東京都健康安全研究センター
結核菌感染診断用インターフェロン-γ測定検査

結核菌感染診断用インターフェロン-γ測定検査(第29巻、2号)

 

2008年2月


 近年、結核菌感染診断の新しい検査法としてインターフェロン-γ測定検査法が開発された。当センターにおいても平成19年4月より検査を開始した。
 本検査法は、採取した被検者の血液と、結核菌には存在しBCGには存在しない抗原であるESAT-6、CFP-10を混合培養し、試験管の中でリンパ球にインターフェロン-γ(以下IFN-γ)を産生させ、それをELISA法で測定するものである(図1)。

 
図1.インターフェロン−γ測定検査法の原理 

 従来から用いられてきたツベルクリン反応では、ツベルクリン中にBCGと共通するタンパク質が多数存在するため、BCG接種の影響を除外できず、偽陽性がさけられなかった。この試験法はその影響を受けず、結核菌に特異的な診断検査が実施できる1)。本検査法で、健常人、結核患者、結核を疑われる被検者の血液検査を行った結果、健常人ではきわめて低いIFN-γ値を示したが、結核患者、結核の疑いのある被検者では高いIFN-γ値を示すことがわかった1)。
 本検査法は、平成19年の厚生労働省の通達で、ツベルクリン反応に代わる結核診断法の第一選択検査法と位置づけられ、その検査需要が急速に増大した。
 当センターでは平成19年4月より、この検査法を開始し、都並びに23区の保健所より搬入された検体を、20年3月末までに3,574検体検査し、陽性186検体(5.2%)、疑陽性256検体(7.2%)を検出した(表1)。

 

表1.平成19年度インターフェロン−γ測定検査結果

  実数 率(%)
陽性 186 5.2
判定保留(疑陽性) 256 7.2
判定不可 11 0.3
陰性 3091 86.5
判定不能(検体量不足) 30 0.8
総数 3574 100.0

 今後、我々は、初発患者の結核菌の排菌量と接触者の陽性率の関連、初発患者と接触者の最終接触からの期間と陽性率との関連、陰性コントロール値が高い場合の結果の解釈など、まだこの検査でよくわかっていない点についての調査も行い、保健行政の現場にこれらの情報提供を行っていく予定である。
 インターフェロン-γ測定検査法は、被検者の血液中のリンパ球にIFN-γを産生させるため、リンパ球の活性保持が重要である。リンパ球は高温、低温で活性が急速に低下するため、この検査の公定法では、採血後、検査開始まで22±5℃に血液を保持することが決められている。そこで、精度の高い検査を実施するためには、採血後、検査室に搬入するまでの温度管理が重要となる。都では、保健所から当センターの検査室まで検体を迅速に搬入するため、バイク便を導入したが、夏季の高温期には輸送中に通常の輸送用の発砲スチロール箱では内部が40℃以上になり(図2)、また冬季の低温期で外気温が4℃以下になるようなときには10℃以下になった。

 
図2.屋外における二重発砲スチロール箱内外の温度推移(平成19年8月14日実施) 

 陽性コントロール値であるM値を指標にしてリンパ球の活性を測定したところ、検体を高温、あるいは低温に放置した場合、リンパ球の活性が低下し、精度の高い結果が得られないことが判明した。
 そこで、輸送中の温度管理のための工夫が必要となった。当センター・精度管理室の協力により、輸送途中での温度管理のため、22±2℃に検体温度を保持できる温度記憶剤(写真1)、並びに保温箱(写真2)を導入した。

 
写真1.温度記憶剤写真2.保温箱 

 この両者を併用し、夏季、冬季に検体を試験輸送したところ、保温箱内の温度はほぼ22℃に保持されることがわかった(図3)。

 
図3.屋外における保温箱内外の温度推移(平成19年8月10日実施) 

 バイク便による血液検体輸送法は、平成20年度より都下の保健所から当センターへの検体輸送に本格的に採用され、夏季、冬季を問わず安定した温度管理が可能となった。これはインターフェロン-γ測定検査法の精度管理上、大きな役割を果たすものと考えられる。

 

1) 原田 登之、森 亨、他:集団感染事例における新しい結核感染診断法QuantiFERON TB2-Gの有効性の検討.結核.2004;79:637-643.

 

微生物部 病原細菌研究科 向川 純、三宅 啓文、吉田 勲

 


 

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