東京都健康安全研究センター
東京都におけるウイルス性胃腸炎の集団発生事例(2005年)

 

東京都におけるウイルス性胃腸炎の集団発生事例(2005年)(第27巻、9号)

2006年9月

 


 

 ウイルス性胃腸炎の集団発生は近年増加傾向にあり、その実態把握は予防対策上極めて重要である。ここでは、2005年の都内における急性胃腸炎の集団発生事例について行ったウイルス検査成績および検出ウイルスの遺伝子解析結果について紹介する。

 2005年1月から12月に、都内の胃腸炎集団発生478事例についてRT-PCR法、ELISA法、RPHA法により胃腸炎起因ウイルスの検査を行った結果、表に示すように280事例(58.6%)からウイルスが検出された。陽性事例中275事例(98.2%)からノロウイルスが検出され、そのうち272事例はノロウイルス単独検出例で、他の3例はA群ロタウイルスとの混合検出例2例とA群およびC群ロタウイルス混合例1例であった。残り5事例ではA群ロタウイルスが3事例、C群ロタウイルスが2事例から検出された。ノロウイルスは例年どおり1月と12月に集中して検出されたが、少数ながら夏季にも陽性例が認められ、通年化の傾向がうかがわれた。ロタウイルスはこれまでと同様に1月から5月に多く検出されたが、C群ロタウイルスは10月にも検出された。

 集団事例の施設別発生状況をみると、例年と同様に飲食店が最も多く175事例(36.6%)、次いで家庭内85事例(17.8%)であったが、2004年と比較した場合、高齢者施設(15→57)、小学校(12→35)、幼稚園・保育園(10→26)における発生数の増加が顕著であった。これらのうち、検出ノロウイルスの約90%はGⅡであった。感染様式では、カキ等の二枚貝を含む食品を介する食中毒事例とヒトからヒトへの感染症に大別されたが、食中毒事例では調理従事者による食品汚染が原因と考えられるものが比較的多く認められた。また、施設内感染事例の多くは「ヒト‐ヒト感染」例であった。

 ウイルス陽性率が最も高かったのは高齢者施設で57事例中53事例(93.0%)、次いで幼稚園・保育園の26事例中24事例(92.3%)であり、以下、病院:15/18(83.3%)、小学校:28/35 (80.0%)、社員食堂・寮:10/13 (76.9%)、会食料理・仕出し弁当関連:23/36 (63.9%)、宿泊施設:17/33 (51.5%)、飲食店:81/175 (46.3%)、家庭内:29/85 (34.1%)の順であった。ノロウイルスGⅠが検出された24事例のうち、半数の12事例は小学校等の低年齢層施設から検出され、高齢者施設からウイルスが検出された53事例中52事例はGⅡであった。また、A群ロタウイルスは幼稚園・保育園、C群ロタウイルスは小学校等の施設から検出された。

 ノロウイルスの遺伝子系統樹解析は、各月2〜6事例合計44事例の集団発生から代表株を選出し、RT-PCR法によって得られたPCR産物を用いて、ダイターミネーター法によりポリメラーゼ領域の塩基配列を決定した。図に示したように遺伝子型は、GⅡ−4(Bristol)型17事例、GⅡ−6(SaU3)型9事例、GⅠ−3(Desert Shield)型7事例、GⅡ−2(Melksham)型5事例、GⅡ−3(Toronto)型4事例に型別された。このほかにGⅡ−1(Hawaii)型、GⅡ−5(Yuri)型がそれぞれ1例認められた。GⅡ−4、GⅡ−6型は昨年に引き続いて主流行型であるが、本年はこれまで検出例の少なかったGⅠ−3型の増加が顕著であり、特にこれらが小学校、幼稚園・保育園等の低年齢層から検出されたことが注目された。

都内におけるウイルス性胃腸炎集団発生からのウイルス検出状況(2005年)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 合計
検索事例数 85 47 42 37 38 29 25 19 15 22 28 91 478
ウイルス陽性事例数 64 32 25 22 15 9 4 2 5 3 20 79 280
陽性

事例数

ノロGⅠ 4 3 3 5 3 4           2 24
ノロGⅡ 54 26 18 12 8 5 3 2 5 2 19 77 231
ノロGⅠ+Ⅱ 6 2 3 4 3   1       1   20
A群ロタ 1 1 2 1 1               6
C群ロタ     1 1           1     3

2005年に検出されたノロウイルス遺伝子の系統樹解析

微生物部 ウイルス研究科 林 志直

 


 

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