東京都健康安全研究センター
東京都における食品中のListeria monocytogenes検出状況

リステリア症とL. monocytogenes 

 リステリア症はL. monocytogenes(通性嫌気性のグラム陽性、無芽胞の短桿菌)を原因とする疾患で、L. monocytogenesは食肉、魚介類および環境中に広く存在する。

 L. monocytogenesに感染すると、風邪様症状や嘔吐、下痢等の急性胃腸炎症状を示すが、健康な成人では発症しないことも多い。一方で、基礎疾患、免疫機能が低下した人や高齢者などでは、髄膜炎や敗血症に進展する場合があり、重症化すると致死率は15~20%に及ぶ。また妊婦が感染した場合には、妊婦自身は無症状か軽症であっても、胎盤を通じて胎児に感染し新生児敗血症や髄膜炎を起こしたり、流産、早産や死産の原因となることがある。

 厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)では、血液または髄液からL. monocytogenesが分離された患者をリステリア症患者と定義し、患者数は年間200人程度、75%以上が高齢者としている1

 リステリア症の主な原因は汚染食品等の喫食であるが、原因食品を特定することは難しく、国内で食品媒介リステリア症の集団発生と証明されたのは、 2001年に北海道で発生したナチュラルチーズを原因食品とする事例のみである2。しかし欧米やオーストラリアではチーズ、アイスクリーム等の乳製品、ミートパテ等の食肉加工品、スモークサーモン等の魚介類加工品、サラダ類、果物を原因食品とする事例が発生している。

 L. monocytogenesの最適発育温度は37℃付近であるが、上限は45℃、下限は-0.4℃と低温での増殖性に優れている。そのためナチュラルチーズ、食肉製品(ハム等)などのready-to-eat食品(加熱しないでそのまま食べる食品)では、L. monocytogenesの汚染と冷蔵で長期間保存する間の菌の増殖が問題である。また、環境中ではバイオフィルムを形成し長期間生存するため、加工食品の汚染は原材料由来または加工施設の環境からの二次汚染が考えられている。

 

東京都に流通する食品のL. monocytogenes汚染状況 

 2000年から2012年の13年間に東京都内で流通したready-to-eat食品として、ナチュラルチーズ、生食用食肉(ユッケ用肉等)、食肉加工品(生ハム、ウインナーソーセージ、ミートボール等)、生食用鮮魚介類(刺身等)、魚介類加工品(スモークサーモン、辛子明太子等)、漬物(野菜)と、調理用食肉(牛肉、牛内臓肉、豚肉、鶏肉)について、L. monocytogenes汚染状況を調査した。

 ready-to-eat食品ではナチュラルチーズ0.3%、生食用食肉3.1%、食肉加工品1.7%、生食用鮮魚介類2.3%、魚介類加工品3.3%、漬物2.1%から、調理用食肉については牛肉13.9%、牛内臓肉21.2%、豚肉21.7%、鶏肉38.0%からL. monocytogenesが検出された(表1)。 

 L. monocytogenesが陽性であったready-to-eat食品のうち46検体について、L. monocytogenes菌数を最確数法で算定した結果、32検体は1gあたり1であった(表2)。菌数が1gあたり>1であった4検体は、セミソフトタイプチーズ、マグロ剥き身、松前漬で、最大で2.3であり、汚染菌量はいずれも少量であった。

 現在、L. monocytogenesの血清型は13の型が報告されており、臨床由来株では4bが最も多く、1/2a、1/2bとあわせてほとんどが占められる3)。今回の結果では、ready-to-eat食品由来で1/2a(47.6%)、1/2b(20.6%)、4b(14.3%)、1/2c(11.1%)、調理用食肉由来株で1/2a(36.1%)、1/2c(25.2%)、1/2b(19.6%)、4b(13.4%)の順であり、傾向は異なっていた(表3)。

 

食品中のリステリアに関する国内外の規制

 国際連合食糧農業機関(FAO)及び世界保健機構(WHO)により設置されたコーデックス委員会は国際的な政府間機関であり、2009年にready-to-eat食品を対象とした微生物規格を策定した。L. monocytogenesが増殖する可能性のある食品では5サンプルについて25g中不検出、可能性のない食品では5サンプルとも1gあたり100以下とされた。EU、カナダはそれに準じた規制を行っており、これに対しアメリカは食品(25g)から検出された場合には流通が禁止されるゼロトレランスによる規制を行っている。

 日本では非加熱食肉製品(生ハム等)及びナチュラルチーズ(ソフト及びセミソフトタイプ)からL. monocytogenesが検出された場合、1993年以降、食品衛生法第6条違反として、輸入禁止や製品回収の措置(ゼロトレランス規制)がとられてきた。今般、国際ハーモニゼーションの必要性および内閣府食品安全委員会による食品健康影響評価3)を踏まえ、2014年に食品衛生法に基づく規格基準が設定された。その中で、非加熱食肉製品とナチュラルチーズ(ソフト、セミソフト、セミハードタイプ)の成分規格はコーデックスの基準に準じL. monocytogenesが1gあたり100以下であることとされた。

 都内に流通するready-to-eat食品のL. monocytogenes汚染率及び汚染菌量は今の所少ないと考えられるが、規制が「ゼロトレランス規制」から「1gあたり100以下」となったことから、今後の流通食品の汚染状況に注意していく必要がある。

 

参考文献

1)山根一和、鈴木里和、柴山恵吾、厚生労働省院内感染対策サーベイランス検査部門データを用いた本邦におけるリステリア症罹患率の推定.病原微生物検出情報,33,247-248(2012).

2)Makino S.-I.,Kawamoto K., Takeshi K., Okada Y., Yamasaki M., Yamamoto S. and Igimi S., An outbreak of food-borne listeriosis due to cheese in Japan, during 2001. Int. J. Food Microbiol., 104, 189-196, (2005).

3)内閣府食品安全委員会:食品健康影響評価の結果の通知について.平成25年5月20日,府食第393号,http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20120116331(2013).

 

食品微生物研究科 乳肉魚介細菌室 下島優香子

 

 

 

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