東京都健康安全研究センター
平成27年の東京都におけるデングウイルス検査

 デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介される蚊媒介感染症である。現在、アジア、中南米等の熱帯・亜熱帯地域で広く流行しており、年間1億人近くの患者が発生している。デングウイルス媒介蚊に刺咬されると、3~7日程度の潜伏期間の後、突然の発熱、頭痛、関節痛などを呈する。一部の患者では解熱後、血漿漏出と出血傾向を主症状とするデング出血熱となる場合がある。

 デングウイルスはフラビウイルス科に属し、4つの血清型(1~4型)に分類され、各血清型のウイルスの遺伝子解析は感染地域を推定にするために有用な情報となる。

 平成26年8月から10月にかけて、約70年ぶりにデング熱が国内で発生し、全国で162例、都内で108例の患者が報告された。患者の多くは代々木公園またはその周辺でデングウイルス1型に感染したと推定され、代々木公園で捕集されたシマカ亜属からデングウイルス1型が検出された。

 

1. 平成27年のデング熱媒介蚊サーベイランス

 東京都では、蚊媒介感染症対策として、平成16年から「東京都感染症媒介蚊サーベイランス」を実施してきた。今年度はデング熱の監視体制を強化するため、これまでの感染症媒介蚊サーベイランス(6~10月)に加え、代々木公園など都内9施設に50定点を設定し、デング熱媒介蚊サーベイランス(4~11月)を実施した。各サーベイランスで捕集した成虫(シマカ亜属)の個体数は、6月下旬から増え、8月末前後にピークとなった(図)。

 蚊のウイルス検査は、30匹ごとにプールした蚊の抽出液を材料とし、リアルタイムPCRによる遺伝子検査(以下PCR検査)を実施した。感染症媒介蚊サーベイランス事業で搬入された成虫1,726匹およびデング熱媒介蚊サーベイランス事業で搬入された成虫2,786匹、幼虫9,128匹について、ウイルス検査を実施した結果すべて陰性だった。

 

2. 平成27年のデング熱(疑い)患者の検査

 デング熱は感染症法で定める4類感染症の全数把握対象疾患であり、届出が義務付けられている。平成26年は全国で国内感染162例、国外感染179例の計341例が報告された。平成27年は11月15日現在、国内感染例の報告はないものの、輸入症例(海外感染)が全国で262人、都内で81人が報告されている。デング熱の報告数は近年増加傾向にあり、統計をはじめた平成11年以降最多のペースである。

 デング熱患者の検査には検体として血液を使用し、PCR検査、デングウイルスNS1抗原検査、IgM抗体検出法およびウイルス分離検査などがある。今年度より当センターでは「デング熱及びチクングニア熱に関する対応について(27福保健感315号)」に基づき、医療機関等においてデングウイルスNS1抗原検査未実施の場合(デング熱疑い例)には、デングウイルスNS1抗原検査、PCR検査を実施し、デングウイルスNS1抗原検査陽性の場合(デング熱確定例)にはPCR検査を実施している。PCR検査法は国立感染症研究所の「デングウイルス感染症診断マニュアル」に準拠して行っている。

 11月15日現在までに海外感染疑い例および確定例62検体、国内感染疑い例18検体の計80検体の検査を実施し、38検体がデングウイルス陽性で、すべてが海外感染例であった。患者の主な渡航先はフィリピン(14例)、インドネシア(8例)、ミャンマー(5例)であった。また、検出されたデングウイルスの血清型は2型が最も多く14例(36.8%)、次いで1型13例(34.2%)であった(表)。血清型不明の3検体はデングウイルスNS1抗原検査で陽性であるものの、PCR検査では陰性であった。このことはデング熱発症から6日前後で血液中のウイルスが消失するのに対しNS1抗原はさらに長く(約18病日)検出されることによると考えられる。

 

 PCR検査で陽性となった検体は、すべてデングウイルスE領域遺伝子のシークエンス(塩基配列)解析を行っている。平成26年の国内感染事例では、患者から検出されたウイルス遺伝子の塩基配列が、代々木公園で捕集された蚊由来のウイルス遺伝子と同一であることが判明し、感染経路の解明に大きな役割を果たした。平時からウイルスの塩基配列解析を行い、現在流行しているウイルスを確認・解析することは、国内感染が発生した場合に感染源の推定や伝播の状況の把握などに役立てることができる。

 平成27年の媒介蚊サーベイランス事業ではデングウイルスを保有した蚊は確認されなかったが、デング熱患者の報告数は過去最多を更新している。グローバル化が進み、デング熱を含む海外で流行している感染症が国内に持ち込まれ、国内で感染が拡大する可能性が危惧される。昨年のデング熱国内感染発生での経験を踏まえ、これからも、国内での蚊媒介感染症の拡大防止に努めなければならない。

(ウイルス研究科 齊木 大)

 

 

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