東京都健康安全研究センター
インフルエンザA(H1N2)型ウイルスについて

 今シーズン、世界数ヶ国でインフルエンザAウイルスの新亜型(H1N2)が確認されています。ここでは、米国疾病管理センター(CDC)による、新亜型インフルエンザウイルスに関するQ&Aの要訳を紹介します。

Q1.インフルエンザA(H1N2)ウイルスとはどのようなウイルスでしょうか?

Q2.インフルエンザA(H1N2)型ウイルスはどこで発生して、どこで発見されたのでしょうか?

Q3.インフルエンザA(H1N2)型ウイルスは、現在までに流行している、他のA型ウイルスとどのくらい違うのでしょうか?

Q4.A(H1N2)型ウイルスによる世界的な流行は起きるのでしょうか?

Q5.A(H1N2)型ウイルスによるインフルエンザの症状は他のウイルスによるものよりも重いのでしょうか?

Q6.今シーズンに受けたインフルエンザ予防接種はA(H1N)型ウイルスから私を守る効果があるのでしょうか?

 


Q1. インフルエンザA(H1N2)ウイルスとはどのようなウイルスでしょうか?

A1. 新しい亜型であるインフルエンザA(H1N2)型ウイルスは、現在流行しているAソ連型(H1N1)ウイルスとA香港型(H3N2)ウイルスの遺伝子再集合によって生まれたと考えられます。インフルエンザウイルスはその表面にあるヘマグルチニン(Hタンパク質)とノイラミニダーゼ(Nタンパク質)という2種類のタンパク質に基づいて亜型が決定されます。

1977年以降、A(H1N1)型とA(H3N2)型の2種類の亜型のウイルスによるインフルエンザが流行していますが、今回確認されたインフルエンザA(H1N2)型ウイルスのHタンパク質はA(H1N1)型ウイルスのHタンパク質に、Nタンパク質はA(H3N2)型ウイルスのNタンパク質に近縁です。


Q2. インフルエンザA(H1N2)型ウイルスはどこで発生して、どこで発見されたのでしょうか?

A2. 2002年2月6日にWHOとPHLS(Public Health Laboratory Service, UK)は、イギリス、イスラエルおよびエジプトで、インフルエンザ患者から新亜型のインフルエンザA(H1N2)型ウイルスを検出したと報告しました。これとは別にCDCも2001年7月、9月および12月にテキサス州、ネバダ州とウイスコンシン州でそれぞれ採取した患者の検体から,インフルエンザA(H1N2)型ウイルスを検出しています。

A(H1N2)型ウイルスは1989年12月から翌年3月にかけて、中国の6都市で、計19例が確認されていますが、このときはそれ以上に流行が広がることはありませんでした。


Q3. インフルエンザA(H1N2)型ウイルスは、現在までに流行している、他のA型ウイルスとどのくらい違うのでしょうか?

A3. A(H1N2)型ウイルスのHタンパク質は流行株のA(H1N1)型ウイルスのHタンパク質に、またNタンパク質はA(H3N2)型ウイルスのNタンパク質にそれぞれ近似しています。

私たちはこれまで、H1タンパク質とN2タンパク質の両方を併せ持つウイルス株にはほとんど遭遇してきませんでしたが、それはこのウイルスが、今まで、目立つような流行を引き起こさなかったか、あるいは、このウイルスに感染した患者をA(H1N1)型ウイルスによるものとして、見過ごしてきたためかもしれません。


Q4. A(H1N2)型ウイルスによる世界的な流行は起きるのでしょうか?

A4. いいえ、起きないでしょう。世界的な大流行が起きるためには、ウイルスが新しいHタンパク質かNタンパク質を持っている必要があります。その点、A(H1N2)型ウイルスが持つ2種類のタンパク質は、いずれも現在流行しているウイルスのタンパク質に近似しており、ほとんどの人々は既にこの新しいウイルスに対する抗体を保有していると考えられるからです。


Q5. A(H1N2)型ウイルスによるインフルエンザの症状は他のウイルスによるものよりも重いのでしょうか?

A5. A(H1N2)型ウイルスが、他のウイルスよりも重篤なインフルエンザの症状を引き起こすといった情報はありませんし、このウイルスによるインフルエンザの大きな流行も今までのところ報告されていません。恐らくA(H1N1)型ウイルスによるインフルエンザとよく似た挙動を示すのではないでしょうか。


Q6. 今シーズンに受けたインフルエンザ予防接種はA(H1N)型ウイルスから私を守る効果があるのでしょうか?

A6. もちろん効果があります。先に述べたように、現行の予防接種ワクチンにはA(H1N1)型とA(H3N2)型のHタンパク質(H1およびH3)とNタンパク質(N1およびN2)の両方注)が含まれているために、これらの株と近縁のA(H1N2)型ウイルスに対しても防御効果があるはずです。なお、ワクチンにはB型ウイルス株も含まれていますから、B型インフルエンザウイルスの攻撃からもあなたを守る働きがあります。


 

(CDC Health Topics,「http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/flu/factsheetH1N2.htm」より要訳)

注) 日本で現在使われているインフルエンザ予防接種ワクチンにはHタンパク質のみが含まれています。

本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します ご利用にあたって
© 2023 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.