東京都健康安全研究センター
東京都において分離されたサルモネラの血清型および薬剤感受性について(2010年)

東京都において分離されたサルモネラの血清型および薬剤感受性について(2010年)(第32巻、8号) 

2011年8月


 

 2010年に東京都健康安全研究センター並びに都・区検査機関、都内の病院、登録衛生検査所等で分離されたサルモネラを対象に、血清型および薬剤感受性についてまとめたので、その概略を紹介する。チフス菌およびパラチフスA菌については、国立感染症研究所(感染研)に依頼したファージ型別の成績も併せて紹介する。

 供試菌株は、都内の患者とその関係者および保菌者検索事業によって分離されたサルモネラ161株(海外由来10株、国内由来151株)である。血清型別、薬剤感受性試験は「東京都において分離された赤痢菌の菌種、血清型及び薬剤感受性について(2010年)」(32巻7号)に記載した方法と同様に行った。

 チフス菌およびパラチフスA菌の薬剤耐性菌出現頻度および薬剤耐性パターンを表1に示した。チフス菌7株(海外6、国内1)では、海外由来チフス菌6株中、NA単剤に耐性のものが2株(由来:インド亜大陸および東南アジア各1株)、「CP・TC・SM・ABPC・ST・NA」の6剤耐性が1株(インド亜大陸)、「CP・SM・ABPC・ST・NA」の5剤耐性が1株(インド亜大陸)であった。国内由来株1株は、供試薬剤全てに感受性であった。パラチフスA菌3株(海外:インド亜大陸2株、インド亜大陸・東南アジア1株)は全てNA単剤に耐性を示した。チフス菌7株のファージ型は、A型:1株、E1型:4株、E9型:1株、UVS(Untypable Vi strain)2型:1株であった。パラチフスA菌3株のファージ型は、1型:1株、4型:2株であった。

 チフス菌・パラチフスA菌以外のサルモネラ151株(海外1、国内150)の血清型および耐性菌の出現頻度を表2に示した。主なO群は、O7群53株(35.1%)、O4群42株(27.8%)、O9群31株(20.5%)、O8群10株(6.6%)で、これらで全体の90.1%を占めた。主な血清型は、S. Enteritidis(O9群,30株)、S. Thompson(O7群,21株)、S. Infantis(O7群,15株) 、S. Schwarzengrund(O4群,10株)、S. Typhimurium(O4群,9株)であった。

 サルモネラ151株中52株(34.4%)が薬剤耐性株で、前年(20.0%)と比べて耐性頻度は1.5倍に上昇した。各薬剤に対する耐性頻度は、SM(27.2%)、TC(23.2%)、ABPC(7.9%)、KM(7.3%)、NA(7.3%)、CP (4.0%)、ST (3.3%)、 NFLX(0.7%)、CTX(0.7%)の順であった。なお、FOM耐性株は認められなかった。薬剤耐性パターンは19種類で、SM単剤(12株)、「TC・SM」(9株)および「TC・SM・KM」(7株)が主要なものであった。O群別の耐性頻度では、O4群(57.1%)、O9群(38.7%)が高かった。最も多く検出された血清型であるS. Enteritidisの耐性頻度は40.0%で、多くはSM単剤耐性であった。

 NA耐性を示した11株について、ニューキノロン系薬剤に対するMICを測定した結果、1株は耐性(CPFX:8μg/ml、LVFX:8μg/ml、OFLX:>32μg/ml、NFLX:32μg/ml)で、その血清型は、Typhimuriumであり、薬剤耐性パターンは「CP・TC・SM・ABPC・ST・NA・NFLX」の多剤耐性菌であった。残る10株は低感受性であった。

 CTXに耐性を示した1株はS. Schwarzengrundで、CTX-M-2型遺伝子を保有するESBL産生菌であった。

 2010年は、多剤耐性アシネトバクターやNDM-1産生菌等、耐性菌に関する話題がメディアを賑わせた。特にNDM-1産生菌は肺炎桿菌など腸内細菌科の細菌で確認されており、インド等でNDM-1遺伝子が同じ腸内細菌科であるサルモネラ等の病原菌に伝播している事が懸念されている。また、チフス菌およびパラチフスA菌については、以前からニューキノロン系薬剤に対する感受性の低下が問題になっており、特にインドからの帰国者から耐性菌が分離されたという報告もある。今後もこれら耐性菌は、ますます増加する事が予想される。引き続き、その動向を注意深く監視する必要がある。

 

表1. チフス菌およびパラチフスA菌の薬剤耐性パターン(2010年:東京)

    チフス菌 パラチフスA菌
由来 海外 国内 海外 国内
供試株数 6 1 3 0 10
耐性株数 4 0 3 0 7
(%) (66.7) (0) (100)    (70.0)
耐性パターン                  
CP TC SM ABPC ST NA    1          1
CP SM ABPC ST NA    1          1
NA    2    3    5
全て感受性    2 1       3

供試薬剤:CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM, NFLX, CTX

 

 

表2.サルモネラ(チフス菌、パラチフスA菌を除く)の血清型と薬剤耐性菌出現頻度 (2010年:東京)
O群 血清型 供試株数(%) 耐性株数(%)*
O4 Agona 5 2(40.0)
Derby 5 2(40.0)
Saintpaul 4 3(75.0)
Schwarzengrund 10 8(80.0)
Stanley 5 2(40.0)
Typhimurium 9 6(66.7)
O4:eh:- 2 0
O4:i:- 2 1(50.0)
小計 42(27.8) 24(57.1)
O7 Bareilly 1 0
Braenderup 3 1(33.3)
Infantis 15 9(60.0)
Livingstone 1 0
Mbandaka 1 0
Montevideo 3 0
Oranienburg 2 0
Rissen 2 0
Singapore 2 0
Thompson 21 2(9.5)
Virchow 2 0
小計 53(35.1) 12(22.6)
O8      
Corvallis 1 0
Hadar 1 0
Istanbul 1 1(100)
Litchfield 3 0
Manhattan 1 1(100)
Nagoya 2 0
Newport 1 0
小計 10(6.6) 2(20.0)
O9 Enteritidis 30 12(40.0)
Javiana 1 0
小計 31(20.5) 12(38.7)
O3,10      
Amager 1 0
Anatum 1 1(100)
London 2 0
Meleagridis 1 0
Weltevreden 1 0
小計 6(4.0) 1(16.7)
O1,3,19 Senftenberg 3 0
小計 3(2.0) 0
O11 Aberdeen 1 0
小計 1(0.7) 0
O16 Barranquilla 1 0
Hvittingfoss 1 0
小計 2(1.3) 0
O28 Pomona 1 0
小計 1(0.7) 0
O39 Champaign 1 0
小計 1(0.7) 0
OUT** OUT: i : 1,2 1 0
小計 1(0.7) 0
合計 151(100) 52(34.4)

*供試薬剤(10種類)の内、1薬剤以上に耐性を示した菌株

**UT: 型別不能

微生物部 食品微生物研究科 腸内細菌研究室 


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