東京都健康安全研究センター
腸管出血性大腸菌感染症・食中毒の発生状況および分離菌株の疫学的解析成績(平成26年)

 平成26年の東京都における腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の発生届出数は362名で,平成25年と比較して20名の減少であった(東京都感染症発生動向調査)。一方,東京都保菌者検索事業および感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく積極的疫学調査として,都内の病院,検査センターおよび保健所等で分離され,保健所を通じて当センターに搬入されたEHECは358株であった。分離株の血清群はO157が最も多く268株(74.9%),次いでO26が37株(10.3%),O103が13株(3.6%),O121が1株(3.1%),O111が9株(2.5%)等13種類の血清群に分類された(表1)。O群型別不能(OUT)は8株(2.2%)であった。散発患者発生動向調査の集計をみると平成26年は,過去10年間で最も散発患者が多かった。

 平成26年度に都内で発生したEHECによる食中毒は5事例であった。このうち3事例は,同一の加工処理場で処理した「馬刺し」を原因とした事例であった。これらの事例の概要は以下のとおりである。

 

1. 「馬刺し」を原因としたO157による食中毒3事例

 4月に福島県の加工処理場で処理した「馬刺し」を原因とした事例で,患者数は88名(11自治体),東京都内患者は6グループ14名であった。「馬刺し」を提供していた都内3施設から収去した未開封の「馬刺し」や拭き取り検体等からO157の検出を試みたが,O157は検出されなかった。しかし他自治体では,残されていた未開封の「馬刺し」からO157が検出され,患者分離株と遺伝子型が一致したことから食中毒と決定された。

 

2. 焼肉店の食事を原因としたO157による食中毒事例

 グループ1:患者は長野県在住者で,8月14日に家族5名で都内焼肉店Sを利用していることが判明した。グループ2.:患者は千葉県在住者で,8月14日に家族4名で同店を利用していた。グループ3:患者は群馬県在住者で,調査の結果,8月14日に家族4名で同店を利用していた。グループ1,2,3,の各患者計3名からO157(VT2)が検出されたため,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法による解析等の疫学解析を行った。その結果3株のPFGEパターンが一致したこと,焼肉店S以外に共通が認められなかったことから,焼肉店Sでの食事を原因とした食中毒であると断定された。患者3名はメニューが異なる定食を喫食していたが,ナムル,ご飯,ワカメスープ,サラダを共通して喫食していた。しかし,原因食品を特定することはできなかった。本事例は,いずれも東京都以外の異なる自治体在住の患者が,散発事例として届けられたが,積極的な患者調査および菌株の疫学的性状試験の結果,都内焼肉店を原因とした食中毒であることが判明した。

 

3. レストランRの食事を原因としたO157による食中毒事例

 11月19日~26日の間に届出されたO157患者のうち3名がレストランRで喫食していることが判明した。しかし,患者の喫食日や喫食したメニューが異なっていたことから,レストランRが原因であるというには,決め手に欠けるものであった(表2)。そこで3名から検出されたO157(VT2)についてPFGE解析を行った結果,PFGEパターン等が一致したことから,レストランRを原因とした食中毒であると断定された(写真)。レストランRは全国にチェーン店を展開していたため,万一他の店舗に共通食材が流通していた場合,散在的集団発生(Diffuse outbreak)に繋がる危険性が考えられる。そこで国立感染症研究所に依頼し,全国で分離される株と本事例由来株の比較を行ったところ,本事例由来株と同じタイプの株は分離されていないという結果であった。本事例は当該店舗での食品の取扱いが悪く,食材等が二次汚染された可能性が推察された。

 

 

 

 

微生物部食品微生物研究科 食中毒研究室・腸内細菌研究室

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