東京都健康安全研究センター
PCR法を用いたCampylobacter jejuniの型別法の有用性

1.はじめに

 Campylobacter jejuni (以下C. jejuni )は、下痢症の原因菌として公衆衛生上重要な細菌の一つである。C. jejuniの血清型別法は、1985年にCampylobacter国際型別委員会がLior法(スライド凝集反応法)1)とPenner法(受身血球凝集反応法)2)の2種類の型別法を採択・承認した。Lior法は、菌体表面に存在する鞭毛抗原やK抗原様物質などの易熱性抗原の免疫学的特性により型別する方法である。一方、Penner法は、耐熱性を示す菌体抗原(LOS : Lipooligosaccharide、またはK抗原様物質であるPS : Polysaccharide)を標的抗原として型別する方法である。

 

 東京都健康安全研究センターでは、Lior法による血清型別を行ってきたが、2016年4月より血清型別の結果報告をPenner法に変更した。また、最近5年間のPenner法による型別率は29~57%で低下傾向が認められている(図)。なお、C. jejuniの血清型別法に関する経緯詳細については、既報3)を参照されたい。

 

 

2.C. jejuniのPCR型別法の検討

 近年、大腸菌などで応用されているPCRを用いた型別法が、C. jejuni についても2011年に報告された4)。本法はPenner法における血清型関連遺伝子をPCRで検出し型別する方法であり、その後、2015年に型別可能な種類を増やした改良法が報告された5)。今回、2017年4月~10月までに病原体レファレンス事業で、都内協力医療機関から当センターへ搬入された散発下痢症患者由来のC. jejuni 69株について、従来のPenner法およびPCR型別法による型別を試みた(表)。

 

 その結果、Penner法では69株中20株(型別率29.0%)と型別率が低かったのに対し、PCR型別法では69株中65株(94.2%)と著しく型別率が高いことが判明した。特に、Penner法で型別不能(UT)とされていた49株のうち45株がPCR型別法で型別可能になった。

 

 今回検討した69株の中では、A群(8株)、B群(14株)、D群(17株)およびR群(7株)が多い傾向が認められた。B群14株については、Penner法ではすべて型別不能であったのに対し、PCR型別法ではすべて型別可能であった。市販血清B群の型別率の低さについては既に指摘されているが6)、その原因は明らかにされていない。

 

 今回検証した菌株数は少数ではあるが、今後はさらに集団食中毒事例由来株も含めて比較検討を継続し、本PCR型別法の有用性をさらに検証していく必要がある。

 

 

参考文献
1) Lior, H. et al., J. Clin. Microbiol, 15, 761-768, 1982.
2) Penner, J, L. et al., J. Clin. Microbiol., 12, 732-737, 1980.
3) 横山敬子, 東京都微生物検査情報,37, 5-8,2016.
4) Poly, F. et al., J. Clin. Microbiol., 49, 1750- 1757, 2011.
5) Poly, F. et al., PloS ONE, 10, e0144349, 2015.
6) 甲斐明美ら, 厚労科研「国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークの

  強化に関する研究班」分担研究報告書, 51-56, 2015.

(食品微生物研究科 赤瀬 悟)

 

 図. Penner法(従来法)によるCampylobacter jejuniの型別率の推移(最近5年)

 

 

表. Campylobacter jejuniのPenner法およびPCR法による型別率

(2017年4~10月受付分)

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します ご利用にあたって
© 2018 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.