東京都健康安全研究センター
Campylobacter jejuniの血清型別検出動向

わが国における腸炎由来 Campylobacter jejuni の血清型別検出動向
およびキノロン剤に対する耐性菌の出現状況 (2005〜2008年)
 カンピロバクター・レファレンスセンター

 

  1988年からわが国における腸炎由来C. jejuni の血清型別検出動向を調査する目的で衛生微生物技術協議会の7つの支部センター(秋田県、東京都、愛知県、大阪府、広島市、山口県、熊本県)では、Liorシステム法により、国内で発生した集団および散発のカンピロバクター腸炎から分離された菌株の血清型別に係わるレファレンスサービスならびにC。 jejuni および C. coliの 耐性菌の動向調査を行っている。
 ここでは、2005〜2008年までの4年間の活動で集積された型別結果の概略、および薬剤感受性試験の結果について紹介したい(過去の結果については、IASR Vol. 16 No7, Vol. 18 No4,Vol. 20 No5, Vol. 27 No.7を参照)。

血清型別: 型別に供された菌株は総計 4,031 株で、その内訳は、散発下痢症由来 2,504株、集団食中毒 304 事例由来の1,527 株である。
 散発下痢症由来株の主要血清型を表に示した。供試した2,504株中1,610株(64.3%)が単独血清型に型別された。検出頻度の高いものは、LIO 4で524株(20.9%)であった。次いで、LIO10が122株(4.9%)、 LIO11が115株(4.6%)、 LIO28が106株 (4.2%)であった。同時に複数の抗血清に反応したものは67株 (2.7%)、型別不能は827株(33%)であった。 
 一方、集団食中毒事例の患者由来株についてみると、1集団事例において1種類の血清型菌のみが検出された事例は241事例(患者由来株2株以上を対象)中115事例(47.7%)であった。患者からの分離頻度が高い血清型は、LIO4、 LIO36、 LIO11、 LIO7、 LIO28 等であり、散発患者由来株と類似した傾向を示した。本調査期間中に集計された集団食中毒事例304事例中55事例(18.1%)で患者由来株の血清型が型別不能であった。

薬剤感受性試験: 供試株は、散発下痢症由来C. jejuni 2,366株、 C. coli 75株、供試薬剤はキノロン剤としてNFLX、OFLX、CPFX、NAの4種に加え、TCおよびEMの6剤である。方法は菌株をBHIブイヨンで微好気培養し、その培養液をミュラーヒントン寒天(OXOID)に塗沫後、センシディスク(BBL)を置き2日間微好気培養して阻止円を測定するKB法によった。
 その結果、C.jejuni では、1,125株(47.5%) が6剤すべてに感受性であった。供試したニューキノロン系薬剤3剤(NFLX・OFLX・CPFX)すべてに耐性を示すものは788株 (33.3%)、カンピロバクター下痢症治療の第一選択薬であるEMに対する耐性率は17株(0.7%)であった。TCについては833株(35.2%)が耐性を示した。今回供試した6薬剤に対するC.jejuni の耐性状況は、前回報告した結果とほぼ同程度であった。また、C. coli では29株 (38.7%) が感受性、ニューキノロン系薬剤3剤耐性が47株(62.7%)、EM耐性が16株(21.3%) 、TC耐性が56株(74.7%) であった。 C. jejuni に比較しC. coli の方がニューキノロン系薬剤およびEMに対し高い耐性を示した。

今後の検討課題: 本レファレンスセンターにおいて実施している血清型別法は、Lior法に基づく型別方法である。本法は、C. jejuni の菌体表面に存在する易熱性抗原 (HL抗原:heat labile antigen) 、すなわち、鞭毛(H)抗原や夾膜(K)様抗原等をスライド凝集反応により型別する手法で、凝集反応そのものは非常に簡便である。しかし、型別用血清は市販されておらず、支部センターで分担して作製しているため、支部センターの負担が大きい。
 一方、Penner法は耐熱性抗原(HS抗原:heat stable antigen)を標的抗原としてLOS (lipooligosaccharide)またはPS(polysaccharide)を受身血球凝集反応によって血清型別を行う方法である。市販血清(デンカ生研)の入手が1993年から可能となったが、非常に高価であるとともに、手技が煩雑であるという問題がある。
 近年、カンピロバクター食中毒の発生が増加し、行政から迅速に血清型別成績を求められることも多く、支部センターに菌株を送付して型別する現行法には限界もある。また、各地研等が、Lior法とPenner法のそれぞれの方法で型別した場合には、検査結果を相互に比較出来ないという不都合も生じる。このような現状を鑑み、カンピロバクター・レファレンスグループでは、これら二法の比較検討を現在行っている。

 

Campylo血清型

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