東京都健康安全研究センター
病原体レファレンス事業に基づく病原体等の収集と解析結果(平成27年度)

 病原体レファレンス事業は、都内で発生する感染症の病原体等を積極的に収集し、病原体の性状や遺伝子を比較・解析することにより流行型の血清型や薬剤耐性、遺伝子変異等を把握し監視していくことを目的としている。
 本事業では、医療機関や保健所等の協力により主として感染症法では収集体制が確保されていない病原体の収集を行っている。また、積極的疫学調査として麻しん検査を行った例で、麻しんウイルス陰性例については他のウイルス検査(類症鑑別診断)を実施している。

 

1.協力医療機関から収集した病原体の解析

 医療機関等の協力により、感染症法では収集体制が確保されていないカンピロバクター、大腸菌、エルシニア等を収集している。平成27年度に都立病院及び都保健医療公社病院から送付された病原体(菌株)は、表1のとおりである。また、各病原体の種類・解析結果は以下のとおりである(表2-6)。

 

1)カンピロバクター
 カンピロバクター属菌として送付された菌株は120株で、その内訳はCampylobacter jejuni 111株(92.5%)、C. coli 8株(6.6%)、及びHelicobacter cinaedi 1株(0.8%)であった。C. jejuni 2株及びH. cinaedi 1株は血液由来、C. jejuni 1株は腸液由来、その他116株 (96.6%) は糞便由来であった。
 血清型別はC. jejuniを対象として、Lior法(易熱性抗原を用いた型別法)により行った。血清型は、型別不能の45株を除き13種類に型別された( 型別率 59.4% )。検出頻度が高い血清型はLIO 4: 19株(17.1 %)、TCK 1: 12株(10.8%)、LIO 28: 11株(9.9 %)、LIO 7: 5株(4.5 %)、であった(表2)。

 

2)大腸菌
 下痢症患者由来の大腸菌は313株搬入された。このうち毒素原性大腸菌(ETEC)は21株(6.7%)であり、血清型及び毒素型により10種類に分類された(表3)。最も多く検出されたO血清群はO6(6株)で、次いでO159(5株)、O15(3株)、O27、O25、O148(各2株)、O167(1株)であった。ETECが検出された患者は全て海外渡航歴が認められ、推定感染地はフィリピン、インド等であった。

 

3)サルモネラ
 サルモネラは24株搬入され、14種類の血清型に分類された。最も多い血清型はO4群Stanley及びO7群Infantis(各4株)、次いでO4群Chester及びSaintpaul(各3株)であった(表4)。海外での感染が推定されたのはO4群Stanley(マレーシア、フィリピン)、O4群Brandenburg(フィリピン)、O4群Haifa(インド・ネパール)、O4群Typhimurium及びO35群Adelaide(インド)であった。
 搬入された24株についてアンピシリン(ABPC)、セフォタキシム(CTX)、ゲンタマイシン(GM)、カナマイシン(KM)、ストレプトマイシン(SM)、テトラサイクリン(TC)、クロラムフェニコール(CP)、ST合剤(ST)、ナリジクス酸(NA)、シプロフロキサシン(CPFX)、ノルフロキサシン(NFLX)、オフロキサシン(OFLX)、ホスホマイシン(FOM)及びスルフイソキサゾール(Su)を用いた薬剤感受性試験を実施した。その結果、いずれか1薬剤以上に耐性を示した株は9株(37.5%)であった(表5)。

 

4)エルシニア
 Yersinia属菌は8株搬入された。このうちY. enterocoliticaは6株、Y. pseudotuberculosisは1株であった。Y. enterocoliticaの血清型はO3群が5株、O8群は1株でY. pseudotuberculosisの血清型は4bであった。推定感染地は国内が4株、不明は3株であった。

 

5)レンサ球菌
 レンサ球菌は61株搬入され、その内訳はA群が21株、B群が26株、C群が3株、G群が6株、肺炎球菌が5株であった。
 A群レンサ球菌のうち19株はStreptococcus pyogenesであり、2株はS.dysgalactiae subsp. equisimilisであった。S.pyogenes 19株のT血清型は1型が最も多く9株、次いで4型3株、5/27/44型及びB3264型各2株、3型、12型及び14/49型各1株であった。発熱性毒素産生性ではB産生株9株、B+C産生株8株、A+B産生株2株であった。
 B群レンサ球菌 (S.agalactiae )26株の血清型は、Ⅲ型13株が最も多く、次いでⅠb型5株、Ⅱ型、Ⅵ型及びⅧ型各1株であった。また、C群レンサ球菌の1株は、S.equi subsp. zooepidemicusであり、C群の2株及びG群レンサ球菌6株全ては、S.dysgalactiae subsp. equisimilisであった。
 肺炎球菌は、9歳から87歳の患者5名の血液から分離された5株であり、血清型は、33Fが2株、3、7F及び15A型がそれぞれ1株ずつであった。

 

6)黄色ブドウ球菌
 黄色ブドウ球菌については102株搬入され、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は40株、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)は62株であった(表6)。
 MRSAのコアグラーゼ型(コ型)はⅢ型が最も多く13株、次いでⅦ型8株等であった。毒素産生株はSEA産生株が最も多く9株であり、そのうち7株がⅦ型であった。SEC+TSST-1産生株は7株あり、Ⅱ型3株、Ⅲ型3株及びⅦ型1株であった。また、表皮剥脱毒素EXT Bを産生していた4株はすべてⅠ型であった。
 MSSAについては、62株中コ型はⅢ型が最も多く13株、次いでⅦ型が9株、Ⅹ型が8株、Ⅳ型が7株、Ⅴ型が6株等であった。毒素産生株ではSEA産生株と表皮剥脱毒素EXT A産生株が最も多くそれぞれ5株であった。一方、毒素非産生株では、MRSAが40株中14株(35%)に対し、MSSAでは62株中41株(66%)とMSSAの方が多くみられた。

 

7)髄膜炎菌
 髄膜炎菌は、1株搬入された。なお、本株についてはPCR法による血清型別を実施した結果、型別不能であった。

 

8)その他
 百日咳菌4株、同定検査依頼が19株搬入された。

 

2.麻しんウイルス検査(積極的疫学調査)陰性例の他のウイルス検査

 平成22年12月1日から積極的疫学調査として麻しんウイルス検査を実施している。平成23年11月1日からは、本事業として麻しん陰性例を対象に類症鑑別検査(風しんウイルス、ヒトパルボウイルス、2歳以下についてはヒトヘルペスウイルス検査を追加)を実施している。
 平成27年度は、79件の麻しん陰性例について検査及び解析を行った。その結果、風しんウイルスが1検体、ヒトヘルペスウイルスが16検体(6型:14検体、7型:2検体)、ヒトパルボウイルスB19が5検体から検出された。

 

                         食品微生物研究科 小西典子、赤瀬 悟

                         病原細菌研究科   奥野ルミ

                         ウイルス研究科  長谷川 道弥

 

 

表1.対象病原体(平成27年4月~28年3月)

 

表2.散発患者由来 C. jejuni の血清型 (Lior法)

 

表3.検出された毒素原生大腸菌

 

表4.サルモネラの血清型

 

表5.薬剤耐性を示したサルモネラの血清型と薬剤耐性パターン

 

表6.黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型と毒素産生性

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2016 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.