東京都健康安全研究センター
東京都における梅毒無料匿名検査の陽性率の推移

 Treponema pallidumを起因菌とする性感染症である梅毒は、感染症法において全数把握の五類感染症に指定されており、診断した医療機関は7日以内に保健所に届出を行うことが義務付けられている。近年、梅毒の届出数は急増傾向にあり(図1)、2017年末において東京都で1,788件、全国で5,770件の届出があった。2012年と比較すると5年で東京都は6.0倍、全国で6.5倍の増加がみられており、梅毒の対策は急務と考えられている。東京都感染症情報センターによる都内届出例の推定感染経路別の推移(図2, 3)を見ると、男性の同性間接触に由来する患者数に比べ、異性間接触に由来する患者数が著しく増加している。このことは、従来のMSM (Men who have Sex with Men)のコミュニティー内を中心とした伝播・蔓延に加え、異性間接触による女性の感染の増加が影響しているためであると考えられる。村上ら1)の報告では、2016年は女性では20-24歳の人口対届出率が最も高く、若年層の女性の間での梅毒の急増に対する公衆衛生上の対策が急がれているとしている。

 

 東京都では特別区保健所(以下、保健所)や東京都南新宿検査・相談室(以下、南新宿)において梅毒の無料匿名検査を実施している。特別区保健所では概ね月1~2回で通年、南新宿検査・相談室では6月1日~30日の東京都HIV検査・相談月間と11月15日~12月14日の東京都エイズ予防月間(以下、対策月間)の期間は毎日、それ以外の期間については2015年4月からは週2日、2016年4月からは週3日の頻度で検査を受け付けている。東京都健康安全研究センター(以下、健安研)ではこれらの施設より依頼された検体について、TPLA法 (Treponema pallidum Latex Agglutination)とRPR法 (Rapid Plasma Reagin test)によるスクリーニング、TPHA (Treponema pallidum Hamagglutination)による確認検査を行っている。今回、健安研で行った2015~2017年の梅毒検査(2015年:6,375件、2016年:8,085件、2017年:9,706件)について、施設・検査時期・被験者性別に関する分析を行ったのでその結果について報告する。

 

 
 施設別の陽性率(図4)をみると、主に過去の感染を示唆する【TPLA(+)RPR(-)TPHA(+)】の結果は南新宿において2015年と比較して2016, 2017年はやや陽性率が高くなっており、すなわち梅毒罹患歴を有する層の割合がやや増加していたものの、主に現在の感染を示唆する【TPLA(+)RPR(+)TPHA(+)】の結果は保健所、南新宿ともに医療機関からの届出数に類似した急激な上昇はみられていない。

 

 検査を行った時期について陽性率を比較してみると(図5)、過去・現在の感染を示唆する結果の両方とも通常月間と対策月間の間に顕著な差はみられなかった。男女別の陽性率(図6)をみると、女性の陽性者は少数であるためバラつきは大きいものの、現在の感染を示唆する結果についての女性の陽性数に顕著な上昇はみられていない。

 

 梅毒の無料匿名検査における女性の陽性率は男性と比較して顕著に低く、梅毒届出数における男女比とは乖離がみられている。男性では、過去の感染を示唆する結果の割合が、現在の感染を示唆するものの約2倍の割合でみられていた。また、女性の梅毒陽性例【TPLA(+)RPR(+)TPHA(+)】の年代別内訳を表に示した。年による変動が大きく、2015, 2016年は10-20歳代が7例中3例、7例中6例を占めていたが、2017年は12例中3例であり、その他の年代が多くみられた。

 

 なお、2018年4月から南新宿では梅毒検査について通年、祝日を除き毎日検査が受けられるように検査体制を増強した。検査可能日の拡大により梅毒検査がより受けやすくなると考えられるが、このことを機会として都内における梅毒の実態把握や女性も含めた梅毒感染拡大につながる層の梅毒検査の受診向上に結び付くことが期待される。

 

参考文献

1) 村上邦仁子 他:IASR, 38, 62-64, 2017.

 

(病原細菌研究科 三宅 啓文)

 

図1. 梅毒届出数の推移(全国・東京都)

 

 

図2. 推定感染原因別患者報告数推移(男性)

(東京都感染症情報センターHPより) 

図3. 推定感染原因別患者報告数推移(女性)

(東京都感染症情報センターHPより)

 

図4. 施設別梅毒陽性率の推移

(2015-2017年)

 

図5. 検査期間別梅毒陽性率の推移

(2015-2017年)

 

図6. 男女別梅毒陽性率の推移(2015-2017年)

 

 

表 女性梅毒陽性例【TPLA(+)RPR(+)TPHA(+)】年代別内訳

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