東京都健康安全研究センター
平成28年の食中毒発生状況

 平成28年に全国および東京都内で発生した食中毒事件の概要と特徴について、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課並びに東京都福祉保健局健康安全部の資料に基づいて紹介する。

 

1.全国における食中毒発生状況

 食中毒事件の総数は1,139件、患者数は20,252名(死者数14名)であり、事件数は前年比0.95、患者数は前年比0.89であった。そのうち、原因物質不明は27件(2.4%)、患者数322名(1.6%)であった。

 

 事件数を原因物質別に見ると、細菌性食中毒は480件(42.1%)、前年比1.11でやや増加した。原因菌別の第1位は平成15年以降14年連続でカンピロバクター339件(29.8%)、以下、黄色ブドウ球菌36件(3.2%)、サルモネラ31件(2.7%)、ウエルシュ菌31件(2.7%)、腸管出血性大腸菌14件(1.2%)、腸炎ビブリオ12件(1.1%)、セレウス菌9件(0.8%)、腸管出血性大腸菌以外の大腸菌6件(0.5%)、エルシニア・エンテロコリチカ1件(0.1%)、その他の細菌が1件(0.1%)であった。その他の細菌1事例は「ブロッコリーのおかか和え」を原因食品とする溶血性レンサ球菌によるものであった。

 

 細菌性食中毒の患者数は7,483名(36.9%)、前年比1.24でやや増加した。患者数の多い原因菌は、カンピロバクター3,272名、次いでウエルシュ菌1,411名であった。1事件あたり患者数500名以上の大規模食中毒は4月に1件東京都(江東区)で発生しており、ゴールデンウィーク中に開催された肉料理のイベントで提供された「鶏ささみ寿司」を原因食品とするカンピロバクターによるもので、患者数は609名であった。このイベントは福岡でも開催されており「鶏ささみ寿司」および「鶏むね肉のたたき寿司」を喫食した人からカンピロバクターが検出し、患者数は266名であった。

 

 また、広域的な集団食中毒事例として、冷凍メンチカツ(そうざい半製品)を原因食品とした腸管出血性大腸菌O157による事例が発生し、患者は1都5県で67名に及んだ。当該製品を家庭で調理し、加熱不足の状態で喫食した可能性がある患者も確認されていることから、厚生労働省および消費者庁は、各自治体や関係する食品団体に「加熱調理を前提とした食品による食中毒の予防について」(生食監発1128第1号、消食表第745号 平成28年11月28日)を通知した。

 

 一方、ノロウイルスによる食中毒は事件数354件(31.1%)、患者数11,397名(56.3%)と最も多かったが、前年比は事件数0.74、患者数0.77と減少した。1事件あたり患者数500名以上の大規模食中毒は1件、京都府で11月に発生した旅館の食事を原因とした患者579名の事件であった。

 

 平成25年より食中毒病因物質の種別に追加されたアニサキスは124件(10.9%)、クドアは22件(1.9%)であった。化学物質による食中毒は17件(1.5%)、植物性自然毒は77件(6.8%)、動物性自然毒は32件(2.8%)であった。その他の3件はノロウイルス及びカンピロバクター、サルモネラ及びノロウイルスというように病因物質が複数検出された事例であった。

 

 食中毒による死者数は前年より8名増加して14名であったが、そのうち10名は腸管出血性大腸菌O157 によるものであった。千葉県と東京都の同系列の老人ホーム2施設で発生した「きゅうりのゆかり和え」を原因食品とする食中毒で各施設それぞれ5名の入居者が亡くなった。他の4名は植物性自然毒(イヌサフラン2名、スイセン1名、トリカブト1名)によるものであった。

 

2.東京都における食中毒発生状況

 都内の食中毒発生状況は、事件数136件(患者数2,309名)であり、平成27年の事件数149件(患者数2,258名)と比べ、事件数は0.91で減少、患者数は1.02でやや増加した。食中毒136件中、細菌によるものは55件(40.4%)であった。原因菌ではカンピロバクターが最も多く36件(26.5%)、以下、サルモネラ6件(4.4%)、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌、ウエルシュ菌が各4件(2.9%)、黄色ブドウ球菌3件(2.2%)、その他の大腸菌1件(0.7%)であった。細菌性食中毒の患者数は1,212名(51.3%)、前年比2.28で増加した。患者数では、カンピロバクター796名、次いでウエルシュ菌148名、サルモネラ85名で、患者数100名以上の大規模な事件は前述の通り、「鶏ささみ寿司」を原因としたカンピロバクターによる事例(患者数609名)があった。

 

 ノロウイルスによる食中毒は、事件数51件(37.5%)、患者数1,069名(46.3%)と共に最も多く、前年比は事件数0.91、患者数0.68で、ともに前年より減少した。平成28年はノロウイルスによる患者数100名以上の大規模な事件は、1事例(患者数150名)のみで、原因食品は社員食堂で提供されたサラダバーであった。

 

 アニサキスによる食中毒は21件(15.4%)発生し、前年比1.62で増加した。原因食品はしめさばによるものが多かった。クドアによる食中毒の発生は無かった。

 

 化学物質による食中毒は4件で全てヒスタミンによるものであった。

 

 植物性自然毒による食中毒は2件で、スイセンとチョウセンアサガオによるもの、動物性自然毒による食中毒は2件で、貝類のテトラミン(推定も含む)によるものであった。

 

 また、原因物質不明の食中毒は1件(患者数2名)あり、飲食店で提供された食事が原因で発生した。

(食品微生物研究科 尾畑 浩魅)

 

表1.平成28年の食中毒発生状況  

1) 3事件(患者数27名)はサルモネラ及びカンピロバクターとの混合感染(重掲)

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