東京都健康安全研究センター
東京都内で検出されたクラミジア・トラコマチスの血清型の解析

 性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチス (Chlamydia trachomatis)を起因菌とし、我が国で最も感染者数が多いとされている性感染症である。

 クラミジア・トラコマチスは眼疾患であるトラコーマの起因菌であることからその命名がなされたが、今日ではむしろ性感染症の起因菌として広く知られている。また、クラミジア・トラコマチスには鼠径リンパ肉芽腫症(第四性病)を引き起こすものもあり、それぞれ血清学的に異なる型とされている。

 性器クラミジア感染症は、感染症法では五類感染症に分類され、定点把握疾患である。また2012年1月に一部改定された「性感染症に関する特定感染症予防指針」においても、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、梅毒及び淋菌感染症とともに、発生の予防及び蔓延の防止の観点から発生動向を把握し、調査結果を対策に活用すべき感染症とされている。
東京都健康安全研究センターでは、予防指針に基づいた感染症発生動向調査事業の一環として、都内の性感染症病原体定点医療機関における性感染症発生数の把握を行っている。また、併せて定点医療機関受診者の検体についてクラミジア・トラコマチスや淋菌の検査を実施している。2012年~2013年の都内定点医療機関あたりの性器クラミジア感染症届出件数の推移を図1に示す。

 クラミジア・トラコマチスは、血清型に基づいた分類ではA~L型に分類され、アフリカやアジア等のトラコーマ流行地において検出されるA~C型、トラコーマ非流行地で検出されるD~K型、鼠径リンパ肉芽腫症の起因菌となるL型にそれぞれ分けられている(表)。

 トラコーマ非流行地であるヨーロッパやアメリカにおいては、特にD・E型が検出される菌株の約半数を占めているという過去の報告1)がある。同じくトラコーマ非流行地である我が国の分布状況を把握するため、都内定点医療機関での臨床検体から検出されたクラミジア・トラコマチスの血清型を調べた。
 クラミジア・トラコマチスの血清型は主要外膜タンパク(major outer membrane protein: MOMP)の抗原性によるものであるため、臨床検体より抽出されたクラミジア・トラコマチスDNAからMOMPをコードする遺伝子であるomp1を含むようにターゲット部位を設計したPCRにより増幅を行い、塩基配列を決定し、血清型の分類・解析を行った。
 2009年4月から2012年3月までに医療機関受診者の臨床検体(尿・尿道スワブ等)226例について調べた結果、D型・E型がともに51例(22%)と最多であり、次いでF型が45例(20%)であった(図2)。D型・E型・F型で全体の約65%を占めており、これらの型が主要であることは竹内ら2)の報告と一致していた。またトラコーマ型のBa型が3例(1.3%)検出され、性器クラミジア感染症型のG~K型も検出されたが、鼠径リンパ肉芽腫症型であるL型は検出されなかった。

 東京都健康安全研究センターでは、これらの感染症発生動向調査事業のサーベイランスの他にも、特別区性感染症対策事業の依頼検査を実施している。性器クラミジア感染症の検査は、以前はELISA法による抗体検査を行っていたが、「性感染症に関する特定感染症予防指針」において病原体検査を基本とするものとされたため、当センターでは尿またはスワブからのクラミジア遺伝子検査を開始している。2013年1月から11月のデータでは遺伝子検査の陽性率は3.8%であった。
 今後、クラミジア・トラコマチスの血清型の解析を蓄積することで感染実態の解明や集団感染事例のクラスタリングに有用な疫学情報を提供しうるものと期待される。

1) 萩原敏且:病原微生物検出情報(国立感染症研究所), 7, 3-4, 15, 1986
2) 竹内道子 他:病原微生物検出情報(国立感染症研究所), 19, 203-204, 1998

(微生物部病原細菌研究科 性感染症・血清研究室)

 

  

 

 

 

 

 図1. 性器クラミジア感染症の定点あたり患者報告数推移

(東京都感染症情報センター、http://survey.tokyo-eiken.go.jp/epidinfo/monthlychart.do)

 

 

図2. サーベイランスで検出されたクラミジア血清型内訳(2009-2012年)

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