東京都健康安全研究センター
平成23年の食中毒発生状況

 平成23年には生食用食肉の規格基準の設定、および食中毒の原因物質としてKudoa septempunctata及び Sarcocystis fayeri が追加される等、近年の食中毒発生状況に対応した行政措置が講じられた。本稿ではこれら事例を含め、平成23年に全国および東京都内で発生した食中毒の概要と特徴について、厚生労働省医薬食品局食品安全部並びに東京都福祉保健局健康安全部の資料に基づいて紹介する。

 

1.全国における発生状況

  食中毒事例総数は1,062件、患者数は21,616名、死亡者11名であり、事例数は前年比0.85で約200件減少し、患者数は前年比0.83で約4,000人減少した。死者が10名を超えたのは平成14年以来である。

 事例数を原因物質別に見ると、細菌性は543件(51.1%)、前年比0.94でほぼ横ばいであった。原因菌別の第1位はカンピロバクター336件(31.6%)で、他の菌に比べて著しく多く、以下、サルモネラ67件(6.3%)、黄色ブドウ球菌37件(3.5%)、腸管出血性大腸菌25件(2.4%)、腸管出血性大腸菌以外の大腸菌24件(2.3%)、ウエルシュ菌24件(2.3%)、セレウス菌10件(0.9%)、腸炎ビブリオ9件(0.8%)、赤痢菌7件(0.7%)、その他の細菌4件(0.4%)であった。

 細菌性食中毒の患者数は10,948名(50.6%)、前年比1.26に増加した。患者数の多い原因菌はサルモネラ3,068名、ウエルシュ菌2,784名、カンピロバクター2,341名であった。1事例あたりの患者数500名以上の細菌性食中毒は2事例で、サルモネラ(患者数1,522名)およびウエルシュ菌(患者数1,037名)による事例であった。サルモネラによる食中毒は、センター方式(共同調理場)を利用して給食の調理を行っている小中学校9校で発生した事例であった。原因菌はS. Enteritidis で、検食のブロッコリーサラダおよび調理場の自動攪拌装置付き回転釜のシャフトアームから患者と同一遺伝子型のS. Enteritidis が検出された。ウエルシュ菌による事例は12月に発生した給食を原因としたものであった。

 食中毒による死者11名のうち、10名が細菌、1名は動物性自然毒(フグ毒)が原因であった。細菌では、腸管出血性大腸菌によるものが7名(3事例)、サルモネラによるものが3名(3事例)であった。4月に発生した腸管出血性大腸菌O111およびO157による焼肉チェーン店を原因施設(4県6店舗)とした大規模食中毒では、患者181名、溶血性尿毒症症候群患者34名、死亡5名と重症例が多数報告された。このほか、腸管出血性大腸菌による食中毒の内、「団子および柏餅」を原因と推定する事例(患者287名)、老人ホームでの「サンドウィッチ」および「ローストビーフ」を原因とする事例(患者14名)で各1名の死亡者が報告された。サルモネラによる死亡例は、「昆布の煮物」、「生卵入りオクラ納豆」を原因とする各食中毒事例でそれぞれ1名、他の1名は原因食品不明であった。

 また、赤痢菌による食中毒が7件発生した。7事例は全て東北地方で同一時期に同じ系列店で発生したもので、原因菌種はS. sonneiであった。セントラルキッチンで調理された「大葉と大根の浅漬け」が原因と推定されたが確定には至らなかった。

 一方、ノロウイルスによる食中毒は事例数296件(27.9%)、患者数は8,619名(39.9%)であった。前年比は事例数で0.74、患者数で0.62と減少した。患者500名以上の食中毒は1件(患者数756名)で仕出し屋の給食弁当を原因としたものであった。

 クドア食中毒(本誌第33巻第1号参照)は、検査法が通知された平成23年6~12月までに計33件(患者数473名)が報告されている(国立感染症研究所IASR 33(6)、2012)。

 

2.東京都のおける発生状況

 都内の食中毒発生状況は、事例数133件(患者数1,515名)であり、平成22年の事件数143件(患者数2,006名)と比べ、事例数で0.93倍、患者数で0.76倍と共にやや減少した。これはノロウイルス事例の減少が主な原因であった。

 食中毒事例133件中、細菌性によるものは61件(45.9%)であった。原因菌ではカンピロバクターが突出して多く37件(27.8%)、次いで、サルモネラ8件(6.0%)、黄色ブドウ球菌5件(3.8%)、腸管出血性大腸菌、およびその他の病原大腸菌が各4件(3.0%)、ウエルシュ菌が3件(2.3%)であった。患者数100名以上の事例は、仕出し弁当が原因のウエルシュ菌による事例(患者126名)のみであった。

 カンピロバクター食中毒は、生あるいは加熱不十分の食肉を原因としたC. jejuniおよびC. coliによる事例が主であるが、1事例(患者数6名)はC. fetusを原因菌とする食中毒で、3名の患者ふん便からC. fetusが検出され、原因食品は「牛レバ刺し」であった。C. fetusは、敗血症や髄膜炎等多様な疾病の原因菌として知られているが、胃腸炎症状との関連は必ずしも明瞭になっていない。本事例の患者の症状は、発熱、下痢、腹痛等で一般的な食中毒症状であり、C. fetusによる食中毒が行政的に確認されたわが国最初の事例と考えられる。

 その他の病原大腸菌による4事例中3事例(患者総数62名)は、毒素原性大腸菌O148(ST産生)によるもので、同一時期に東京都および近県で発生した食中毒事例であった。複数の事業所から搬入されたセントラルキッチンで加工済みの「小口切りの長ネギ」および「ネギを薬味として利用した食品」から患者と同一遺伝子型の毒素原性大腸菌O148が検出された。

 ノロウイルスによる食中毒は、事件数50件(37.6%)、患者数810名(53.5%)であった。前年比はそれぞれ0.74および0.67で患者数は約400名減少した。このうち、カキなどの二枚貝が原因と考えられる事例は20件で全体の40%、残りの60%は従業員の手指などを介した二次汚染が原因と考えられた。6月を中心に岩ガキを原因とした食中毒が多発したことは、特記すべきことである(本誌第32巻第11号参照)。また、特別養護老人ホームで発生した1事例(患者数36名)では、検食(ほうれん草磯和え)からノロウイルスが検出され、原因食品を特定できた貴重な例となった。

 化学物質による事件は3件で、シイラを原因とするヒスタミンによる事例のほか、洗剤や漂白剤によるものであった。植物性自然毒および動物性自然毒によるものは各1件でそれぞれツキヨタケ、フグによるものであった。

 アニサキスによる食中毒は10件と非常に多く、シメサバやサンマ刺身、アジ等が原因食品であった(本誌第33巻第2号参照)。また、ヒラメの刺身を原因とするクドアによる食中毒2事例が報告された。クドアによる食中毒については、現在、検査法の開発や原因究明など精力的な研究が進められている。

                       (食品微生物研究科食中毒研究室)

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