東京都健康安全研究センター
平成20年の食中毒発生状況

平成20年の食中毒発生状況(第30巻、3号)

2009年3月


 

 平成20年に全国および東京都内で発生した食中毒事件の概要と特徴について、厚生労働省医薬食品局食品安全部並びに東京都福祉保健局健康安全部の資料に基づいて紹介する。

1.全国における発生状況

 食中毒事件総数は1,369件、患者数は24,303名(死者数4名)であり、前年に比べると、事件数は前年比1.06とほぼ同じであるが、患者数は前年比0.73で約9,000人減少した。
 事件数を原因物質別にみると、細菌性食中毒は778件(前年比1.06、全体の56.8%)であり、この3年間では事件数およびその比率ともほぼ横ばいであった。原因菌別の第1位は、6年連続カンピロバクターで509件(37.2%)、以下、サルモネラ99件(7.2%)、黄色ブドウ球菌58件(4.2%)、ウエルシュ菌34件(2.5%)、セレウス菌21件(1.5%)、腸炎ビブリオと腸管出血性大腸菌がそれぞれ17件(1.2%)、腸管出血性大腸菌以外の病原大腸菌12件(0.9%)、コレラ菌と赤痢菌がそれぞれ3件(0.2%)、ナグビブリオ1件(0.1%)の順であった。従来食中毒の代表的な原因菌であった腸炎ビブリオによる事件は平成17年以降113件、71件、42件、17件と減少の一途を辿っている。
 細菌性食中毒の患者数は10,331名(全体の42.5%)であり、前年の12,964名(38.7%)と比較して0.80倍に減少した。最も患者数が多い原因菌はカンピロバクターで3,071名、次にサルモネラ2,551名、ウエルシュ菌2,088名であった。1事件あたりの患者数でみると各6.0名、25.8名、61.4名とカンピロバクターによる事件は小規模で、逆にウエルシュ菌による事件は大規模であることがわかる。しかし、最も大規模な細菌性食中毒は、おむすび弁当を原因とする患者数460名の黄色ブドウ球菌によるものであった。
  死者1名はセレウス菌によるものであった。本事件は10月に家庭内で調理した昼食が原因で発生し、喫食者3名全員が発症、そのうち1名(1歳)が死亡した。前日に調理し、1日室温放置した炒飯が原因食品と推定された(齊藤ら、第83回 日本感染症学会・抄録、2009年)。セレウス菌による死亡例は食中毒統計に収載される以前の昭和53年(1978年)に川崎市で弁当およびカレーを原因食品として発生した死者3名の事件以来30年ぶりの報告である。
 コレラ菌による食中毒は3件で6年ぶりに発生した。1件は3月に飲食店で寿司や刺身等を喫食して発生した患者数31名のエルトール小川型による大規模な事件、他の2件は8月にフィリピンからお土産に持ち帰った生ウニが原因と推定された家庭内の事件であった。いずれも食品から本菌は検出されなかった。
 赤痢菌による事件は2年ぶりで3件発生(患者数131名)したが、いずれも7〜8月にかけて福岡市で発生し、原因菌種はS. sonneiであった。分離菌のパルスフィールド・ゲル電気泳動法による解析等から、これらの事件は同一感染源と推定され、喫食状況や疫学調査からベトナム産海産物が原因食品として示唆されたが、それらから赤痢菌は検出されなかった。
 一方、ノロウイルスによる食中毒は事件数303件(22.1%)、患者数11,618名(47.8%)で、前年比は事件数で0.88、患者数で0.63であり、減少しているが依然として患者数は全食中毒患者数の半数近くを占めている。
 患者数500名以上の大規模食中毒はノロウイルスによる1事件のみで、仕出し弁当を原因とし、患者数は749名であった。
 化学物質による食中毒は27件、植物性自然毒は91件、動物性自然毒は61件であった。死者3名は、すべて動物性自然毒のフグ毒によるものであった。

2.東京都における発生状況

 都内の食中毒発生状況は、事件数106件(患者数1,442名)であり、平成19年の83件(患者数2,050名)と比べ、事件数では1.23倍(患者数では0.70倍)と事件数は増加したが患者数は減少した。事件数の増加は、カンピロバクターによる食中毒の増加が原因である。
 食中毒事件106件中、細菌性によるものは64件(60.4%)であった。原因菌ではカンピロバクターが45件(42.5%)と最も多く、昨年(21件)の2.1倍に増加した。原因食品は、生あるいは加熱不十分の鶏肉、牛や鶏のレバー刺しなどによるものが多い。このような現状から、東京都食品安全情報評価委員会では平成20年10月に『食肉の生食による食中毒専門委員会』を設置し、食肉の生食が原因と考えられる食中毒の予防対策や情報提供などについて検討を行っている。次いで多かったのは、黄色ブドウ球菌7件(6.6%)、サルモネラ6件(5.7%)、ウエルシュ菌4件(3.8%)、腸管出血性大腸菌3件(2.8%)、セレウス菌2件(1.9%)の順であった。この中にはカンピロバクターとサルモネラの混合感染による事件が3件含まれる。腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌以外の病原大腸菌による事件はなかった。
 細菌性食中毒で患者100名以上の大規模事件はウエルシュ菌による1件のみで、6月に行われた研修会での昼食(ホテルで調製した弁当)を原因とした喫食者434名中、患者数118名の事件であった。
 ノロウイルスによる食中毒は、事件数31件(29.2%)、患者数702名(48.7%)であり、前年比はそれぞれ1.15および0.78で、患者数は約200名減少した。原因食品として二枚貝の直接関与が推定された事件は4件のみ(カキおよびシジミ)で、昨年と同様に調理従事者の手指を介した二次汚染が推定された事件が主体を占めた。また、患者数が100名以上の事件は学校の給食による事件(患者数219名)1件のみであった。
 化学物質による食中毒5件はいずれもヒスタミンによるもので、マグロ、ブリおよびかじきが原因食品であった。植物性自然毒食中毒2件はバイケイソウ類とキノコ、動物性自然毒食中毒1件はフグによる中毒であった。その他1件は、しめさばを原因とする寄生虫(アニサキス)によるものであった。アニサキスによる食中毒は平成17年以降では毎年1〜2件の発生が認められている。原因物質不明は2件で、原因物質判明率は98.1%と非常に高かった。原因不明の事件についての原因物質の究明が今後の課題である。

平成20年の食中毒発生状況

原因物質 全国1) 東京都
事件数(%) 患者数(%) 死者数 事件数(%) 患者数(%) 死者数
サルモネラ 99(7.2) 2,551(10.5) - 62)(5.7) 482)(3.3) -
黄色ブドウ球菌 58(4.2) 1,424(5.9) - 7(6.6) 59(4.1) -
腸炎ビブリオ 17(1.2) 168(0.7) - - - -
腸管出血性大腸菌 17(1.2) 115(0.5) - 3(2.8) 14(1.0) -
その他の病原大腸菌 12(0.9) 501(2.1) - - - -
ウエルシュ菌 34(2.5) 2,088(8.6) - 4(3.8) 188(13.0) -
セレウス菌 21(1.5) 230(0.9) 1 2(1.9) 5(0.3) -
カンピロバクター 509(37.2) 3,071(12.6) - 452)(42.5) 3432)(23.8) -
ナグビブリオ 1(0.1) 5(0.0) - - - -
コレラ菌 3(0.2) 37(0.2) - - - -
赤痢菌 3(0.2) 131(0.5) - - - -
その他細菌 4(0.3) 10(0.1) - - - -
細菌性総数 778(56.8) 10,331(42.5) - 64(60.4) 634(44.0) -
ノロウイルス 303(22.1) 11,618(47.8) - 31(29.2) 702(48.7) -
その他のウイルス 1(0.1) 12(0.0) - - - -
化学物質 27(2.0) 619(2.5) - 5(4.7) 86(6.0) -
植物性自然毒 91(6.6) 283(1.2) - 2(1.9) 7(0.5) -
動物性自然毒 61(4.5) 104(0.4) 3 1(0.9) 1(0,1) -
その他 17(1.2) 47(0.2) - 1(0.9) 1(0,1) -
原因物質不明 91(6.6) 1,289(5.3) - 2(1.9) 11(0.8) -
合計 1,369(100.0) 24,303(100.0) 4 106(100.0) 1,442(100.0) -

 1) 全国の発生状況は、平成21年5月1日現在の暫定値
 2) 3事件(患者数23名)はサルモネラ及びカンピロバクターとの混合感染(重掲)

微生物部 食品微生物研究科 食中毒研究室

 


 

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