東京都健康安全研究センター
東京都における胃腸炎起因ウイルスの検出状況(2014 / 2015シーズン)

 2014/2015シーズン(2014年9月から2015年8月)に都内で発生した食中毒(有症苦情を含む)や保育園などの施設内における集団胃腸炎事例の中で、当センターに胃腸炎起因ウイルスの検査依頼があった543事例について、real-time PCR法を用いた検索を実施した。対象としたウイルスは、ノロウイルス(Norovirus:NoV)、サポウイルス(Sapovirus:SaV)、ロタウイルス(Rotavirus:RV)、アストロウイルス(Astrovirus:AstV)およびアデノウイルス(AdV)である。

 供試検体数は、糞便・吐物5,203検体(胃腸炎発症者2,765検体、非発症者261検体、調理従事者等2,177検体)、食品846検体、拭き取り758検体であった。

 検査を実施した543事例の中で、249事例(45.9%)、1599検体(57.8%)の胃腸炎発症者から胃腸炎起因ウイルスが検出された。検出されたウイルスの内訳は、NoVが最も多く244事例(98.0%)を占めた。その他はSaVが2事例(0.8%)、RVが1事例(0.4%)、AdVが1事例(0.4%)、RVとAstVの同時検出事例が1事例(0.4%)であった。検出されたNoVの遺伝子群別ではGIが39事例(16.0%)、GIIが169事例(69.3%)、GIとGIIがともに検出された事例が36事例(14.8%)であった。GIとGIIが同時に検出された事例の多くはカキなどの二枚貝を喫食した食中毒事例であったが、6月には生シラスが原因食品と疑われる事例が4事例確認された。

 NoVを中心としたウイルス性胃腸炎の流行は例年11~12月にピークを迎えるが、本シーズンは2月の検査依頼数およびウイルス陽性数がともに最多であり、夏季(7~8月)にも11月並みにウイルスが検出される事例が確認された。発生施設別では、飲食店(仕出しを含む)が165事例(66.3%)、保育園や小学校が33事例(13.5%)、宿泊施設が20事例(8.0%)、福祉施設・病院が11事例(4.4%)、自宅が6事例(2.4%)、結婚式場が5事例(2.0%)、その他の施設が9事例(3.6%)であった。

 胃腸炎発症者でウイルス検出陽性となり、調理従事者等の検査依頼もあった118事例では、59事例(50.0%)の調理従事者等の糞便からNoVが検出された。この結果は、NoVを原因とした食中毒事例の半数もしくはそれ以上が調理従事者等を介して発生した可能性を示唆しており、近年は同様の傾向が続いている。また、249事例のうち94事例496検体の食品検査を実施したところ、14事例(14.9%)16検体(3.2%)からNoVが検出された。NoV陽性となった検体は11検体がカキであったが、カキ以外では飲食店で使用されたサーモンやマグロ、氷、仕出し弁当の残品や凍結サバであった。一方、調理従事者等がNoV陽性となった59事例のうち46事例312検体の施設の拭き取り検査も実施しており、17事例(37.0%)33検体(10.6%)でNoVが検出された。陽性となった検体は、便座やドアノブなどトイレ周辺の拭き取りのほか、冷蔵庫の取っ手などであった。以上のことから、食中毒や感染症の発生および拡大防止には、施設における一層の衛生管理・指導が重要であると考えられた。

 検出されたNoVについて遺伝子解析を実施したところ、192事例の遺伝子型が判明した(図)。遺伝子型別の事例数は、GII.17が77事例(40.1%)と最多であった。このGII.17は川崎市健康安全研究所が中心となったグループが2014年3月に検知したGII.17変異株(GII.P17-GII.17)であり、都内でも2015年1月以降に多く検出された。昨シーズンまで主流であったGII.4は52事例(27.1%)と2番目に多く確認され、そのほとんどが2012年に出現したSydney/NSW0514/2012/AU(JX459908)の類似株であった。また、GI.3が26事例(13.5%)確認され、主に4~8月に多く検出された。他県においても同様の傾向が確認されており、全国的に夏季にGI.3の流行があったと考えられる。その他には、GI.2が14事例(7.3%)、GI.4が1事例(0.5%)、GI.6が1事例(0.5%)、GII.2が2事例(1.0%)、GII.6が13事例(6.8%)、GII.10が1事例(0.5%)、GII.13が3事例(1.6%)検出され、二枚貝の喫食が原因と考えられる食中毒事例では、複数の遺伝子型が混在しているものも確認された。

 NoVは主流となる遺伝子型の変化によって、大きな流行を引き起こすことや、従来とは異なる時期に流行する可能性がある。集団胃腸炎の流行防止のためには、今後も継続的にNoV遺伝子型を監視し、関係機関へ情報提供や注意喚起をしていく必要がある。

 

(ウイルス研究科 永野美由紀)

 

図.2014/2015シーズンに検出されたノロウイルスの遺伝子型

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