東京都健康安全研究センター
東京都において分離された赤痢菌およびサルモネラの薬剤感受性について

東京都において分離された赤痢菌およびサルモネラの薬剤感受性について(第27巻、6号)

 

2006年6月

 


 2005年に健康安全研究センター、都・区検査機関並びに一部の医療機関で分離された赤痢菌とサルモネラについて、健康安全研究センターで実施した薬剤感受性試験成績の概略を紹介する。

 供試菌株は、都内の患者とその関係者および飲食物取り扱い従事者等を対象とした保菌者検索事業によって分離された赤痢菌17株(海外旅行者由来7株を含む)とサルモネラ190株(海外旅行者由来14株を含む)である。

 薬剤感受性試験は、例年同様、米国臨床検査標準化協会(CLSI:Clinical and Laboratory Standards Institute, 前NCCLS)の抗菌薬ディスク感受性試験実施基準に基づき、市販の感受性試験用ディスク(センシディスク;BD)を用いて行った。供試薬剤は、クロラムフェニコール(CP)、テトラサイクリン(TC)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、アンピシリン(ABPC)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST)、ナリジクス酸(NA)、ホスホマイシン(FOM)、ノルフロキサシン(NFLX)およびセフォタキシム(CTX)の10剤である。また、NA耐性の菌株についてはE-test(アスカ純薬)を用いてシプロフロキサシン(CPFX)、レボフロキサシン(LVFX)、オフロキサシン(OFLX)、NFLXの4種類のニューキノロン系薬剤に対する最小発育阻止濃度(MIC;μg/ml)を測定した。

 赤痢菌およびサルモネラの各菌種・血清群別にみた耐性菌の出現頻度を表に示した。

 赤痢菌17株の菌種別内訳は、フレキシネル(B群)菌4株(海外3、国内1)、ボイド(C群)菌1株(海外)、ソンネ(D群)菌12株(海外3、国内9)で、ディセンテリー(A群)菌は検出されなかった。供試した薬剤のいずれかに耐性を示したものは16株(94.1%)で、その薬剤別耐性頻度は、SM(82.4%)、TC(76.5%)、ST(70.6%)、NA(52.9%)、ABPC(35.3%)、CP(17.6%)、NFLX(11.8%)の順であった。耐性株16株の薬剤耐性パターンは10種に分かれ、ソンネ菌12株では「TC・SM・ST」 (3株)、「TC・SM・ABPC・ST・NA」 (3株)が主要なものであった。フレキシネル菌3株はそれぞれ、「CP・TC・SM・ABPC・NA・NFLX」、「CP・TC・SM・NA」、「SM・ST・NA・NFLX」であり、ボイド菌1株は、「TC・SM・ST・NA」のパターンであった。NAに耐性を示した9株(海外5、国内4)について、ニューキノロン系薬剤に対するMICを測定した結果、2株はCPFX:4〜8μg/ml、LVFX:6μg/ml、OFLX:16〜24μg/ml、NFLX:24μg/mlで耐性を示し、7株は低感受性であった。ニューキノロン系薬剤に耐性の2株はともにフレキシネル2aで、インドからの帰国者より検出されたものである。

 チフス菌9株(海外7、国内2)について調べた結果、海外由来チフス菌7株中、1株が「CP・TC・SM・ABPC・ST・NA」の6剤に、2株がNA単剤に耐性であった。国内由来2株は供試した薬剤全てに感受性であった。パラチフスA菌4株(海外)は全て耐性菌であり、そのパターンは「NA・FOM」(1株)、NA単剤(2株)、FOM単剤(1株)であった。チフス菌およびパラチフスA菌のうち、NAに耐性を示した6株は全てニューキノロン系薬剤に低感受性であった。

 一方、チフス菌・パラチフスA菌以外のサルモネラ177株のO群別内訳は、O4群53株(29.9%)、O7群50株(28.2%)、O9群34株(19.2%)、O8群23株(13.0%)、O3,10群およびO1,3,19群が各5株(2.8%) 、O13群およびO16群が各2株(1.1%)、O28群、O41群およびO群不明が各1株(0.6%)であった(表)。O4群、O7群、O9群およびO8群で全体の90.4%を占めた。また、主要血清型は S. Enteritidis(O9群,33株)、 S. Typhimurium(O4群,16株)、 S. Montevideo(O7群,10株)、 S. Infantis(O7群9株)、 S. Thompson(O7群,9株)、 S. Litchfield(O8群,9株)であった。

 サルモネラ177株中49株(27.7%)が耐性株で、例年とほぼ同様の耐性頻度であった。各薬剤に対する耐性頻度は、TC(18.1%)、SM(16.4%)、ABPC(3.4%)、NA(5.1%)、KM(4.5%)、ST(3.4%)、CP(2.8%)、NFLX(0.6%)であった。耐性株49株の薬剤耐性パターンは18種で、「TC・SM」(10株)、SM単剤(9株)、TC単剤(6株)が主要なものであった。なお、FOMおよびCTX耐性株は認められなかった。O群別の耐性頻度では、O9群(41.2%)、O4群(32.1%)およびO8群(30.4%)が高かった。血清型からみると、 S. EnteritidisではSM単剤耐性(24.2%)が、 S. Typhimuriumでは「CP・TC・SM・ABPC」(12.5%)が、 S. Infantisでは「TC・SM・KM」(44.4%)がそれぞれ最も多かった。注目すべき点として、1988年の調査開始以来、1995年の1株に次いで2株目となるNFLX耐性株(1株)が認められた。この菌株の薬剤耐性パターンは「KM・ST・NA・NFLX」の4剤耐性で、ニューキノロン系薬剤に対するMICはCPFX:>32μg/ml、LVFX:>32μg/ml、OFLX:>32μg/ml 、NFLX:>256μg/mlで、供試した4薬剤全てに高い耐性を示した。この菌株は国内の非発症者由来で、O4群の S. Schwarzengrundであった。

 

赤痢菌およびサルモネラの薬剤耐性菌の出現頻度(2005年:東京)

菌種・血清群 供試株数 耐性株数(%)*
赤痢菌 17 16 (94.1)
 フレキシネル 4 3 (75.0)
 ボイド 1 1 (100.0)
 ソンネ 12 12 (100.0)
チフス菌 9 3 (33.3)
パラチフスA菌 4 4 (100.0)
その他のサルモネラ 177 49 (27.7)
 O4群 53 17 (32.1)
 O7群 50 11 (22.0)
 O8群 23 7 (30.4)
 O9群 34 14 (41.2)
 O3,10群 5 0 (0.0)
 O13群 2 0 (0.0)
 O16群 2 0 (0.0)
 O1,3,19群 5 0 (0.0)
 O28群 1 0 (0.0)
 O41群 1 0 (0.0)
 O群不明 1 0 (0.0)

 

*供試薬剤(10種類)のいずれかに耐性を示した菌株

 

 

微生物部 食品微生物研究科 腸内細菌研究室

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