東京都健康安全研究センター
2009/2010年シーズンの東京都におけるインフルエンザウイルス流行状況

2009/2010年シーズンの東京都におけるインフルエンザウイルス流行状況(第31巻、8号)

 

2010年8月

 


 

 2009/2010年シーズン(2009年9月から2010年8月)の東京都におけるインフルエンザウイルス流行状況は、2009年5月から世界的に流行が見られたパンデミックインフルエンザウイルス(A/H1N1pdm)の流行が継続していたため、シーズンの最初からA/H1N1pdm型による流行であった。また、この間に季節性インフルエンザは2010年3月にB型の散発発生が、5月と7月にA/H3型の散発発生が見られただけであり、2010年8月に至ってもA/H1N1pdm型が検出されたことから、A/H1N1pdm型がシーズンの主たる流行株であった。

 2009/2010年シーズンに東京感染症アラート検査として呼吸器症状を呈する患者、重症肺炎等の入院患者の咽頭拭い液または鼻咽頭拭い液630件を検査した結果、A/H1N1pdm型のウイルス遺伝子が482件(76.5%)検出された。また、都内の病原体定点医療機関から搬入されたインフルエンザ様患者の咽頭拭い液または鼻咽頭拭い液357件中A/H1N1pdm型が274件(76.8%)、A/H3型が2件(0.6%)、B型4件(1.1%)の計280件のインフルエンザウイルス遺伝子が検出された。

 A/H1N1pdm型流行株は、2010/2011年シーズンワクチン株であるA/California/7/2009株と遺伝子学的に近縁な株であったことから、東京都で流行したA/H1N1pdm型は、抗原性にほとんど変化はないことが推察された。

 A/H3型のシーズン流行株は、系統樹上では、昨シーズンのワクチン株(A/Uruguay/716/2007:A/Brisbane/10/2007類似株)を含む大きな群に属してはいたが、さらに分枝したところに位置していた。しかし、流行株は2010/2011年シーズンのA/H3型のWHOワクチン推奨株(A/Perth/16/2009株)と遺伝子学的に近縁な位置にあることから今後のワクチン接種によって流行の拡大防止が期待される。

 B型のシーズン流行株としては、全国的にはVictoria系統株、山形系統株がそれぞれ検出されているが、東京都での2009/2010年シーズン流行株は、ワクチン株と同様なVictoria系統株が検出されており、ワクチン株と遺伝子学的に近縁な株であることが判明した。

 これらのウイルスの抗原性について分離株が得られたA/H1N1pdm型とB型を対象に国立感染症研究所配布のインフルエンザサーベイランスキットならびにワクチン株抗血清(デンカ生研製)を用いたHI試験(0.7%のモルモット赤血球液を使用)で確認した結果、A/H1N1pdmの分離株は、ワクチン株であるA/California/7/2009株抗血清と非常に交差性が高いことが判った。また、B型分離株は、Victoria系統のワクチン株であるB/Brisbane/60/2008株抗血清に対しては、高い交差反応性の株であった。

 都内における流行実態は、A/H1N1pdm型の単独流行が続き、A/H1N1pdm型の流行が沈静化するに従いB型、A/H3型の散発発生が見られた。このことから流行形態は、3種類のウイルスによる混合流行といえるが、検出されたウイルスの型別では99.2%がA/H1N1pdm型であり、実質的には単独流行に近い流行形態であった。また、近年、全国的な傾向となってきているインフルエンザ流行時期の長期化や、昨年からのA/H1N1pdmウイルスによる通年流行によって、流行時期を特定することが難しくなってきている。A/H1N1pdmインフルエンザの第2波流行が懸念される中で、季節性インフルエンザウイルス各亜型株の流行も予想されることから、今後の抗原変異についてますます注意が必要である。

図1.東京都におけるAH1亜型インフルエンザウイルスのHA遺伝子系統樹

図2.東京都におけるAH3亜型インフルエンザウイルスのHA遺伝子系統樹

図3.東京都におけるB型インフルエンザウイルスのHA遺伝子系統樹

図4.東京都における新型インフルエンザウイルスのHA遺伝子系統樹

微生物部 ウイルス研究科 エイズ・インフルエンザ室

 


 

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