東京都健康安全研究センター
平成21年の食中毒発生状況

平成21年の食中毒発生状況(第31巻、3号)

2010年3月

 


 

 平成21年に全国および東京都内で発生した食中毒事件の概要と特徴について、厚生労働省医薬食品局食品安全部並びに東京都福祉保健局健康安全部の資料に基づいて紹介する。

1.全国における発生状況

 食中毒事件総数は1,048件、患者数は20,249名(死者数0名)であり、前年に比べると、事件数は前年比0.77で約320件減少し、患者数は前年比0.83で約4,000人減少した。
事件数を原因物質別にみると、細菌性食中毒は536件(全体の51.1%)、前年比0.69で242件減少した。原因菌別の第1位は、カンピロバクターで345件(32.9%)、以下、サルモネラ67件(6.4%)、黄色ブドウ球菌41件(3.9%)、腸管出血性大腸菌26件(2.5%)、ウエルシュ菌20件(1.9%)、腸炎ビブリオ14件(1.3%)、セレウス菌13件(1.2%)の順であった。
 細菌性食中毒の患者数は6,700名(全体の33.1%)であり、前年の10,331名(42.5%)と比較して0.65倍に減少した。患者数が多い原因菌は、カンピロバクター2,206名、ウエルシュ菌1,566名、サルモネラ1,518名であった。患者数500人以上の細菌性食中毒は、給食を原因としたウエルシュ菌の1事例(患者数645名)のみであった。
 カンピロバクター による食中毒は、鶏刺し等生肉の喫食を原因とした散発事例が多いが、「生食用」合鴨肉を原因とし、京都、東京、仙台で発生した5事例(患者数28名)が広域散発食中毒事例として確認された。共通食は、認定小規模食鳥処理業者から真空パックの状態で出荷され、流通後飲食店で提供された「生食用」合鴨肉であった(中嶋ら、IASR Vol.31 No.1 2010年、国立感染症研究所)。

 また、腸管出血性大腸菌O157による広域散発食中毒事例がステーキチェーン店や焼き肉チェーン店を原因として3事例発生した。事例1では、患者は16自治体(17店舗)38名で、うち37名が「角切りステーキ」を喫食していた。
 この「角切りステーキ」は食肉加工施設で結着加工され、店で260℃に加熱した鉄板に生肉をのせた状態で提供し、客自らが加熱して喫食するというものであった。事例2は事例1とほぼ同時期に発生し、患者は7自治体(13店舗)20名で、いずれも牛横隔膜を原料とする「角切りステーキ」等を喫食していた。「角切りステーキ」は食肉加工施設において牛横隔膜をカット後に、軟化剤調味液を加えて真空包装したものであった。
 事例3は、東京都等で焼き肉チェーン店を原因として発生し、患者は6自治体(17店舗)20名であった。
 一方、ノロウイルスによる食中毒は事件数288件(27.5%)、患者数10,874名(53.7%)で、前年比は事件数で0.95、患者数で0.94であった。患者100名以上の食中毒1件(患者数636名)は、旅館の朝食バイキングを原因としたものだった。化学物質による食中毒は13件、植物性自然毒は53件、動物性自然毒は39件であった。
 なお、原因物質不明事例が100事例(9.5%)であった。近年、生食用の生鮮食品を喫食後数時間程度で軽い下痢や嘔吐を呈する事例では、原因物質が特定されないことが多く、平成21年7月 厚労省食中毒被害情報管理室は、「病因物質不明有症事例の情報収集について(協力依頼)」を発出した。現在、情報収集および検体の確保と病因物質の研究が行われている。

2.東京都における発生状況

 都内の食中毒発生状況は、事件数126件(患者数1,847名)であり、平成20年の106件(患者数1,442名)と比べ、事件数では1.19倍(患者数では1.28倍)と事件数、患者数ともに増加した。事件数の増加は、前述の腸管出血性大腸菌O157の広域散発食中毒事例と原因不明事例およびノロウイルス事例の増加が原因である。食中毒事件126件中、細菌性によるものは71件(56.3%)であった。
 原因菌ではカンピロバクターが36件(28.6%)と最も多かったが、昨年(45件)の0.8倍であった。カンピロバクター食中毒の原因食品は、生あるいは加熱不十分の鶏肉、牛や鶏のレバー刺しなどが多かった。1事例では、患者(カンピロバクター・ジェジュニ血清型LIO7を検出)が、カンピロバクター食中毒後にギランバレー症候群を発症していた。次いで、腸管出血性大腸菌16件(12.7%)、サルモネラ7件(5.6%)、ウエルシュ菌5件(4.0%)、黄色ブドウ球菌4件(3.2%)、セレウス菌3件(2.4%)、腸炎ビブリオ1件(0.8%)の順であった。この中にはカンピロバクターとサルモネラの混合感染による事件が1件含まれる。腸管出血性大腸菌以外の病原大腸菌による件はなかった。腸管出血性大腸菌16件の内、8件は前述の広域散発食中毒の3事例である。また、4件は、2種類の焼き肉チェーン店のそれぞれ2店舗で発生した事例であり、平成21年には複数のステーキや焼き肉チェーン店による食中毒が発生した。
 ノロウイルスによる食中毒は、事件数39件(31.0%)、患者数995名(53.9%)であり、前年比はそれぞれ1.26および1.42で、患者数は約300名増加した。患者数の増加は小学校の給食による1事例(患者数262名)をはじめ、患者数が30名以上の事例が9件と比較的大きな事件が多かったことによる。7件は生カキが原因であり、その内6件は12月に集中して発生した。
 化学物質による食中毒1件はヒスタミンによるもので、カジキのムニエルが原因食品であった。植物性自然毒による1件(患者数8名)はひょうたんを原因とするククルビタシンによるものと推定された。動物性自然毒による1件(患者数2名)は赤バイ貝ステーキを原因とするテトラミンによる中毒、その他1件(患者数1名)は、しめさばを原因とする寄生虫(アニサキス)によるものであった。
 原因物質不明は12件で、すべての事例で患者は喫食後3〜12時間に下痢、嘔吐を呈したが、軽症であった。12件中11件では生食用の生鮮魚介類を喫食していた。これらの事例は、厚生労働省が情報収集および病因物質の研究を行うとしている事例の条件に一致しており、病因物質の究明が重要な課題となっている。
 

平成21年の食中毒発生状況

原因物質 全国 東京都
事件数(%) 患者数(%) 事件数(%) 患者数(%)
サルモネラ 67(6.4) 1,518(7.5) 71)(5.6) 1341)(7.3)
黄色ブドウ球菌 41(3.9) 690(3.4) 4(3.2) 49(2.7)
腸炎ビブリオ 14(1.3) 280(1.4) 1(0.8) 15(0.8)
腸管出血性大腸菌 26(2.5) 181(0.9) 16(12.7) 28(1.5)
その他の病原大腸菌 10(1.0) 160(0.8) - -
ウエルシュ菌 20(1.9) 1,566(7.7) 5(4.0) 157(8.5)
セレウス菌 13(1.2) 99(0.5) 3(2.4) 16(0.9)
カンピロバクター 345(32.9) 2,206(10.9) 361)(28.6) 2901)(15.7)
細菌性総数 536(51.1) 6,700(33.1) 71(56.3) 674(36.5)
ノロウイルス 288(27.5) 10,874(53.7) 39(31.0) 995(53.9)
その他のウイルス 2(0.2) 79(0.4) - -
化学物質 13(1.2) 552(2.7) 1(0.8) 8(0.4)
植物性自然毒 53(5.1) 195(1.0) 1(0.8) 8(0.4)
動物性自然毒 39(3.7) 95(0.5) 1(0.8) 2(0,1)
その他 17(1.6) 19(0.1) 1(0.8) 1(0,1)
原因物質不明 100(9.5) 1,735(8.6) 12(9.5) 159(8.6)
合計 1,048(100.0) 20,249(100.0) 126(100.0) 1,847(100.0)

1) 1事件(患者数15名)はサルモネラ及びカンピロバクターとの混合感染(重掲)

食品微生物研究科 食中毒研究室

 


 

感染症情報センターTOPへ   健康安全研究センターTOPへ」

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2013 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.