgG抗体 157 124 230 193 222 303 249 1,478
(%) (37.6) (32.5) (38.0) (32.7) (31.1) (37.7) (34.0) (34.8)
IgG/IgA抗体 193 190 279 304 385 393 333 2,077
(%) (46.1) (49.9) (46.1) (51.4) (53.9) (48.9) (45.4) (48.9)
IgA抗体 68 67 96 94 107 108 151 691
(%) (16.3) (17.6) (15.9) (15.9) (15.0) (13.4) (20.6) (16.3)

 

表2.年齢別・男女別のクラミジア抗体検査結果 (1999〜2005年度)

年齢 男性 女性
検査件数 陽性数 (%) 検査件数 陽性数 (%)
10−19 334 59 (17.7) 847 343 (40.5)
20−29 4171 836 (20.0) 3372 1207 (35.8)
30−39 3361 646 (19.2) 1157 415 (35.9)
40−49 1118 262 (23.4) 351 122 (34.8)
50−59 542 159 (29.3) 226 57 (25.2)
60以上 383 88 (23.0) 160 45 (28.1)
9909 2050 (20.7) 6113 2189 (35.8)

多摩支所 微生物研究科 吉田 勲

 


 

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