東京都健康安全研究センター
東京都におけるインフルエンザ発生状況(2008/2009シーズン)

東京都におけるインフルエンザ発生状況(2008/2009シーズン)(第30巻、8号)

2009年8月


 

 東京都におけるインフルエンザウイルスの病原体検索は、感染症発生動向調査事業(サーベイランス)、疾患調査(学校集団発生)ならびに積極的疫学調査(東京感染症アラート検査)等により、都内に設置された定点医療機関や各保健所管内の公立の学校(幼稚園、小中学校、高校)および医療機関から搬入される検体について実施している。

 2008年9月から2009年8月末(2008/2009シーズン)までにサーベイランスならびに学校集団発生により当センターに搬入された咽頭拭い液、鼻咽頭拭い液およびうがい液の計1,522件についてインフルエンザウイルスの遺伝子検索を行った結果、AH1亜型302件、AH3亜型129件、B型110件の計541件の季節性インフルエンザウイルスと2009年4月末から検査を開始したAH1pdm亜型の新型(ブタ)インフルエンザウイルス109件(2009年第28週から35週)を検出した。また、東京感染症アラート検査により搬入された1,003件(2009年4月末から8月末)の咽頭拭い液、鼻咽頭拭い液からは、AH1亜型3件、AH3亜型128件、B型2件、A亜型不明1件の季節性インフルエンザウイルス計134件とAH1pdm亜型の新型インフルエンザウイルス504件が検出された。

 2008/2009年シーズンの季節性インフルエンザの流行は、2008年の第38週(9月16日)に発生したB型インフルエンザから始まり、AH1亜型、AH3亜型のインフルエンザの同時流行や2009年に入ってからのB型流行により3種類のインフルエンザウイルスによる混合流行となった。2008/2009年シーズンの季節性インフルエンザの主たる流行亜型はAH1亜型であったが、2種類または3種類のウイルスが同時期に検出される状況が続き、B型流行の後に主として集団発生の原因となっていたAH3亜型の流行が収束に向かうと共に新型インフルエンザの流行が拡大してきた。

 東京都における新型インフルエンザは、2009年5月20日に初発生があり、当初は海外帰国者の発症および濃厚接触者の二次感染等の事例が相次いだが、徐々に国内感染や都内での感染に推移し、現在、ほぼ全ての事例が都内での感染例となっている。2009年の第23週(5月31日〜6月6日)以降は、大きな流行規模を維持しており、今後の発生動向が注目されている。

 新型インフルエンザ患者の年齢は、0歳から20歳までの若年層が比較的多く、週毎の発生件数の約75%を占めている。現在行われている入院例・重症例を対象とした調査でも特に乳児・幼児・小児の低年齢層に重症例が多く報告されており、新型インフルエンザウイルスの検出例も増加しているのが実情である。

 季節性および新型インフルエンザウイルスについて遺伝子学的手法を用いた抗原解析を行った結果、AH1亜型株の今シーズン流行株は、ワクチン株(A/Brisbane/59/2007)を含む枝の延長上にあり、昨シーズンの流行株の一部を含むグループを形成していたことが明らかとなった。AH3亜型株の今シーズン流行株は、ワクチン株(A/Uruguay/716/2007:A/Brisbane/10/2007類似株)とのアミノ酸相同性が95.7〜96.8%であり、系統樹上でもワクチン株を含む大きな群に属していたがワクチン株から分枝したところに位置していた。今シーズンのB型流行株はVictoria系統の株であり、ワクチン株(B/Florida/4/2006)が属する山形系統の株とは大きく異なっており、ワクチン株とのアミノ酸相同性も86.6〜88.0%と低かった。しかし、WHOの2009/2010年シーズンのワクチン推奨株(B/Brisbane/60/2006:Victoria系統株)とは、流行株群の一つと系統樹上で同一の位置にあり、流行株とのアミノ酸相同性も98.5〜100%と高い事が判明している。

 一方、新型インフルエンザウイルスの都内流行株について、増幅された遺伝子配列を系統樹上で比較したところ、WHOが公開したワクチン候補株(A/California/7/2009(X-179A):日本の新型ワクチン株)およびアメリカでの検出株(A/California/4/2009)と近い処に位置していたことが判明し、日本のワクチン株と近縁である可能性が示唆された。

  インフルエンザの流行は、これまで冬季に集中する事が明らかになっていたが、近年、流行時期が春から初夏までの期間に延びており流行の長期化が懸念されてきた。2009年4月以降に発生した新型インフルエンザは、誰もがこのウイルスに対する免疫を持っていなかった事もあり、大きな流行を引き起こしたとされている。従来、インフルエンザの流行が見られない夏場に流行が拡大したことは、季節性インフルエンザの長期化流行と相まって、インフルエンザは通年発生する感染症であるとの新たな認識を持つ必要があると思われる。

2008/2009年シーズンの東京都におけるインフルエンザウイルス検出件数

東京都におけるA/H1亜型インフルエンザウイルスのHA遺伝子系統樹

東京都におけるAH3亜型インフルエンザウイルスのHA遺伝子系統樹

東京都におけるB型インフルエンザウイルスのHA遺伝子系統樹

 

東京都における新型インフルエンザAH1pdm亜型ウイルスのHA遺伝子系統樹

微生物部 ウイルス研究科 新開敬行

 


 

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