東京都健康安全研究センター
腸管出血性大腸菌感染症・食中毒の発生状況および分離株の疫学解析成績 (平成24年)

 平成24年の東京都における腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の届出数は258名で,平成23年の257件とほぼ同数であった(東京都感染症発生動向調査)。また,東京都保菌者検索事業に基づき,都内の病院,検査センターおよび保健所等で分離され,保健所を通じて当センターに搬入されたEHECは,229株(平成23年は231株)であった。それら分離株の血清型はO157が最も多く165株(72%),次いでO26が36株(15.7%),O103,O111およびO145が各7株(3.1%),O121が2株(0.9%),O91,O165,O183は各1株(0.4%),OUT(O群型別不能)が2株(0.9%)であった(表1)。

 EHEC食中毒の原因として最も多いと推定される食品はユッケや牛レバ刺し等の生肉や内臓肉であるが,平成23年10月に生食用食肉の規格基準が設定され,更に平成24年7月から牛の肝臓を生食用として販売することが禁止となった。これらの規制によりEHEC感染者数は大幅に減少すると期待されたが,残念ながら前年とほぼ同数であった。その原因の1つは,平成24年にはO26による集団感染事例が保育園で発生したため,O26の検出数が36株(前年22株)と多かったことである。一方,O157分離菌株数は,平成22年260株,平成23年185株,平成24年165株と減少している。規格基準等の規制により,食肉関連事例が多いO157は減少したものと考えられた。

 平成24年に都内でEHECによる食中毒として報告されたのは,6月に発生した焼肉店を原因としたO157による1事例のみであった。この3グループが関与した事例について紹介する。

 グループ1:医療機関から保健所にO157(VT1+VT2)患者の届出があった。調査により家族4名でG焼肉店を利用しており,レバ刺し等を喫食していることが判明した。更に,家族に発症者がいることが確認されたため,検便検査を行った結果,非発症の家族から同菌が検出された。

 グループ2:保健所にO157(VT1+VT2)感染症の届出があり調査したところ,家族6名でグループ1と同じG焼肉店で焼肉ランチを喫食していることが判明した。家族検便を実施したが,O157は検出されなかった。

 グループ3:O157が検出された患者について調査した結果,G焼肉店で焼肉等を喫食していることが判明した。家族で利用していたため家族検便を行った結果,非発症者からもO157(VT1+VT2)が検出された。

 3グループの患者・非発症者から分離したO157(6株)のPFGE解析を実施した結果,PFGEパターンがほぼ一致した(写真)。3グループは他に共通点が認められないことや,共通食がG焼肉店のみであったこと,更に検出された菌株の疫学的性状試験成績が一致したことから,本事例はG焼肉店を原因とした食中毒事例であると断定された。また同時期に都内で分離されたO157株に同様のPFGEパターンを示す株が2株認められたが,その関連性は確認できなかった。

 8月には北海道で「白菜の浅漬け」を原因とした食中毒が発生した。本事例では,都内在住者が北海道へ旅行中,宿泊施設で提供された「白菜の浅漬け」を喫食し,東京へ戻った後に発症した事例も含まれていた。7~8月に北海道へ旅行し,O157が検出された都内の患者は3名であった。3名由来の3株についてIS-printing System 解析を行った結果,3名中2名(家族)が「白菜の浅漬け」由来株と同じパターンであることが判明した。O157の遺伝子解析は通常PFGE法が用いられているが,本事例では近年開発されたIS-printing System法が用いられた。本法は簡便・迅速に解析することが可能であることから,今後の活用が期待されている。

食品微生物研究科 食中毒研究室・腸内細菌研究室

 

表1. ヒト由来腸管出血性大腸菌の血清型と毒素型(平成24年,東京都)

血清型 菌株数 (%) 毒素型
VT1 VT2 VT1+VT2
O157 165 (72) 1 57 107
O26 36 (15.7) 34   2
O103 7 (3.1) 7    
O111 7 (3.1) 3   4
O145 7 (3.1)   7  
O121 2 (0.9)   2  
O91 1 (0.4) 1    
O165 1 (0.4)   1  
O183 1 (0.4)     1
OUT 2 (0.9)   2 O157
合計 229 (100) 46 69 114

  

表2 焼肉店を原因とした腸管出血性大腸菌O157食中毒事例(2012年6月) 

  グループ1 グループ2 グループ3
喫食日 6月24日夜 6月24日昼 6月24日夜
発症日 6月28日 6月29日 6月28日~7月1日
喫食者数 4名(家族) 6名(家族) 3名(家族)
患者数 2名 1名 2名
菌検出者 2名 1名 3名
原因菌 O157:H7 O157:H7 O157:H7
毒素型 VT1+VT2 VT1+VT2 VT1+VT2

焼肉店の調査として,ふきとり 6検体および調理従事者 2検体を検査したが,いずれも陰性であった。

 

 

 

写真 G焼肉店を原因とした腸管出血性大腸菌O157食中毒事例由来株のPFGEパターン(2012年6月)

 

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